オトナの恋愛考
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もう少しtacの話をさせてちょうだいね。あなたと別れたとたんに別の男とそんな風な関係になってしまった私をあなたは淫乱な女だと思うかもしれないけれど正直な話私はあなたと付き合っていた頃ほど淫乱ではないと思うし寧ろ刺激的な関係など求めてはいなくて穏やかな日常を彼に求めていたんだと思う。私だけをみつめてくれる男が欲しかったんだと思うしそれが彼なのかどうかわからないけど実際に抱き合って眠る時の肌の体温だとかあなたにはなかったモジャモジャした体毛とか口髭だとか時折見せる哲学者みたいな横顔なんかに私は惹かれていたんだと思うし彼はとても車が好きで(実際世界を代表するような有名な自動車の会社のそれも開発をする前の段階にいて超インサイダーな仕事をしていた)よく私にモータースポーツ関係の動画を60インチのモニターで見せてくれながらとても難しい話を延々としてくれてその28%くらいしか理解できなかったけれども私は彼の言葉遣いや声や話し方が好きだったのでうんうんとわからなくても微笑みながらそのメロディみたいな声に浸っていた。でも動画に飽きて今まで興味もなかった韓国の恋愛映画を立て続けに3つも大きな外国製のソファにくっついて横になりながら観た時にちょうど同じ場面で彼も私と同じように泣いていたのがわかって彼よりも涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた私はなんだか困ってしまって彼の泣き顔はみたくなかったけど実際私も目が腫れていたのと間接照明だけの部屋だったので良く見えなかったから良かった。恋愛映画を一緒に観ても絶対に泣いたことがないあなたよりも彼の方がきっとずっとずっと心がガラスのようなもので出来上がっているんだと思った。さてそろそろ猫の家の話をします。彼の家には美しい猫が同居していて私と彼との奇妙で不思議な共同生活は言うなればこの美しい猫がいなくちゃ成り立たなかったのかもしれない。彼女は彼の最愛の娘で妻で恋人だった。それまで彼とベッドを共にしていた彼女は私は割り込んだおかげでリビングの隅のスゥエーデン製のクッションの上がベッド代わりになってしまったけれど別に文句を言うわけでもなく黙って私たちが愛し合うのを興味なさそうに見ていた。ある朝、私がtacの体に跨って腰を動かしているときに一度だけ彼女と目が合ってしまい逝けなくなって困った事があった以外はけっこう私たちはうまくいっていたと思う。
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