| 【読書】哲学の謎 |
哲学の謎 野矢茂樹 著 講談社現代新書
感想: 思考の手順が、すごく似ているな、と思いつつ読んだ。 自分の中にいるもう一人の自分との対話、と言うスタイルで、誰もが一度くらいは考えたことがあるようなことを、だらだらとではなく、シャープにつらつらと書いていらっしゃいます。 難しい言葉は一切出てこないし、会話形式の語り口調が軽快なので、すいすいと読み進めていくことが出来ます。
ウィトゲンシュタインは、かつて思想は言葉として表さなければ意味は無く、語り得ぬ物については沈黙しなければならない、と『論理哲学論考』において述べましたが、野矢さんは『「論理哲学論考」を読む』という著書の中で、語り得ぬ物については語り続けなくてはいけない、と述べました。 その主張の通り、本書では「語り得ぬもの」について、いろいろと考えを巡らしていきます。目次から一例を取れば、
・死んでも世界は終わらないか ・5分前世界創造仮説 ・時間の流れの速さ ・私的言語
などのような、簡潔だけど答えの出ない事柄が並んでいます。
「哲学」ってものは、ウィトゲンシュタイン流に言えば、ただの言葉遊びです。 言葉の意味、それが人によって千差万別である以上、完全な思想の伝達はあり得ないのに、なんとかそれを形にしようと試みている。全ての学問は、哲学の亜流に過ぎないと言う極論も存在します。数学は、思想を数式によって伝達しようとしたものであり、化学や科学、力学なんかも同じですね。また、実証の積み重ねによって思想を形作ろうとしているものが、地理であり歴史であり、生物学なんかもそうかな。
いろんなことを、いろんな角度から眺め、いろんな感想を持つこと。 それが、僕の考える哲学です。 全ての物事の側面は一つだけではないし、当然ながら同じ面でも観察するものによって異なる。 その観測の結果も、表現の方法によってまた沢山の枝に分かれ、 さらに、その枝すらも、観るものによって受け取り方が違う。
生きる理由なんてものは必要ないけど、 あえて求めるなら、自分の思想を、誰かに伝え、 その中身を100%理解してもらいたい、ってことに尽きるのかもしれません。
そんな、考えるきっかけを与えてくれる本だと思います。
Amazonでの紹介ページ
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2003年07月04日(金)
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