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2005年06月27日(月)
「故郷の香り」は75点


監督 : フォ・ジェンチイ
原作 : モォ・イエン
出演 : グオ・シャオドン
リー・ジア
香川照之
中国南部、山谷の小さな村。田んぼが広がり、豆やいろんな野菜を合間に植え、アヒルを飼ってくらす。時々やってくる省立演劇団や、祭りの踊りや歌、そして村にひとつだけあるシュウセン(ブランコ)が数少ない娯楽だ。「シュウセンはなぜシュウセンというの?」おさな馴染みの女性は急に美しく育った。それが青年の初恋に変わるのは当然だ。彼女は、自らの演劇の望みを果たすべく村にやってきた省立演劇団の青年に恋をする。そして青年も彼女も失恋するのである。

青年は大学に行って田舎に残してきた恋人のことを次第と疎ましくなる、というまるで『木綿のハンカチーフ』そのままの設定でありきたりではある。自然は美しいが新鮮さはない。家の創りが土や石であったり、運河が発達していて、水がきれいだということ以外は今だ残っている、そして40年前までにはまだどこにも残っていた日本の田舎とどこも変わらない。しかし、わざわざこのように田舎を美しく撮った日本映画はあまりないかもしれない。ひとつは中国の技術が優れているのだろう。色と光への感覚の鋭さ。ひとつは、都会では今急速にこういう自然がなくなっているのだろう。中国の人たちはそのことに人一番敏感なのかもしれない。日本では敏感ではなかった。だから昭和三十年代にそういう自然を撮った監督はいない。40年代に唯一山田洋次が撮ったに過ぎない。しかし、中国は広い。日本のようにたった50年で全国くまなく景色が変わるということはないだろう。ただし上海や北京の都会は10年で一変した。そのスピードは日本よりはるかに速かった。このアンパランスが中国でもある。青年が少女のことを忘れたのは、それはつまり恋だけではないのである。青年は最後につぶやく。「ヌーバだけがヌアンのこととをずっと愛していた。それはつまり彼女が幸せだったということだ。」ヌーバ役の香川照明は素晴らしかった。

青年の都会のお土産である飴の包み紙を、水のはいった瓶に入れて、その「色を楽しむ」という遊びを彼女の子供が発明する。大変新鮮であった。
(05.06.07記入)