空虚。
しずく。



 悲愴。

頭がずっと、熱を持っている。
考える事を、放棄してしまいたくなる。
掠れた自分の声が嫌いで、口を閉ざしてみる。
一人になりたくて、瞳を閉じてみる。

おと、だけが鳴っている。
少しだけ耳障りに、心地良く。

ちりちりと、煙草が焦げる音がする。
煙をめいっぱい吸いこんで、吐き出す。
肺の奥まで、満たされていく。

遠くから、虫の声がする。
静かな音は、キーボードを叩く音に侵され、不協和音に変わる。

何も形容出来ない。
力が抜けて、立てない。

今、私は泣きたいのだ。そう思う。

ただ、思うだけ。

また、あの冷めた顔をして。

思うだけ。


こんなに、生きたいのに。
どうしてずっと、死にたがるのだろう。

何故、謝らなければいけないのだろう。
何故、許されなければならないのだろう。
何故、忘れなければいけないのだろう。
何故、責められなければならないのだろう。

辛い時、苦しい時、どうしていただろうか。
泣くのを堪えていただろうか。涙をこぼしていただろうか。
腕を切っていただろうか。酒を飲んでいただろうか。
誰かにすがっていただろうか。誰かに触れていただろうか。

それを繰り返せば、痛みがわかるのだろうか。

何も痛くないはずなのに、とても、気持ち悪い。
それ、を考える事が出来ない。うわべだけを、なぞる。

このまま眠ってしまえば、夢を見るだろうか。
また、現実のような夢を。何度も、何度も。繰り返して。

…疲れて、いる?

漠然と、漠然と。何もかも形を為さぬまま。


"ピアノ・ソナタ 第8番 《悲愴》〜第2楽章"

2005年09月16日(金)
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