天使のながばなし
maki



 深い森

今は深い森。
ぎっしりと緑で満たされた葉の間から、細い光が差し込む。

あの時、足に絡みついたいばらの傷はもうすっかり癒えて、
ひととき、のどかな林道を歩いてきた。

今は深い森。
見たこともない大きな木々が、私を圧倒する。
聞いたこともない鳥の鳴き声が、何かを訴えかけてくる。
やんわりとした空気とは対照的に、自然の大きさは私を不安にさせる。

この森を抜けられるだけのすべを持っているのだろうか。
それとも耳を済ませば、森は優しく私を導いてくれるのだろうか。

信じる。信じられない。
それだけのこと。

静寂の心が、動きを感じとる。
私が向かうのは、心の静寂。

この森を抜けたら、澄んだ湖があらわれる。
それは知っていること。
水面は、真実の姿を映し出し、私はただライアーを奏でる。



2007年11月27日(火)
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