ちょっとしたダメージを受けていて、 胸が苦しいです。
あたしが良かれと思ってやったことは全て裏目に出たというか、 結局「友情」なんてものの存在を信じたあたしが馬鹿だったというか、 馬鹿だったと気がついた今でも、 『じゃあどうすればヨカッタのか?』 っていう、 自問自答に答えが出ない。
あたしは「悪者」なんだってさ。 あたしが悪いんだってさ。 マイッタ。 そーゆー解釈か。 マイッタ。 あたしが悪いんだ。
良ちゃんの態度が、 1月以来オカシイのを、 ユウコと2人して疑問だった。 良ちゃんはある一定の時期から、 あたしとユウコとのメールのやり取りをプツリと断絶し、 学内なんかで直接会ったときなんかも、 まったく話さなくなった。 避けていた。 ロコツに避けていた。 目をそらすし、 近づいたら「アッ」って顔して逃げる。 馬鹿みたい。 露骨すぎて。 ガキみたい。 「なにかがあったんだ」 って、 誰でもわかるよ。
ユウコと2人で遊んだ日、 その原因を知りたくて、 ユウコがトミタにそのことをメールで尋ねた。
あたしは大晦日にあった、 良ちゃんとのイザコザのこと(大晦日パニック。6)を、 誰にも話していなかったから、 話すべきではないと心に誓っていたから、 良ちゃんの態度の変妙について、 そのイザコザが原因であるかどうかもわからなかったけれど、 とりあえずの心当たりとしてそれはあった。 時期としてもあってるし。 だけど、 あたしは「傷つけられた側」だから、 しつこく覚えていることかもしれないけど、 良ちゃんの中ではそんなものどうでもいいことになっていて、 まったくそれが原因でないって場合もあるし、 本当にわからなかった。
ユウコがトミタに尋ねた晩、 トミタから、 「知りたかったら電話してきて」 ってあたしに、メール。 電話したら、 トミタが、 「アレは俺が悪いねん」 ってさ。 わけがわかんなくて、 とりあえず話しを進めていくと、
良ちゃんは、実はユウコのことが好きで。 トミタが偶然、ユウコと付き合うことになった後に、 それを良ちゃんとトミタの共通の友人から聞いてしまって、 トミタはユウコとのことを良ちゃんに報告できなくなってしまった。 ってさ。 だから、すごく仲のいい友達であるトミタに好きな人を奪われてしまった良ちゃんは、 あまりのショックに態度がおかしくなってしまったんじゃないか・・・、
ってのが。 トミタの見解。 「ユウコには話せへんやろ?」 ってトミタは言った。 確かに、 良ちゃんの気持ちを、 しかも失恋を、 良ちゃんの知らないところでユウコに話すわけには行かないだろうって、 思った。
あたしは良ちゃんがユウコのことを好きなんだって、 薄々気がついていたし、 それに関する驚きはまったくなかったんだけど、 それにしたって、 時期が合わない。 良ちゃんの態度がおかしくなったのは、 遅くとも一月の後半。 ユウコとトミタが付き合うことになったのは、 2月10日。 時期が合わない。 それだけが原因じゃない。
って。 そーいうあたしの指摘に、 トミタが言った。
「ぶっちゃけ、ほんま自分、鬱陶しかったんと思うで」
良ちゃんに大晦日に言われたこととまったく同じこと。 あたしがユウコと一緒にいすぎて、 あたしがユウコのことを過保護に守りすぎて、 良ちゃんがユウコに近づくのを邪魔して、 あたしの存在がどうしようもなく、 良ちゃんには鬱陶しかった。 んだって。 だから、 それがあたしが良ちゃんに「避けられている」理由なんじゃないの? ってさ。
うん。 大晦日に、良ちゃんにその言葉、聞いたよ。 あたし、 それ聞いて、 泣いたんだけどね。 スゲエよ。 トミタ、ある意味、尊敬するよ。 それを言われて、 あたしが傷つかないとでも思ってんの? あたしが電話で、強がって口にしてる通りに「ははん」って、 本当に心の中から鼻で笑えてると思ってんの? 馬鹿じゃないの?
