今月6日、宇多田ヒカルが結婚した。自身のHPで入籍したことを発表。HPは3日間で6700万ものアクセスを集めたという。 これに関し、夕刊フジに『芸能人、何でもHP発表の功罪 会見避けて一方通行』という記事が掲載されていた。 今回の宇多田ヒカルに限らず、最近は会見を開かず、HPで結婚や出産を発表する芸能人が増えている。西川貴教の離婚や、辻仁成の結婚など、昨年頃から急激に目立つようになってきたという内容だ。 芸能リポーターの三井三太郎氏は「芸能人にとっては都合がいいかもしれないが、ファンの立場を思うと疑問。ファンが知りたいと思うことを聞くのがわれわれの役目だし、本人の生のコメントを求めるため取材は続けるので、結局は先延ばしに過ぎない」と紙面にコメントを寄せている。
このような結婚発表とは少し違うが、スポーツ選手も自身のHPで試合後のコメントを載せるケースが増えてきた。
代表的なのが、パルマの中田英寿だ。試合後、生のコメントをほとんど残さない中田だが、HPではよく喋っている(書いている)。担当記者は常日頃から、HPをチェックし、中田の心情をHPで知る。ニュースバリューが大きければ、「中田が自身のHPで×××と書いていた」と新聞に掲載されてしまうほどだ。 メディアで報じられないことが、HPで分かる。ファンにとっては非常にありがたいことだ。だが、記者やライターにとっては……。 ある人が中田のことを、こう形容していた。 「中田はマーケティング能力に優れている」 HPで自身の心情を記すメリットは、ここにあると思う。自分に対してメリットがあることは載せ、デメリットになることは書かない。読者からしたら、良い部分だけを読み続ける。良い部分だけを提供されていることになる。 中田はマスコミに生の声を提供することを極力控え、自身の像を作り上げてきた。自分で自分を作るマーケティング能力に優れていた。
昨年まで西武の監督を務めた東尾修監督も、「higashio.com」というHPを持っていた。試合が終了したその日に、試合に対する監督の考えや思いが更新されていて、ファンにとっては非常にありがたいものだった。
確か夏頃だったと思う。 担当記者と監督との間で、軋轢が生じ、「記者の取材を一切受けない」時期があった。必然的に、監督のコメントは新聞に全く載らなくなった。でも、自身のHPには監督の言葉があった。
中田や東尾監督のHPは、確かに面白い。ファンの目で見ると、そう思う。けれど、自分が志している「ライター」という視点から見ると、複雑な心境になる。 選手や監督が、自身のHPで言葉を語る。新聞で読めない情報も多い。そうなると、新聞に載っている何のひねりもないコメントが色褪せてくる。選手が直接発した「文字」の方が読者を唸らせることが多い。
今後間違いなく、選手が自分のHPを持ち、コメントを出したり、心情を表現することが今以上に増えてくる。 そんなとき、取材者は何をすべきか。 夕刊フジの見出しにあった「一方通行」という言葉が、答えを探る手掛かりのように思う。「一方通行」でない道。多方面からアプローチする道が、どんなに個人HPが増えようとも、必要な道、求められる道だと思う。
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