岸部・・・?
目次|前の日|次の日
詐欺の罪に問われた男性被告(32)の公判。
起訴状によると、被告は中華料理店に入り、生ビール2杯など計5340円を無銭飲食した。罪状認否で被告は起訴事実を認めた。
初公判では、約20席ある傍聴席が満席だったことに被告が「やだやだ。なんでこんなに(傍聴人が)いるの?」などと言い、裁判を嫌がるハプニングがあった。
両脇の刑務官から引っ張られるようにして被告は入廷し、被告人席に座った。裁判官が入廷するとすぐに、被告は裁判官に傍聴人を退廷させるように訴えた。
被告「みんな出してもらうことできないんですか?」
裁判官は優しい口調で被告に語りかけた。
裁判官「それはできないんだよ」
被告「はずかしい」
裁判官「裁判は公開になっているので、出てもらうことはできないんですよ」
被告「緊張してできない。なんでこんなにたくさんいるの?」
その後も被告の動揺は治まらず、裁判官は「今日はやめよう。別の日にしよう」と述べて、30日に公判を開くことを告げた。
30日には、数人しか傍聴人がおらず、被告は当初前回よりは落ち着いてみえた。だが、被告人質問が始まると、身体をくねらせたり、裁判官に向かってピースサインをしたりと奇行を繰り返した。
被告人質問の最中も被告の奇行は続いていた。
弁護人「金を持ってないのはわかっていた?」
被告「わかっていた」
弁護人「無銭飲食はこれまでしたことある?」
被告「ないです」
弁護人「お店の人は困ってないかな?」
被告「知らない」
弁護人「悪いと思わない?」
被告「悪い」
弁護人「2度としないと言える?」
被告「言える」
弁護人「もう1度社会に出たらどう生活する?」
被告「考えていない」
弁護人「今仕事ないよね」
被告「はい」
弁護人「仕事を探さないといけないよね」
被告「…」
検察側の冒頭陳述によると、被告は中学を卒業後、ホストクラブで働くなどしていた。
検察官「ホストはどれくらいやった?」
被告「8店舗くらい」
検察官「1店舗あたりの期間は?」
被告「半年くらい」
検察官「捕まる前、仕事はしてなかった?」
被告「してない」
検察官「さっき『無銭飲食をしたことない』と言っていたけど、ちょっと前に(無銭飲食で)捕まってなかった?」
被告「捕まってた」
被告は笑いながら答えた。検察官がさらに質問しようとすると、被告は「やだ、スケベ」などといって、嫌がった。困り顔の検察官は「2度としない?」と問いかけると、被告は「わかった」と述べた。
検察側は懲役1年6月を求刑した。
「最後に何か言いたいことはありますか」と裁判官に問われると、被告は証言台の前でクネクネと踊りながら、「今後は楽しくやります」と述べた。裁判官は、なおも被告から反省の弁を引き出すべく「楽しくやるためにはどうしたらいい?」と被告に優しく問いただしたが、被告は笑ったままだった。
公判は結審し、そのまま判決の宣告に移った。裁判官は懲役1年2月の実刑判決を言い渡した。
閉廷後、被告の弁護人から話を聞くことができた。
弁護人によると、警察署で接見したとき、被告は落ち着いていた。日によって波があるらしく、様子が違う。「知的障害があるわけではなく、人格障害だろう」という。
被告は2歳のときから養父母の下で育った。現在はその養父母とも離縁している。
弁護人は「親の愛情が薄いまま大人になると、何かうまくいかないと、人のせいにするようになる」と語る。
「服役すれば矯正教育されて出てきますかね」と記者が問うと、弁護人は苦笑いして「悪いことを覚えて帰ってくるだけじゃない?」とあきらめたように言った。雑居房に入ると、被告のように異質な人間はいじめられることもあるという。「(出所後)薬物中毒なら民間が運営する受け入れ先があるけど、人格障害者にはない」と弁護人はため息をついた。
被告のような人への矯正効果を上げるためにも、刑務所には受刑者の個別の事情に応じたきめ細かな更生プログラムを期待したいのだが…。(末崎光喜・産経ニュース・msn)
|