毎年父方の祖父母家で正月は過ごすのに今年は自宅で正月。
「正月らしくないなー」
なんて言葉を毎年のように交わす僕の家にも まぁ必ず正月ってのはやってくるわけで。
とりあえず親父がどこかに連れて行けと言うので、 近くの海岸の「初日の出を見る会」に参加。
天気予報では雪だの曇り空などとやかましかったが、 実際に三重県は絶好の初日の出日和。 美しい初日の出を見ることができた。
親父が初日の出を見に車を走らせている途中に
「カメラを忘れた」
と急に言い出した。 運転手である僕に「戻れ」とアピールするように。 まぁ初日の出は待ってくれないわけでココで戻ったら もう日があがってしまうわけで。
僕もまた母も妹も「携帯で撮ればいい」だの、 「目で心に焼き付けろ」だのといわばなだめていた。
すると親父は言った。
「もうこうやって初日の出を四人で行くこともないかもしれないから」
最近は 「もう何回4人でご飯を食べにいけるだろう」だの。 「もう何回4人で旅行にいけるだろうか?」だのと言う。
寂しいんだろうか。 そんなことを口走り、ちょっとおじいちゃんに似てきたオヤジが、 少し小さく見えて、俺は大人になったんだなと実感する。
親父の背中越しに見る初日の出。 周りも絶賛するほど美しかった。
僕は理由もなく手を合わせ、気づけば何かに祈っていた。
僕は今不安を感じている。 なんかなんとなく不安なんだ。
今年が不安?そうじゃなくて、これからが不安。
これから音を立てて、意識できるほどに ガラガラといろいろなものが崩れていく気がして、不安なんだ。
「去年はありがとう。今年もよろしく」
気づけば誰かに祈っていた。
この願いが叶えばいいなと思った、そんな元旦だった。
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