せきねしんいちの観劇&稽古日記
Diary INDEXpastwill


2003年05月05日(月) 朗読劇「天守物語」

 日本橋にある定席「お江戸日本橋亭」での鈴々舎馬桜さんの独演会の最終日、朗読劇「天守物語」に出かける。
 馬桜さんの他には、佐藤誓さんと山下禎啓さんが出演。
 琴や太鼓や三味線の音を入れながら、義太夫の太夫が座る台に三人並んで座っての、朗読。
 泉鏡花の「天守物語」は大好きなお話だ。
 すっごい昔に玉三郎、孝夫コンビで日生劇場で見たことがある。
 ほんとに夢のような舞台だった。完全に僕の中には「スゴイ舞台」として刷り込まれてる。
 南美江さんの奥女中・薄っていう役がとってもステキでね。あとは、小池朝雄さんも出てたね。
 姫路城の天守閣に住む妖怪の姫と鷹匠の恋物語と言ってしまうと、身も蓋もないお話なんだけども、言葉のきれいなことと言ったら……。
 今日の朗読は、その言葉の美しさを堪能して帰ってきた。
 主な配役は(三人で分担してるからね)、冨姫が山下さん、図書助が誓さん、亀姫、薄、朱の盤坊、舌長姥、近江丞桃六が馬桜さん。
 みなさん、それぞれとってもよかったんだけど、びっくりしたのは、馬桜さんだ。
 噺家さんというのは、なんていうんだろう、古典の言葉がカラダに入ってるのかな、やっぱり。どの役もそれは見事だった。たぶん、「息」がね。
 鏡花の文体って、やっぱりこういうものなんだなあと改めて思った。
 絢爛豪華でキラキラしてるけど、息としては、講談、もしくは落語の世話の語りに近いんだ。 新派ともちょっと違うかんじ。
 「お江戸日本橋亭」は席数200弱のちんまりしたハコ。座椅子がならんで、ほんの少しだけ傾斜してる。
 客席は、花組芝居のファンだと思われる女性がたくさん。男性は、僕を入れても十人もいなかったと思う。
 休日の日本橋はほんとに人がいなくて、不思議な街になってる。
 帰りは、鏡花の台詞をあれこれがんがんしゃべりながら銀座まで歩いてしまう。
 三越本店がすごいイルミネーション。デコレーションケーキか?!
 中央三井信託銀行は、ライトアップでエンタシスの柱がきれいに浮かび上がってる。
 「日本橋」も、全体がきれいに照明で演出されててびっくり。高速道路の裏側まで。
 気がつけば、夜のこんな時間にこのへんを歩いたのは初めてなんだった。
 橋のたもとの「滝の広場」っていうのが、ステキでね。水がいっぱい流れてて。しばらく風に吹かれながら、川面を見てしまった。こんなところに「一人で」いるっていうのが、むちゃくちゃ残念。でも、いい気持ち。


せきねしんいち |MAILHomePage

My追加