Diary
沙希



 フィクション。


君のセリフが今も、頭の中をぐるぐると回っている。

瞬きをしても君の姿がまぶたの裏に映る。

逃れられない。

青信号を確認してからゆっくりとアクセルを踏みこむ。

パチンコ屋の節操のないネオンを横目に見ながら街の中を走る。


『さよなら。』

と確かにそのくちびるは動いたはず。夢か幻でなければ。

1ヶ月前に『大好き。』と囁いた

君の笑顔とは対照的な暗い暗い表情で。

まるでこの世の不幸をスベテ背負い込んだみたいな表情で。


一体なんの為の今日だろう。

君に別れを告げられる為に、今日という日があったのなら

今朝昇った太陽さえも怨みたくなる。

別れと出会いは人生において良いスパイスである。

なんて今はトテモ言える訳がない。

絶望的というのはこういう心境の時にある言葉なのだろうと

なんとなく冷静に考えてしまった。


黄色の点滅信号が目に染みる。

歩行者の居ない深夜の道路をただひたすら真っ直ぐ走り続ける。

行くあてなんてありはしないのに…。

2003年07月06日(日)
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