意外と早く、その結果は出た。
私が独りに慣れるように、独りの時間を楽しめるように、 神様がそうなさったのだと思う。
昔のことを書きます。
私はまだ夜遊びを知らなかった頃。 今まで一度も彼氏がいないことに焦っていた。 こうくんが好きで、付き合いたいって思ってたけど、 それほど仲良くないことにやきもきしていた。
確かに今思うと、あの頃の私は、犬のようにシンくんに懐いて(この表現が正しいかどうかは分からないけれど)いたと思う…。 その頃のバイト先のみんなから(本当にほぼ全員から…こうくんも含めて…)、 何故か 「りうはシンくんが好き」 と思われていて。 私としては、 「シンくん "が" 私 "を" じゃないの?!」 ってずーっと思ってましたけどね! その頃の情報提供者(主にタカシ・笑)によると、 シンくんの方も悪い気はしてなかったらしい。 第三者の目から見ると、「他の男とシンくんに対しての呼び方が違う」って。 「シンくん」って呼んだ最後に、絶対ハートマークがくっついてるって言われた。 私には全然そんなつもりない。 私としてはこうくんが好きだったし、それをカムフラージュするとかいう考えもなかったし。 本当に狙ってなかったです。
なのに、雰囲気からも出ていたらしい。
実際、彼と話すのが楽しかったのだ。 面白い性格で、表情も良く変わるし、何より変に遠慮しないで、気楽に話し掛けられるのが良かった。
ある時、バイト先の子供達から、「(二人は)付き合ってるんでしょ?」って言われた時に、 私:「シンくん。私達付き合ってるんだって〜(笑)」 彼:「あ。バレちゃった?」 って、私の冗談に付き合ってノリの良い切り返しもしてくれたし。 そして、色々な話の中で、凄く優しいんだということにも気付いた。
こうくん・シンくん・タカシともう一人と私を含む 5人で良くカラオケに行ったり、ご飯を食べに行ったりした。 私はこうくんと仲良くなりたいっていう下心付きだったけど。 それも周りから見れば、 私がシンくんを好きだからいる という風に置き換えられていたようです。 (しつこいようですが、私はこうくん目当てでした!)
私の行動全てが裏目、というか、 みんなのベクトルがシンくん方向になってました。 私だけこうくん向き(笑)。 それは全部、後から知らされたんですけどね。
大きなきっかけは、飲みの席。 こうくんが泥酔して寝ている間。 お酒の飲みすぎで呼吸がしんどくなった私は、寝ちゃったこうくんへのあてつけ(?)も含めて、 みんなの目の前でシンくんの肩にもたれかからせてもらった。 (最初、他の人に打診したんだけど、断られて。シンくんはオッケーしてくれたから) その時、小学生みたいに、みんなからはやしたてられて。 でも、何でそんなこと言われるのか全然分からなかった。 お酒が入って判断が甘くなってるせいもあるかもしれないけど、 付き合ってるとか、好きって気持ちがなかったからっていうのが大きかったし。
その時、お互いに「姉弟みたいだね」って言い合った。 それで、私の中では、二人の間に「恋愛の好き」とか「付き合う」って気持ちはないんだなって、認識が出来た。 だから余計、フランクに話したり、接することが出来たのかも。
横を向くとすぐにシンくんの顔があって、びっくりしたりもしたけど(笑)。 物凄い至近距離にいたんだなって思う。 その日に酔った勢いで二人で映画に行く約束をした。 もちろん、みんながいるその前で。
飲み会の帰り。 私が乗らなかった方の車の中、私とシンくんの話題で相当盛り上がったらしい…。
お酒の席での約束って、本当に実現するか分からないでしょ? だから、私は本当にそうなるとは思ってなくて。 タカシから 「あいつ、あの日は調子悪くてあんまり飲んでないから、酔ってないよ。全然覚えてるよ」 って言われるまでは。 けど、その後何度もバイトで顔を合わせて、普通に話はするのに、映画の話は全く出なくて。 なのに、周りの、同席してなかった人にまで知られてるし。
約束した日の近くになっても何も言ってこない彼に、 私は不安と頼りなさを感じていた。 あと2日後に迫った帰り道。 「映画、どうします?」ってようやくシンくんが言ってきてくれた。 行くことがはっきりして、私は安心したのを覚えている。 そういえば、マトモにデートするのはこれが初めてだったと思う。 まぁ、その頃はデート=カップルだけがするものって考えてたから、 デートだって言われても否定していたけど。 同性同士で出かけるのはデートじゃないのになあ。(あ、同性愛者は除きますよ)
私も、今一つ仲良くなりきれないこうくんよりも、 一緒にいて楽しい、優しいシンくんの方がいいのかもって思っていた節もあった。 現に、かぐさんや先輩に映画を見に行くことを話した時、 「向こうが何かアクションを起こしてくれたら、そっちに行くかも」 なんて笑いながら話したものだ。 けど、年下で、頼りなくて、恋愛経験のないというとこがネックで。 私は引っ張ってって欲しくて、だから年上の、経験者が良かった。
肝心のデートはというと、多分お互いに緊張してたせいと、 二人だけっていうのは初めてで、普段話しているようにはいかなかった。 私としては、手繋ぐくらいはしてほしかったのだけど、 彼の性格上それはなかったし、話も盛り上がらなかったのだ。 あと、時間つぶしに色々見て周りたいという私に、 文句一つなく振り回されてくれたシンくんに申し訳ないとも思って。
シンくんと映画デートした後、 何でこうくんが好きなのに他の男の人と出かけちゃったんだろうって、後悔して泣いた。 それまで、シンくんとこうくんの間で揺れていたのに、 デートしたことがきっかけで、私の気持ちは固まった。 後悔したなんて、シンくんには申し訳ないけど。
それから、彼とは元通り。 仲が進展することも、親密になることもなかった。 お互い、その話には触れたがらなかったし、次に会う約束もしなかった。 私もなるべく、雰囲気や話し方に気をつけて、他の人が言うような接し方にならないようにガードしたし。 彼のほうも、デート前のような雰囲気はなくなって、隙がなくなっていた。
その後。タカシから聞いた話だけど。 デートの日に眠そうだったのは、前日の夜、タカシがカラオケに誘って朝方まで起きていたせいだということ。 シンくんは、彼なりにデートをどうするか悩んでいたし、期待もしていたこと。 それで、タカシの方からも何やらけしかけたらしいこと。 はっきりとは言わなかったけど、シンくんが私に好意を持っていてくれたこと。
けど、決定打に欠けたのは、デートが上手くいかなかったこともあるけど、彼が「優しい」ことだった。 彼は優しいだけの男だと思ったから。 それ以上でも、それ以下でもない。 それを聞いたタカシは「あー、やっぱりそれか」って言ってた。 「だけど…!」って、シンくんをプッシュしてくるタカシに、 私はそこで「他に好きな人がいるんだ」って言った。 そしてその人がこうくんだということも。 タカシはそこで、引き下がった。
時間と共に思い出は風化していって、私はこうくんに結果的にはふられた。 その後はそれを忘れるのに精一杯で、どうしようもなくなっていた。 相変わらず、シンくんとは仲良かったけど。 それは、お互いに気持ちを持っていたわけではなくて。 本当に、ただの友達。
だから、今回のことで、シンくんは心に整理がつけられたと思う。 多分、同じ子を好きな友達に遠慮することなく、好きな子にぶつかっていけるんじゃないかな。 私があの時に後悔したのと同じように、彼もこの前のことを後悔したのだと思う。 わがままだけど、私は後悔してほしくなかったけどね。 それは人の気持ちだから、仕方の無いこと。
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