「金環日食見た？」
昼過ぎにひろからメッセージが届いた。

本当にここ最近ランチタイムにメールがくる。
今まではけっしてなかった事だ。

「こちらは曇っていて見えなかったよ。ひろは見た？」
「残念だったねーこっちは見えたよ。」
「良いな、キレイだった？」
「神秘的ではあったけど子供の頃みたいな感動はなかったな。」
「いつまでも子供の頃の心を忘れたくないね。あ、ひろは時々子供みたいだった（笑）」
「痛いところを突いてくるなー（笑）今病院で検査なんだ。またあとでね」

今年の健康診断にひっかかって治療中だとは知っていた。
けど、私のアドヴァイスなんかいう事聞くひとじゃない。心配するのはとっくに諦めた。

朝の曇り空から晴れ間が見えてきた。

最後のメッセージを送ってから
私はベランダで洗濯物を干してそれから大きく深呼吸をした。

遠い東京の空の下で健康を害するほど忙しく仕事をする彼と
遠くの山並みや海に囲まれたこの小さな田舎町に住む私と
いったいどんな接点があったんだろうか。

2年前のあの日、こんなに長く続くとは思っていなかった。


金環日食が見れるのは今度は１８年後らしい。
その頃、私とひろは元気に生きているだろうか。
どこでそのニュースを見ているのだろうか。

夢うさぎ ｜MAIL

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