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前を見て振り返らずに堕ちてゆく - 2007年05月31日(木) *そうできたらどれほど楽かと涙しながら タイタス・クロウ サーガ 面白いんですよ。え?うるさいって? 面白いんだもん。 あんまりクトゥルフ神話ってんじゃないんだよね。むしろ現代のパロディよりも薄い感じではあるんだよね。 書き方も、キャラクター(主にタイタスの性格)もラヴクラフトとは程遠いにも関わらず雰囲気とか話作りは似ているものだから面白いのかな。 つまり、面白いって感じるのはラムレイの文才である訳で。 タイタスは勇気ある人で魔術や神秘学に精通していて、本来ラヴクラフトで登場人物が狂気に駆られていく様が書かれる部分でもタイタスはそれに勇敢に立ち向かうんですよ。 それがサーガであって、ホラーでない故なんだろうけど。 そう。ホラーじゃないんですよ。誕生と妖蛆の王は多少じりじりと忍び寄る恐怖についても書かれているのだけど、(まだ全話読んだ訳じゃないけれど)他の短編はまさに冒険譚という感じ。 例えば『妖蛆の王』はタイタスは脅かすものに勇敢に立ち向かっていったし、『ニトクリスの鏡』は本来ラヴクラフトの描く主人公格がファーレイでありそうなもので、それを受けてのド・マリニーの行動。 本当に一概にクトゥルフ神話ものじゃないんですよ。なのに面白い。(短編によっては「ニトクリスの鏡」みたいにクトゥルフ色が濃いのもあるのですが。) クトゥルフの正しい使い方であるところの『物語の本質にある恐怖をよりリアルに描くための要素としての神話』を上手く使用できてるんじゃないかな。 もちろん私はパロディとかオマージュとかも大好きだからいいんだけど、これこそラヴクラフトが望んだ神話の生き残り方だったんじゃないかな。 ロングが愛した神話とラムレイが受け継いだ神話は違うものであったのだろうね。どちらの愛もどちらの神話も私は愛しているし、支持できる神話の行き方な気がする。 こうなったら、各ラヴクラフトスクールのメンバー作品やアーカムハウスものを読み漁ろう。 -
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