2002年07月06日(土) |
好きだったことを、忘れてた。だからこんなに辛かった。 |
言葉を綴ることが好きだった。 白いノートに、鉛筆で文字を書くことも好きだった。 何の意味も成さない、ただの五十音の羅列でも、 鉛筆の芯から生まれる黒い線が文字を成す、そのこと自体が好きだった。 妙に不思議で、じっと鉛筆の芯を見ながら文字を書いたりもした。 たまにあたしひとりだけが異世界に投げ出されたような気になって、 不安な気持ちになりながらも一生懸命文字を書いていた。
好きなことを、ただ好きなだけでよくて。 好きなことを、気ままに続けているだけでよくて。
世界はあたしに優しかったから。
学年が上がるにつれて、周囲との違和感も大きくなる。 あたしは「普通」を振舞うことに慣れて、 自分の感情を殺すことも容易いことだと思うようになった。
意味をなさない文字の羅列は 次第にあたしの思考を映し出すようになり、 書いている間、自分が自分じゃなくて… ううん、違う。 書いている間の自分が「本当の自分」で、 明らかに「現実」とは違う場所にいて、 自覚したら「異質」さに恐怖した。
自分が特別だと感じたわけじゃない。 人はみな、誰一人「同じ」人間は存在しなくて ひとりひとりが全て「代えの効かない」「特別」な存在で この世界を生きている。
あたしだけが「普通」の枠から外れていた。 「普通」でいることが嫌だったのもあるけど、それはあたしが 「普通」になれないからだった。 合わせようとしても、どうしてもずれる。歪む。 段々馬鹿らしくなって、辛くなって、合わせる努力を止めた。
文字を書くことだけは止めなかった。 話を作ることが好きだったから。 感想文を書くことも好きだった。 書いている間は素直でいられたし、 何故か其れが認められたりもしたから。
最近、 今までどうやって言葉を紡いできたのかをすっかり忘れていた。 何かを書くことが辛かった。 上手く表現出来ない自分がもどかしくて、嫌いだった。 書くことだけが唯一の手段だったのに、其れすらも出来なくなった自分に吐き気がした。
何も生み出せないあたしを 君が見捨ててしまうんじゃないかと、馬鹿なことを考えたりもした。
君を信じていなかったわけじゃない。 あたし自身が信じられなかったから。
あたしの価値は、書くことだけなのだと思い込んでいたから。 書けなくなったあたしの傍から、君が離れていくのが怖かった。
どうしようもなく弱くて どうしようもなく狡くて どうしようもなく臆病なあたしだけど
やっと思い出せた気がする。
書くことが好き。 キーボードに乗せる両手が生み出す「あたし」の言葉を これからも少しずつ、遺していきたい。
自分の書いたものを好きになることはあまり無いけど 君が好きだと言ってくれるから 君のその言葉だけで、全てが報われる気がするから。
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