2006年09月10日(日)
脇役カップル3
彼がこういう扱いになることは当初全く考えていなかった。 彼女がこういう扱いになることも全く考えていなかった。 どちらも全く違う物語で、偶然に生まれたからだ。
家が隣同士で、同じ病院の産婦人科で生まれて、家族ぐるみで仲がいい。少女漫画かよってぐらいコテコテな幼馴染み。 ベランダのある俺の部屋の窓を開ければ優の部屋の窓が真正面にあって、飛んで行き来することも出来る。優も俺も。 ここまで来たら、誰だって予想が付くだろ? 俺達は付き合って六年目になる恋人同士だ。 逆算すればわかるけど、俺が小六の時に付き合い始めた。
男だけ飛べるのはつまらん。彼女にも飛ばせてみた。2006年09月09日(土)
脇役カップル2
彼女を主人公に据えようとしたことがあった。 だが、やめた。 その案全体に行き詰まりを感じたのと、やはり彼女には脇役であってほしかったからだ。
大室(おおむろ)静枝(しずえ)。これが俺の名前だ。 性別は女。一応一目で女とわかる容姿のつもりだ。 年は十七。中高一貫の女子校に通っていて、現在高二。 一人称、「俺」。 場合によっては「わたし」と言う。この口調と合わせて、女が「俺」と言うのがあまりいい印象を与えないこともあるのはよくわかっている。 それでも俺は自分を「俺」と呼ぶ。昔は意地みたいなものもあったけど、今はこの一人称が自分にとってあまりに自然すぎるからだ。 俺は覚えてないけど、小学生の頃あいつが「俺」と言い始めたのを機に俺も「俺」と言い出したのだと家族は言う。 あいつ。俺の幼馴染み。 谷(たに)優(すぐる)。
2006年09月08日(金)
脇役カップル
私は彼女を「世界の交点」と呼ぶ。 何故なら彼女はいくつもの物語を一つの世界たらしめる人物であるからだ。 彼女には恋人がいる。 彼は一つ年上の幼馴染みだ。 彼らは無意識にバカップルをしてよく周りに砂を吐かせる。 二人の関係はその程度の設定しかなかった。 だが、彼女が関わることになる、新たな物語を脳内で紡いでいた過程で、偶然に、彼らにもう一つ設定が加わることとなった。 それは――彼らがたった七日間しか誕生日が違わない、ということ。
一週間。 たったの7日間。 この168時間で、俺達の一生は決まった。 あいつが俺より7日前に生まれて、俺はあいつより7日後に生まれた。 三月と四月を跨いで生まれた俺達は、たったの7日分しか生きて来た時間が変わらないのに、一つ違う学年として扱われることになった。 生まれてからずっと一緒に育って、誰よりも傍にいて。でも同じ学年になることは無い。 これが数ヶ月とか半年とかであったなら、また違っていただろうと思う。 一週間。 たったの7日間。 一生追いつけない168時間。 あいつは三月二十九日に生まれた。 俺は四月五日に生まれた。 それだけで、俺達は一年の内358日も同い年なのに、あいつは俺より一つ上の学年に、俺はあいつより一つ下の学年に分類された。 子供にとって、学年が一つ違うということがどれほど大きなことか。 俺達は誰よりも身に染みて知ることになった。 特に、俺達は。 当たり前のように、奇跡みたいに、恋に落ちたから。
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