せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2003年02月20日(木) |
グリング「ヒトガタ」 |
ザ・スズナリでグリングの「ヒトガタ」を見る。 あ、そういえばと思いついて当日券をあてにして出かける。 下北沢について、駅前の大好きな定食屋「松菊」さんで晩ご飯。「かれいの煮付定食」 やっぱりおいしいねえ。 久し振りのスズナリだ。 芝居はとてもおもしろかった。 だから、何なのよ?みたいなお話ではあるんだけど、ちっとも退屈させないで見せてしまうのはすごいと思う。 ひな人形の首(顔?)をつくってる父親と、折り合いが悪い息子。おばあちゃんのお通夜に集まった親戚一同で、この家をこれからどうするか? 父親を息子の家に同居させて、いっそ売ってしまおうかという親戚たちの話が、くり広がる。 自殺した、息子の弟が、見えない存在でずっとこの空間を支配している。 彼がなぜ死んだのか。死んだときに恋人のところに行っていた父を許せないでいる息子、彼の妻は妊娠していると告げるのだが、「こんなに父親のことを憎むようになるなんて」と息子は「父親」になることをためらい、みんなに妊娠の事実を告げられずにいる。 弟がなぜ死んだのかということがはっきりわかる、そのための謎解きの芝居ではない。 息子が父を許す、もとい、自分も親になることを受け入れた後に、ふたりで「乾杯」と酒を飲見始める。その場面で芝居は終わる。 仲直りの説明的な台詞も何もなく、ただ「乾杯」だけ。この語らなさに、僕はやられてしまった。 出演者はみんな、それはいい腕を持っていて、見ているだけでうれしくなってくる。 こんなにさもない話なのに、ただただ楽しい。 「見終わった後に、何も残らないようなコメディがやりたい」と三谷幸喜さんは言っていたが、ある意味、この芝居も「何が残るか?」と言われれば、言葉にできないような気がする。 ただ、とんでもなく楽しい。見終わった後、理由のわからない涙が流れてきてびっくりする。 これは、物語の感動ということではなく、ただ「芝居を見ることの醍醐味」というものなのかもしれない。 以前見た「ハッシュ!」の舞台版「3/3(サンブンノサン)」に続く、2度目のグリング。 物語の筋以上に、その他の何かが感動を生んでる。その何かは何なんだろう? しみじみ考えながら帰ってきました。
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