今迄。そしてこれから。



 堕ちて。



酷い頭痛がしていて。
気を抜くと、その場にへたりこんでしまいそうになる。

雨の所為で気温が下がった外で、独り。
ぼんやりと灰色の空を見上げた。
未だ雨は降り止まない。

−基本的に、雨の空気は好きだよ。

あいつの言葉。
顔に容赦なく落ちる雫に眉をひそめる。
段々と服が黒く、重くずしりとのしかかる。
ふつりふつりと、短い糸を結びあわせていくように
記憶が浮かんでくる。


いつだって、笑顔だった。
感情起伏が激しかったけれど、大体は、笑顔だった。
楽観的。
一言で言えばそんな人。
眼鏡の奥の瞳は優しくて。
手を伸ばせばそこにいた。
嫌ってくらい、側にいた。



最後に泣かれたのは、いつだったか。






−大好きだよ、大好き。
−・・・。
−でも、行かなきゃならない。
−わかってる。
−忘れないで。忘れないよ。
−・・・わかってる。
−愛してるよ・・・。世界で一番。
 
『狂ってしまいそうになるくらいに、世界で一番。』





伝えれば良かった。
あの後自分は何も返せなかった。答えれなかった。
恥ずかしさもあった。
けれど、不安だったのだ。それ以上に。
言えるのならば、どんなにか言いたかったろう。

−愛してる。宇宙で一番。







雨は生暖かい涙と混じって、溢れてくる。
決して雨だけの所為じゃない滲む視界を、無理に見開く。
そうすれば、いつかのように、後ろから抱き締めてくれるかも知れない。
−風邪ひいちゃうよ。
そういって、笑って。
温かな体温を手に入れる。







悲痛な叫びをあげる心臓は、未だ真実を受け入れられず
その恋しい体温を探し求める。

もう二度と手に入らない安堵感。


あの時縛り付けてでも離さなければ良かった。
行くな行くなと泣叫んで不様にしがみつけば良かった。
でも、

あんな儚い笑顔を見てしまっては
自分にはもう何も出来ないことなど、百も承知だった。









愛しい人は、あのソラへ。



*



イメージはジェースネで。(うわっ)
シリアスは切なすぎてこわい。


*


2003年01月10日(金)
初日 最新 目次 MAIL HOME


My追加