twilight shackles
枷夜(かや)



 見えない痕。

メッセンジャーで会話。

「駄目元で聞く」

いきなり話を切り出した主様、
拾いに行って良いかと私に聞く。
...急すぎる。

時間はなんとか、出来そうだった。

「待ってる...」

主様から
「あと5分で着く」
メールが飛んでくる。準備をして出る。
拾われる場所の前にある自販機でお茶をと
思うと目の前にいつもの車が停車する。
急いで購入して助手席に座る。

...避けていただけに、ひとつひとつの行動に
違和感を感じてぎこちない。

シートベルトを締め、車はまた走り出す。
借りたCDを返して、昼寝場に到着する。
最近、昼寝場は別の場所になっているような気がする。

席を後部座席に移動し、眠れるようブランケットの準備。
主様は外でタバコに火をつけ煙と夜空を見上げていた。
車の中から、その姿を見つめる私はまるで...
檻の中から飼い主を見つめる犬のようだったと思う。

はじめは隅っこに居ようとしたのだけれど
引っ張られてそばに置かれてしまう。
はじめは話をし、次には仕事に響くからと
寝るように促されるが、咳が止まらず寝付けなかった。

話すことで緊張感が取れたのか...
しだいに、車内の空気が変わる。

「触れていいか?」

主様が体に触れてきて、私の体温が変化する。
声は簡単に喘ぎ声に代わり、息づかいも荒くなる。

「そのままじっとしていろ」

ふときつい口調で主様が言うと、位置で言えば
ペンダントトップがくるあたりに鈍い痛みを感じた。
主様は指で突いただけだと言うけれど、私には
ナイフの柄を突き立てられたような痛みだった。

「見えない、傷をつける」

突き刺す指に力がこもり、指が下へ移動する間も
声を漏らして感じている自分に更に恥ずかしくなる。

「もしも、奴隷としてあってはならない...」
「思考、言動、行動をしたときには...」

下までなぞった指は、今度は上に方向を変えて
「この傷が、痛みを疼きを枷夜に与える」
最後に更に力が加わり、一気に喉まで
「あっ...」
切られたような痛みに体を強張らせる。

その痛みを身体に残しながら体を使われ
染められていく自分を感じる。

朝...

いつものように、仕事場付近で降ろしてもらい
私が仕事に向かったあとの主様は安全運転のために昼寝。
起きるだろうと言う時間までに帰るメールが来ないので
用事のついでに近くのコンビニで朝食を購入し
主様を起こしに向った。










傷は、心の奥底で、見えないけれど、確実にそこにある。

2005年05月07日(土)
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