アイデンティティー

2002年01月26日(土)


こんな夜は

アナタを想い出させる。



窓を激しく打つ雨と

光を奪う切り裂くような音と供に

部屋を照らす雷。



びしょ濡れの服も

アタシの心も

一枚ずつ脱がせていくアナタ。



裸のアタシを見つめる瞳。

強く 強くアタシを抱きしめる腕。



闇を刺す数秒の鋭い光は

彼の背中からのもので

余計に彼の姿を暗くした。



見えるのは

彼の肩が白く光る線。

顔を見ようとしても

見えるのは頭を象る白い線。



まるで、

そこだけ黒く切り取られてしまったように。



存在を確かめたくて

彼の顔である筈の場所に手を伸ばした。

触れようとした、その瞬間。



真っ暗なその中に

稲妻に照らされたアタシの顔は

身体は

どう映し出されているのだろう。

真っ暗なその中は

本当にアナタなのだろうか。



恥ずかしさと恐怖心が

先刻見上げた漆黒の雲のように

私を襲った。



手を下げ 目をそらせ

腕で身体を隠そうとした

その時

雲よりも闇よりも黒い何かが

アタシの全てを包んだ。



冷たい身体で

温かい体温を感じて

感じたことのある肌で

彼を認識することが出来た。


  
何も聴こえなかった。

何も見えなかった。









判るのは

アタシの中のアナタだけ。









それでも

1mmの隙間もない二人の間には

透き通る青さを持つ悲しみが

流れていた。




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桜木 舞 [MAIL]