だけど、 それを表に出したらいけないって思った。 良ちゃんがおかしくなった理由を、 話せって言ったのはあたしだし。 トミタはそれに対して、 正直に自分の見解を述べただけ。 だって。 割り切るしかなかった。 話はまだまだ続いてたし。
あたしは、 「大晦日に、あたしと良ちゃんは喧嘩した」 ってトミタに言った。 「良ちゃんの言葉にあたしがキレた」 って。 詳しくは喧嘩ではないし、 あたしはキレたわけじゃないけど、 言わないつもりでいたから、 言わなかった。 自分が泣いたことなんて言いたくなかったし、 大晦日の良ちゃんとほぼ同じ言葉を、 っていうかむしろそれよりもキツイ言葉を吐いたトミタに、 「あたしそれが原因で泣いた」 なんて、 いえるわけないじゃん。
あたしの言葉を聞いて、 トミタは納得した。 ああそうなんだ、って感じだった。 ああ、リョウと喧嘩したんだ、って。 「俺はそのことを知らないから、 それが原因なのかもしれないけどワカラナイよ」 ってさ。
その日の電話は、 他の友達に関しての事件とか、 ユウコとのこととかをその後に話して、 なごやかに電話を終えた。 あたしは、笑いながら電話を切った。 切った後に、 どうしようもない空しさが全身を襲って、 やりきれなくて、 馬鹿らしくて、 泣いた。
その二日後、 ユウコとのデートの後に深夜、トミタが電話をかけてきた。 「良ちゃんのこと、ユウコに話した」 って。 報告、だって。 はあ??? って思った。 二日前とまるで話が違うじゃんよ。 ユウコに離せないから、あたしに話したんじゃないの?
「なんか、もう仕方なかった」 って、 笑いながら言うトミタに、 ほんとよくわかんなくて、 「ああ、そうかもね」 って言った。 「やろ!?」 って、 トミタは意気込んだ。 他のいろんなことを話した後に、 トミタはいきなり、 「ごめんな」 って言った。
「リョウのこと悪者みたいにユウコに言った。そうとしか言えなかった」 ってさ。 「リョウと、良ちゃんの喧嘩が原因で、そのとばっちりを受けて、ユウコも良ちゃんに無視られてんだよ。って言った」 ってさ。
驚いたけど、 口から出た言葉は、 「いーよ、そんなこと」 だった。 謝るトミタの、 その「ゴメン」の意味がわかんない。 謝られて、あたしはどうしたらいいの? 許したらいいの? 許すとかそんなんじゃなくて、 呆れるよ。 二日前のトミタの見解と違うし。 あたしのせいだし。 ユウコはとばっちりだし。 あたし悪者だし。 なんだろー、ソレ。 なんか、よくわかんない。 「俺が一番悪い」 って言ってたその口で。 「リョウが悪い、ユウコはそのとばっちり」 って言ったの?
もー、 なにが真実なの?
ぐるぐる回る言葉に、 胸を痛めたところで、 何の発展性もないし、 あたしが『悪者』であることにかわりはない。 あたしのせいなんだって。 あたしが悪いんだって。 別にいいよ。 それでいいよ。
「悪者」扱いしちゃった、 ゴメン、 って、 謝られても意味がわかんない。 一昨日の電話でアンタは確かに、 「一番悪いのは俺」 って言って、 「てか誰も悪くないし」 って言って、 二日後にはあたしが悪者。 同じ話のはずなのにね。 すごい展開早いじゃん。 ちょっとすでにオモシロイよ。
おもしろいくらいに涙が出るよ。
もうすでに一度食らったはずのダメージを、 乗り越えてどーにか平静保とうとして、 根っこのところからひっくり返されて、 話戻ってるし。 馬鹿じゃないの。
ほんと馬鹿みたい。
で、 トミタから、 あたしが「悪者」だって聞かされた、 後の、 ユウコの、 あたしへの対応が見もの。
やっぱり、 電話を笑って、 笑って切った後、 泣いた。
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