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■ 今更このネタですか
2006年01月14日(土)
樹を抜くとすぐこれだ。こんばんは、月瀬です。 今年はちゃんと日記書くって言ったのどこの誰だよ、おい。 さくやちゃんにも日記書いてよーって言われた。うん、頑張る。 テストです。めんどくさー。レポートも待ってます。 なんかもう全部忘れて寝てしまいたい。
あんまりにも更新してなくて申し訳なかったので忍跡小話初詣バージョンです。やっぱり忍跡って楽しいなぁ!! ↓ ↓ ↓
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今年も来年も、もっとずっと先まで。 一緒にいられたらいいね、なんて願う必要の無いくらい。
「寒い」 ぼそ、と一言呟いた隣の人物に視線を向ければ、 首にぐるぐると巻いたマフラーに顔半分を埋めている状態。 先程の台詞だってもう何度聞いたかわからないくらいで、 苦笑を返すくらいしかもうネタが無い。 「つーか、なんでこんなくそ寒いのにこんな混んでんだよ」 「しかたないやろ、時期が時期なんやし」 先程から文句しか出てこない口は、 とうとう自分の周りの人間に対して愚痴を吐き出した。 大晦日、「寒いから嫌だ」と渋る跡部を 家から引っ張り出して連れてきた小さな神社。 せっかくだから一緒に初詣がしたかったのだ。 先程から寒い寒いと愚痴ばかり言うけれど、絶対に 「もう帰る」とは言わないで付き合ってくれる彼は優しい。 ここまで歩いてくる間に多少身体は暖まったのだが、 神社に着いてすぐ目に入った参拝者の列に並ぶと その歩みは極端に遅くなった。 せっかく暖まった身体もすぐにまた冷えてきて、 のろのろと進むだけでは真冬の夜の寒さに耐えられるほどの 熱は得られない。 最初こそ渋っていた跡部も歩いているうちに慣れてきたのか 寒さを訴えなくなっていたのだが、15分ほどして さすがに冷えてきたのだろう その口は先程から再び同じ台詞を吐き出した。 「物好きがいるもんだな」 「俺らもその仲間やってわかってる?」 「てめぇが無理矢理つれてきたんだろーが」 「まぁ、もうすぐ俺らの番やし。 終わったらあそこで配ってる甘酒でも飲んで暖まろうな」 列から外れたところで甘酒を配っているのが見えた。 両親に連れられた小さな子供が、その小さな手で 嬉しそうにカップを受け取っている。 初詣にはよくある光景。 「俺も小さい頃おとんにつれてってもらったわ。最後に飲む甘酒がめっさ甘くて上手かったことは覚えとる。跡部はあんまり家族で初詣とかせぇへんのやろ?」 「そうだな、年が明けてから昼間行ったことはあるが、夜の間にこうやって来たことは無い。一回だけ、宍戸とジローと来たことがあるくらいだ」 「それ、俺と会う前やな」 「中学でテニスが強くなりますようにって願いに行くからお前も来いって言われたんだ。寒ぃから行かねぇっつってんのにジローに引っ張られて結局付き合ってやった」 その光景が容易に想像出来るあたりが この三人の今と何も変わっていないところ。 跡部はジローに甘いし、最初は断っても 結局最後には付き合ってやるのだ。 跡部はジローに弱い。同じく宍戸も。 ジローの願いがこの二人に聞いてもらえなかったことのほうが 少ないのではないだろうか。 たぶんこの三人の中ではジローが最強だ。
「あ、次やで」 そうこうしているうちに列は徐々に進んでいたようで、 残すところあと一組。 冷たくなった手でポケットの中の財布から百円玉を出す。 冷たいそれを握り締めて、前に並んでいたカップルが いなくなるのと同時に賽銭箱の前に足を進めた。 少しだけ熱を分けたお賽銭をあげ、二回礼をして拍手も二回。 目を瞑る直前に横目でちらりと跡部の様子を確認すると、 眉間の皺もそのままに真面目に手を合わせていた。 それを見て自分も真面目に手を合わせる。 たかが百円、されど百円。やらないよりやったほうがマシ。 最後にもう一度礼をして、その場をあとにした。 願ったからといって叶うわけじゃない。 ただ願いというか抱負を決めるのは良い事で、新しい一年の始まりなのだと自分へ言い聞かせるきっかけになる。 去年は岳人と初詣に来た。 そのときと、願ったことは同じだった。
「やっぱ暖まるわなぁ、甘酒」 「そうだな」 人気の少なくなった帰り道。神社を出るときに飲んだ甘酒は 身体の中からじわじわと温度を伝え、冷えていた身体は 徐々に暖かさを取り戻しつつあった。 にぎやかだった神社のまわりも、少し離れれば途端に人気が無くなる。 寒空の中、二人で肩を並べて歩いた。 「なぁ、跡部は何を願ったん?」 好奇心と、そしてほんのちょっとの期待を込めて。 そう問いかけた自分にちら、と一瞬だけ視線を向けた跡部は またすぐに前方に視線を戻し、 そしてはっきりとした口調で答えた。
「氷帝学園テニス部全国優勝」
