今迄。そしてこれから。



 人生は苦痛であり恐怖である。だから人間は不幸なのだ。だが今では人間は人生を愛している。それは苦痛と恐怖を愛するからだ。


byドストエフスキー



「うーん、それは、現実的じゃないと思うよ。」
「何故?」
「だって・・・そりゃ君、あっちはそういう風に思っていないからさ。
つまりは、・・・あー、君の妄想。って所じゃない?」
「歯切れが悪いわりに最後はぐっさり言ってくれるね。」
「まぁね。伝えなくちゃならないことは、はっきり言わなきゃね。
後々後悔するし。」
「はは、まぁそれには同感だけどね。」
「おや、今日はやけに素直だね。」
「ちょっとね・・・参っちゃってるんだよ、一応。」
「へぇ、君が・・・ねぇ。」
「一応人の子だからね。鬼から生まれた訳でも無しに。」
「あはは。まぁ、そりゃそうだ。」
「嗚呼、ところでどうだと思う?」
「だから、言ったじゃないか、妄想だって。」
「・・・そういや、そうだったね。」
「わからないな。」
「何が」
「君の思慮だよ。やけに混沌としてるじゃないか、一体どうしたんだい?」
「・・・・さぁね。」
「いやに人間らしくなってしまっている。」
「それは、いけないか?」
「いや。悪くは無いとは思うよ、表面的にはね。」
「真意は?」
「言わせる気かい?・・・・・やめとく。そんな野暮なことは、ポリシィに反するんでね。」
「ああそうかい。」
「君がこの現状を変えたいと思うのなら、手助けしてやらなくもないけどね。」
「・・・」
「なんだよ、その顔は。」
「別に。この状況がどう変わるかなんて、予想つくのかなと思ったまでさ。」
「・・・痛い所を突くのが上手いね。相変わらず。」
「どうも。」
「・・・仕様が無いさ。あっちはあーゆう性格なんだ。」
「ああいう性格・・・・ねぇ。」
「そう、ああいう性格。例えそれが人を傷つけやすいものだとしても、ね。」
「それは身を持って体験したさ。」
「はは、そうだね。・・・なのに、何故一緒にいるんだい?」
「・・・」
「さっさと別れちまえばいいのに。所詮波長が合わない相手なんだよ。
気が合うとかそういうのは、最初会ったときに思ったのなら信用しちゃいけないよ。」
「何故?」
「おいおい。本当に今日の君は蒙昧だね。そんなの、決まってるじゃないか。
その心は、作り物だからさ!」
「・・・」
「一体何処のどいつが初対面の相手に本心を曝け出すんだよ?」
「まぁ・・・そうだけど。」
「だろう?その証拠にほら、君はもうあっちと波長が合わなくなってきているじゃないか。」
「仕様がないんだよ。」
「何が。」
「目についてしまうから、仕様が無いんだ。
相手の醜い心内が見え透いてしまって、嫌なんだよ。」
「・・・苦しいなぁ。」
「他人事だと思っているんだろう?いいさ、別に。それは真実なのだし。
けれど、このままだとなし崩しにあっちとは別れてしまう。そんな気がしてならない。」
「ふーん、君でもそういう風に思えるんだ。」
「だから、言っただろう?参ってるって。」
「確かに。今迄にない狼狽ぶりだね。」
「・・・笑うなよ。人間的に生きて何が悪い。」
「別に。悪いなんて言っちゃいないさ。」
「じゃぁ、なんなんだ。」
「まぁ、御想像に御任せするよ。」
「結局の所、お前は何をしてくれるんだ?」
「何を?    何もさ。」
「何も」
「そう、何も。」
「それなら、何なんだ、お前は。誰なんだ一体。」
「さぁ、それがわかっていれば苦労しないんだけどね。こっちも。」
「・・・想像か?妄想なのか、これは。」
「だから、それは分からないんだよ。永遠の不可解な問題さ。」
「何を言っている・・・?」
「君、今どんな顔をしているのかわかっているかい?」
「何が。」
「君の顔さ。ほら、この水面を御覧よ。君の顔がくっきり映し出されてる。」
「・・・」
「なんて、愚かな顔だとは思わないかい?」
「・・・」
「どうしたんだい、いつもの君は、何処へ行った?」
「・・・」
「自己を持て、忘れるな。所詮想像と理念、法則と仮説、
この区別を理解することのできない人間は惨めなんだよ。」
「・・・誰の受け入りだ。」
「ゲーテの偉大なる言葉さ。」
「ゲーテもお前なんかに自分の格言が使われたなんて思ってもないだろうな。」
「死人に口無し・・・だ。」
「はは、確かにそうだな。」
「で、お前はこれからどうするんだ。」
「どうも・・・どうもできないさ、あっちに言おうとも疎ましがられるだけに決まってる。」
「それは確実?」
「うーん・・・9割9分9厘。」
「・・・何も言わない方がよかったかな。」
「そう願いたかったね。」
「嗚呼御免御免。」
「そんな口だけなものはいらないよ。さて、本当にどうしたものかな。」
「いっそ離れてしまえ。」
「それでは解決にならないじゃないか。」
「いや、一時的にさ。離れるんだ、あっちと。」
「・・・何か変化は生じるのか?」
「どうだろうね。それは、あっちの中の君の割合によるね。」
「自信ないなぁ」
「そんな苦笑するなよ。これ以上の策が思い付かないんだ。妥協は大切だ。」
「自分で言うかな。仕様が無い。偶には従ってみるか・・・」
「『偶には』・・・?『何時もの通り』の間違いだよ。」
「そうだったかな?」
「ふふ・・・君はそういう奴だよな。」
「御誉め頂き有り難う御座居ます。」
「いえいえ、ドウイタシマシテ。」
「さて、そろそろ行くか。」
「もう?」
「やっとの間違いだろ。そろそろ生きる時間だ。」
「そうか、もう夜が明けるのか。では、また。」
「また・・・・」
「何て顔してるんだよ。」
「そうか?」
「顔の筋肉どうかしてるんじゃないかい?君がそんな笑顔するなんて・・・」
「失敬な。」
「まぁいいさ。こっちは何処にも行けないんだから。待ってるさ、ずっと。」
「こっちもそう願ってるさ。では、」
「御武運を。」
「有難う。」



<徒然に書いてあったやつ>











2002年06月30日(日)
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