つぶやける乙姫
辛口なのか、毒なのか・・・

2006年10月28日(土) 「フラガール」

最近、邦画がいい感じですな。
一時、邦画はもうだめだみたいな雰囲気になってきてましたが、なんちゅーか、映画哲学で凝り固まった感じじゃない作品が徐々に作られるようになってきたのもいい傾向だと思うのです。
なんだか一時期の日本映画は「映画は芸術だ」とでもいいたげな、前衛的なものとかある種オタクっぽい嗜好向けの作品が多くて、ワシもちょいと遠のいていたのです。まぁ、確かに娯楽映画として真っ向からハリウッド映画と戦うには、道交法も厳しいし、予算も規模も厳しいしってなわけで(おまけに韓国みたいに国産映画の上映率が決められているわけでもないし)、それとは違う方向に走らざるを得なかった感もあるのですが、派手なカーアクションや壮大なスケールのセットがなくても充分に「娯楽作品」は作れるのだと最近の作品は物語っているような気がします。
そもそも、「情感」という部分に長けている日本映画なのですから、そこに訴えかける作品をじっくりと丁寧に作っていけば自ずと良作はできるってことで。


っつーわけで、「フラガール」です。
当初、しずちゃんが出るということだけが前面に出ていたので、ノーマークだったのですが、あちらこちらでいい評判を聞きまして、こりゃ見ておこうかと行って参りました。


<あらすじ>
昭和40年、福島県いわき市で、炭鉱のかげりを機に町おこしの一大事業として「常磐ハワイアンセンター」を作るまでの話。
男は炭鉱夫として、女は選炭婦として働くことが当たり前だった頃と違って、石油の波に押されて業務縮小せざるを得なくなった当時、リストラ人員の増加に伴い石炭会社が考えたことがいわき市に「ハワイ」を作ることだった。
学校にも行けない現状から脱却するにはこれしかないと、ダンサー募集の広告に心を決めた早苗と、その早苗に頼まれて一緒にフラダンスを始めることになった紀美子(蒼井優)、子持ちの初子、そして一際大きな小百合(しずちゃん)はフラダンスの練習を始めることになる。ダンスの練習のために呼ばれたまどか先生(松雪泰子)は本場ハワイでフラダンスを学び、元SKDという本格派だが、いかんせん母親作ったの借金にまみれて自暴自棄になり、酒におぼれる日々。
生徒たちもまどかの実力に対して疑惑の念を抱いていたが、あるとき一人で踊っているまどかの姿を垣間見た生徒たちは、本気で踊りたいと考え始め・・・。



とまぁ、こんな感じです。
いやぁ〜、人間ドラマです。基本は紀美子と、まどかを中心としてはいますが、よくできた群像劇です。
閉鎖へと向かう炭鉱の姿も胸を打つし、そんな中で炭鉱を炭鉱として守ることに必死になる人と、別の道を探していかなくちゃいけないとあがく人と、誰もが一生懸命であるがゆえに、見ているこっちも真剣に考えてしまいます。肺を真っ黒にしながらも石炭を掘り続け、天皇陛下が視察に来てくれればそれを生涯の誉れとした時代に生きた人たちのなんとピュアなことよ。思わずじーんとしてしまいます。
登場人物の誰もがまっすぐなもんで、見終わったあとになんとも清清しい気持ちになれるのが、この映画のいいトコロです。
説明的なセリフが上手く排除されて、それでも言わんとするところが伝わってくるという、日本映画(というかアジア映画)のいい面が良く出ているし、これが「映画ってもんでしょう」といい意味で言うことのできる映画だと思います。
それにしても、フラガールたちのダンスはすごいです。特にまどか先生のダンスは本当に綺麗です。ここが決まっているから、紀美子たち四人がやる気になるのもよくわかる。ラストの紀美子のソロも綺麗だし、なんだかフラダンスをやりたくなってくるから不思議だ(笑)。っつーか、かなり見ながら一緒に踊ってる気になってるワシも随分とはまり易い・・・(笑)。

それと、評判は聞いていたけれど、ここまで泣ける映画だとは知らず気を抜いていったせいか、中盤以上ずっと泣きっぱなしだったワシ。背後からは初老の男性のすすり泣きなども聞こえ、会場が涙の渦に包まれておったとですよ。早苗ちゃんにも泣かされ、駅のシーンでも泣かされ、紀美子のお母さんにも泣かされ、ラストでも泣かされ、いやはやもうなんというか、見終わったあとで会場が明るくなるのにここまで困った映画も久しぶりです。

最近ではまれに見る良作です。
ぜひ多くの人に見てもらいたいし、これを見て感動できるなら、まだまだ日本人も捨てたもんじゃないと思います。


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