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猛毒。
リョウ
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2002年01月05日(土) ■
大晦日パニック。6

ということで。
サスガに6とか行き過ぎですか。
まあいいや。
俺のニッキや俺の好きなようにするわー。


サテサテ、
総勢11名で新春一月一日を迎えて、
午前2時。
とりあえず京都を目指して駅に向かった我々デスガ。
酔っ払いの集団です。
若さのせいにして馬鹿な事しでかす一番ヤバイ時期です。


という状況の中で、
あたしはなんとなく浮き沈みの激しいココロウチをしてました。
周りのやつと話していても、
もうキッパリと自分の中で整理がついたとは言え、
これからどうやってトミタと友人として付き合っていけば良いのか、
わからず。


そんな駅のホームで、
ユウコとオキタっていう奴が話してました。
オキタは、
イイ奴なんだけど、
なんとなく信用の出来ないヤツです。
友達としていっしょに行動する事は多々あるのですが、
あたしは個人的にはあまりこの人を好いていません。
ユウコも、
いい人なんだけど、
別にどうでもイイかな、
みたいな対応とってました。


あたしは、
そこで別に二人が話してるところを見てどうしようとも思わなかった。
あたしの隣には良ちゃんとポッキーがいた。
あたしがユウコをなんとなしに眺めてると、
良ちゃんが「なんかイイ雰囲気やな〜」って言った。
あたしはユウコが誰を好きか知っているし、
オキタはどちらかというと『女なら誰でもイイ』タイプの男なので。
あまりイイ顔が出来ませんでした。


と。
良ちゃんが真面目な顔で言いました。


「リョウ、ユウコにかまいすぎなんちゃう?」


それはそうかもしれない。
あたしはユウコを守らなくちゃという義務感が、
なんとなしにあったから。


「リョウが、
 いつもユウコのそばにいて…、
 リョウがユウコの保護者みたいになってるやん。
 それってユウコがもったいないよ」


どういう意味よ?
瞬間ははわからなかった。
だけどすぐにわかった。
あたしが、
ユウコが男に近づくのを邪魔してるって、
そういうことだ。


「そうかな?」


あたしは、
内心の動揺を隠そうとした。
ぐるぐる、
良ちゃんの言葉が頭を廻った。
良ちゃんは続けた。
真面目な顔で。


「うん。
 もったいない。
 あ、リョウはどうでもいいんやけどな」


へえ。


「うわーひどー今うち傷ついたわー」


口から、
軽く言葉が出た。
だけど、
心臓がついてこなかった。
今から考えればただの、いつもの軽口なのだけど。
そこにはリアルに本音が出ていて、
あたしは、
ユウコの邪魔をしてるんだって…
そういう現実を、
つきつけられたんだ。


あー、
あたし邪魔なんだ。


そう思ったら、
なんか心の中が、
ぐらっと重くなった。
そのときは何も、
何もすぐには考え付かなかった。


ああヤバイな。
あたし、




泣くな。




そう思って、
とりあえず良ちゃんとポッキーのそばから離れようとした。
ここにいちゃだめだ。
見られる。
そう思って。
あたしは無言でその場を離れて、
10メートルくらい向こうにあるベンチに向かった。
歩いている途中ですでに、
なんだかココロが壊れてくみたいになった。
今思えば、
良ちゃんの言葉のどの部分にココロを砕かれたかわかんない。
だけど確実に、
あたしの目からこぼれる涙は、
その言葉のせいだった。


もちろんだまって歩き出したあたしの様子がオカシイのに、
良ちゃんが気がつかないはずはなく、
あたしがうつむいて座ったベンチまで、
すぐに追いかけて来た。


ヤバイ、
カッコワルイ。
泣いてる姿なんて、
無様で、
誰かに見せたい物なんかじゃない。


良ちゃんは焦ってた。
「言いすぎた、ゴメン」
そう言った。


あたしは必死に涙をとめようとしたけど、
一度堰を切ったものは、
そう簡単には止まらなかった。


あたしなんで泣いてるんだろう?


それさえもわからなかった。
だけど、
ただ悲しくて悔しくて、
ああ、あたしはその程度の存在なのかと思うと、
もう、
すごくすごく寂しくなった。
あたしはここにいちゃいけないんじゃないの。
なんであたしはここにいるの?
そう思って。


あたしは、
うつむいたままのあたしの前で、
焦りに焦っている良ちゃんを、
どこかにやりたかった。
いつも強い存在でいなくちゃいけないのに…あたしは。
なんでこんなに…。
馬鹿らしい。
弱い自分など。
見せたくはないのに。


「ごめん、
 大丈夫やから、
 お願いやからみんなのとこ戻ってて。
 大丈夫やから…」


何度も何度も、
むこうにいって、って頼むあたしに、
良ちゃんはずっと「無理!」って言いつづけた。
「平気だから」って言ったあたしに、
「嘘つけ!」って言って。


顔を上げられない。
涙を見られたくない。
だけどとまらなかった。
あたしは、
どうしようもなく傷ついていた。
それは多分、
あたし自身うすうす感じていたイタイところを、
本当に正確に、
良ちゃんがついたからなのだろう。
良ちゃんが焦ってる。
かわいそうなことをしてる。
良ちゃんのせいではなく、
あたしの心の中の問題なのに…。


泣き止まなくちゃいけない。
でも、
涙はとまらない。
あたしは困った。


不意に、
誰かが近づいてくるのを、
良ちゃんが必死に止めている気配。
「今はこんといて!」
って、
必死に声を沈めて言ってる。
誰なんだろう、って思った。
それを確かめる事さえ出来なかった。
(顔を上げることなんてほんと出来なかったから)
あとから良ちゃんに聞いたんだけど、
それはユウコだったらしい。
笑って近づいてきていたらしい。
そうか、と思った。



そうこうしているうちに京都河原町行きの電車がホームにとまった。
乗らなくちゃ。
あたしはそう思った。
だけど今はまだ、
みんなのところに戻れる状態じゃない。
「一人で大丈夫だから」
って、あたしは何度も良ちゃんに言ったけど、
聞き入れてもらえなかった。


とりあえずみんなと2両くらい離れて電車に乗りこみ、
人ごみの中で良ちゃんとふたりでいた。
電車が次の駅に止まったときに、
つかまるところのなかったあたしがフラついたら、
そのあと河原町につくまで、
ずっと良ちゃんはあたしの肩をつかんでいた。


まだ止まらないあたしの涙が2滴、
電車の床に落ちた。
あたしはそれを良ちゃんに気がつかれないように、
そっと足でふみつけて消そうとした。
意外に大粒だった涙は、
こすっただけでは消えてくれなくて、
すいっとのびただけだった。



河原町につく頃にはあたしはだいぶ落ち着いて、
笑えるくらいにはなった。
どうもあたしたちのことを見失ったと思ってみんなはひとつ電車を見送ったらしく、
ひとつ後の電車でみんなと会えた。


あたしは、
ちゃんと笑う事が出来た。
八坂神社に初詣にいったときも、
ちゃんと笑えた。






だけど今も、
この日記を書いている今も、
あたしの心に刺さった槌は抜けない。
ほろりと漏れた良ちゃんの本音を、
あたしは忘れる事は出来ないだろう。


やっぱり、
『ここ』は、
あたしのいるべき場所ではないのだろうか。
そう思わずにはいられなかった。







続く。