夜の闇 |
夕暮れに外出して、ふと思った。 どうして外が明るいんだろう?
田舎にいたころは、日が暮れるとともに、外は闇に包まれた。 晴れていれば、月明かりで、うっすらと周りが見渡せる。 空が雲で覆われているときは、本当の闇夜になった。 冬の夜は、雪原が月明かりに照らされ、その反射によって神秘的な風景が広がっていた。物語に出てくるような、これから何かが始まるんじゃないかとふと思ってしまうような、そんな風景が、僕は大好きだった。
いま、闇夜は減っている。 確かに、暗い夜道を減らすことは、安全性の向上に貢献しているのだろう。実際に、暗かった道に街灯を増やすことで、変質者の発生率や、犯罪率が格段に下がるらしい。
ふっと、闇夜が懐かしくなることがある。 闇夜は、心の中にある闇と向き合う事が出来る、ただ一つの場所。 闇夜の中を、自分の足音しか聞こえない、薄明かりの中を歩いていると、とりとめの無い考えが渦巻き始める。それは、過去の忌まわしいことであったり、未来への不安であったり、現在への苛立ちだったりする。 人は、不安を誤魔化して生きていくことは出来ないのかもしれない。 自らの中に生まれた、漠然とした不安を放って置くと、いつしかその不安ははっきりとした形を持ち始め、やがて現実のものになるような気がする。
だから、僕は闇夜を懐かしむ。 雪の積もった平原を、月明かりに照らされながら、ぼんやりと歩く、そんな時間を常に持っていたいと思う。 僕にとって、その時間こそが、自らの中にある闇を払拭できる、唯一の時間であるような気がするから。
-- 今日読んだ本 女王の矢 M・ラッキー著 笠井道子訳 教養文庫
評:名作。 タルマ&ケスリーシリーズを書いた作者の作品。 ファンタジィが好きで良かったと思う。 全てのシーンが好きで、全てのシーンが心に残る。 上質のファンタジィには、全てが詰まっている。
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2001年11月10日(土)
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