五九歳になる部長が力を込めて語った。「私は後一年です。引退までにこれだけの書き物をしたい」。書き物とは、小説ではない。仕事に必要なマニュアルである。引退後にこの会社が順調に推移するための指南書を残しておきたいというのだ。後世に何かを残す意欲こそ、ベテランの仕事であろう。ベテランには何かを教えてマスターさせるより今ある技能を吐き出させるようにしたい。