あぁ、やっぱり。予感的中。 期待を裏切らないその回答に口元が緩んだ。 「跡部らしいわ」 「お前は?」 「俺?」 珍しく、こちらにも興味を示してくれたらしい。 その青い瞳には迷いなど見えない。 ここで下手に茶化したりすると口を利いてもらえなくなるかも しれないので真面目に答えることにした。 「同じや。今年こそ全国優勝」 毎日どんなに暑かろうとも寒かろうともコートでボールを追いかける。ただその目標を目指して。いつの日か、頂点に経つことを夢見て。そのためにここまで走ってきたのだ。毎日がテニスで、それが辛くもあり幸せでもあった。 「俺、去年岳人と来たときも同じ願い事やったわ」 あとから聞けば、岳人の願いも同じだった。 一緒に頑張ろうと誓った、一年前の冬。
「俺は、三年前も同じことを願った」 「…三年前?」 「宍戸とジローと来たときだ」 そのときから頂点に立つことを夢見ていた。 自分だって、そのためにわざわざ東京に出てきたのだ。 「今年こそ、トップに立ってやる」 前を見るその目は、初めて見た頃と変わらずまっすぐに前だけを見ていた。その瞳に自分が映ることが嬉しくて、彼と同じ未来を夢見ることを幸せに感じていた。彼についていこうと、一緒に走っていこうと決意したのだ。 夢は夢のまま、まだ叶うことが無い。
「でもな、ちょっと期待してん」 「あ?」 「ずっと一緒にいられますように、とか願ってくれるんやないかなーって。カップルで初詣言うたら願いはこれやろ」 こちらに向けられた視線は、「呆れています」と言わんばかり。 跡部はそんな乙女なこと願わない。そんなこと百も承知だ。 むしろ「黙って俺について来い」と言うだろう。 ただ、少しだけ期待するくらい許してくれてもいいじゃないか。 「馬鹿じゃねぇの」 「えぇねん、ちょっと言ってみたかっただけやから」 自分だって実際にはそんな願い事をしていないのだから、 自分よりもリアリストな跡部がそんな可愛らしいことを 考えるはずもない。 これ以上冷たい視線には耐えられないと思い、 何か他の話題は無いかと視線を彷徨わせる。 跡部が小さく口を開いたのが視界の端に入った。 「すでに叶ってることを願っても意味ねぇだろ」 「………は?」 間抜けな声が出た。 というよりもそれしか出せなかったというのが正しい。 自分の耳がおかしくなってしまったわけじゃない、と思う。 あの、跡部が。なんかとんでもないことを言った。 思わず足取りもゆっくりになり、そのままペースを保っていた 跡部との間に距離が開いた。 こちらを気にするそぶりも無く前を歩く跡部は、 数歩手前で立ち止まり、そしてゆっくりと振り向いた。
「お前は、ずっと隣にいるだろう」
その、まっすぐに前だけを見つめる瞳が好きだと思った。 出来ることなら、同じ未来を見たいと願った。 そのためにレギュラーを勝ち取り、 同じ舞台に立てる権利を得たのだ。 遠くを夢見る瞳が、今は自分を映すために振り向いている。 こういうのを、幸せだと言ったら人は笑うだろうか。
「…なんつーか、あれや。心臓に悪い」 「異論があるなら聞いてやる」 「いえ、滅相もございません」 そう答えると満足したようにまた前を見て歩き出す。 二百人の部員の上に立ってきた、 細いけれどしっかりとした背中。 いつだって自分は、その背中を追いかけてばかりだ。 「跡部!」 そのひるむことの無い背中だから着いて来れた。 追いかけられた。 「ずっと傍におるよ」 青い瞳を綺麗に細めて、とても綺麗に跡部は笑った。 こんな顔が見れるのは自分だけだと、 うぬぼれてもいいだろうか。 小走りに距離を縮めて隣に並ぶ。 こちらが追いつくのを待ってから歩き出す彼は、 口は悪いけれどやっぱり優しいのだ。 「次はカウントダウンやな。そろそろいい時間…あー!!!」 ポケットから出した携帯のディスプレイで時刻を確認する。 予想ではあと十分ほどで日付が変わり、 新年を迎える予定だったのだ。が、しかし。 「んだよ、うるせぇな」 「せやかて、これ…!」 眉を寄せる跡部の目の前に携帯を突き出す。 表示された時刻は紛れも無く… 「0時2分…もう年明けてんじゃねぇか」 「新年早々失敗やわ…」 後悔先にたたず。時間はどうやっても巻き戻し不可能なのだ。 「せっかくいいムードやったのに…」 「新年早々馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ。 年が変わってもお前は変わらないのな」 そう隣で呟かれてはさらに凹むではないか。 せっかく二人で初詣に来たというのに、 肝心のカウントダウンをスルーしてしまうなんて。
「幸先悪そうや…」 「忍足」 「…んー?」 「寒ぃから、お前ん家行くぞ」 だから、さっさと歩け。 そう言って跡部は少しだけ歩くペースをあげた。 「え、え!?」 「早くしろよ、置いてくぞ」 どんどんと開くその距離を足音を立てながら縮めて。 剥き出しのまま冷たくなっている耳にそっと唇を寄せた。 「…姫始め?」 「相手してやってもいいぜ」 今夜の彼は随分と、ご機嫌らしい。 いたずらっぽく笑ったその形の良い唇に 自分のそれを一瞬だけ重ねて。 「続きは帰ってからな」 「バーカ」 耳元で囁けば彼は少しだけくすぐったそうに身を捩った。
「あ、忘れてた。跡部」 「んだよ」 「あけましておめでとう」 「…あぁ」 思わず握った手を振り解かれなかったことが嬉しくて、 今年はいい年になりそうだ、なんて思った。
なんだろうこのヘタレた忍足は。跡忍じゃないですよ忍跡ですよー。どっちが攻めだかわからない。私はこれでも忍足が大好きです。
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