皇帝の日記
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連休だったので、人が来たりしていた。
さて、鼻吸い器。 赤ちゃんは自分で鼻水を外へ出せないので、お母さんが吸い出すか拭うかしてあげなければならない。 鼻が詰まっていると、ミルクを巧く飲めないし、中耳炎になったりすることもあるとか。
日本の鼻吸い器は、お母さんが器具の一方を口に入れて吸い込む事で、吸い加減を調節できる、デリケートな作りになっている。 でもアメリカの鼻吸い器は、ただのでかいスポイトだ。 吸い加減などしゃらくさい事は言わない。 なんでも良いから吸い出せば良い。
実は日本の鼻吸い器も持ってきているのだが、これに関しては、アメリカ式の方が良い。 日本の鼻吸い器は、お母さんの吸い口と、赤ちゃんの鼻の穴の両方を持たなければならないので、赤ちゃんの頭を固定しにくいのだ。 しかも、お母さんの肺活量次第では、けっこう長々と嫌がる赤ちゃんの鼻を吸ってないと、綺麗にならない。 しかも至れり尽くせりな事に、吸い口の下の所にあるボトルに鼻水が溜まる仕組みなので、そこまで吸い込まなければ、チューブに鼻水がつまってしまう。 何度か的を外しながら、だらだら吸うので、時間がかかる。
アメリカ式の方がシンプルで簡単。 嫌がるイサムさんの後頭部をガッと掴んで、スポイトを入れて、ジュッと吸ってしまう。 「ニャー!!」と嫌がるイサムさんに有無を言わさず、すぐさま2、3回吸うと、鼻水がずる〜っと出てくるので、それをティッシュで拭ってしまう。 両穴で5分もかからないのである。
子育ては、時に大胆に。
そんなわけで、結婚式に行ってきた。
自分の結婚式じゃないと、なんと気が楽な事か。 駐車場から教会まで、スキップで行ってしまう程。 ふんふふん。
さて、式はパサディナの市庁舎前の立派な教会で行われた。 二人ともプロテスタントなので、牧師さんがチャキチャキと式を進める。 ちょっと前の席に、9ヶ月くらいの赤ちゃんを発見! いいぞー。 赤ちゃんが声を上げても、どっちの赤ちゃんが犯人かわからない。
演奏(花嫁入場) 赤ちゃん:あー! イサム:にゃー。(おなかすいた)
新郎友人:(詩の朗読)愛とは忍耐であり・・・・ イサム:ぶっぶっぶっぶ(おなら)
牧師:この結婚に異論の有る者は、今申し出なさい。さも無ければ永遠に口を閉ざしなさい。 赤ちゃん:あーうー! 牧師:今のはカウントしません。
牧師:この二人を夫婦であると宣言します。 イサム:げふっ!(ゲップ)
牧師:それでは皆様、二人のために祈りましょう。 赤ちゃん:うー!うー! イサム:ニャ!(遊んで!) 牧師:・・・アーメン。
というわけで、見事な連係プレイで、適度に間の手を挟んだ式でありました。 ・・・すまん、友よ・・・。 でも、ルームメイト二人とも、ベビーシャワーで会ったきりだったので、イサムさんとは初対面。 とても喜んでくれたので、良しとしよう。
花嫁はコックさん。 前々から、この子は美人なのに化粧しないなー(職業柄?)と思っていたが、今回初めてフルメイクで、やっぱりすごい美人なんだなーと思った。 そして、姉妹が沢山いるのだが、皆同じ顔。 すごい美人が沢山集まると、とても迫力。
新郎はグラフィックデザイナー。 前の前の家からルームメイトだったが、その頃から「僕は結婚するなら彼女とするのだ」と言っていたので、念願かなって、とても幸せそうだった。 良かった良かった。
ルームメイト達は、単独でそれぞれ遊びに行ったりしていたが、久しぶりにメンツが揃ったので、近況報告に花が咲く。
と、そこへツカツカと牧師さんが歩み寄ってきた。 ぎく! まさか、教会で屁をこいたイサムさんに、怒っているのか? それとも、トイレが汚かったから、廊下でオムツを取り替えたのがばれたのか?(不敬) でも、絶対マリア様はそんな事気にしないよ?
「あなたの赤ちゃんを祝福してもイイデスかー」 あ、良いですよ。 どうぞ。
イサムさん、おでこで十字を切ってもらって、なんやら呪文を唱えてもらった。
我々が、大した仏教徒でもないのに、坊さんに説教されると何やらありがたい気持ちになるのと同様、クリスチャンではないジャバ夫さんも、キリスト教社会で生きてきたので、教会の人に祝福されると、ありがたい気持ちになるらしい。 「イサム、ブレスしてもらってラッキーだったねー」 と言っていた。
お母さんは、ちょっと「ドラクエみたいだなー」と思っていた。 呪いの装備を外してもらうのね。 だってイサムは勇者だもの。
で、会場をレストランに移して、レセプション。 イサムさん連れでは長居は難しいので、お料理だけ平らげて、ケーキカットとかは見ずに、9時頃おいとましました。 レストランでは、オムツは駐車場で交換した。 アメリカのトイレって、オムツ変えるような所がないんだよなー。
お料理は、前菜一品がコック花嫁の手作りパスタで、ソースは花嫁の父が作成。 サンディエゴから、冷凍したトマトソースをはるばる運んできたそうな。 美味しくいただきました。
イサムさんは、奇跡の子なので、レセプション中ずっとおとなしく、眠りっぱなし。 こんなに眠っちゃ、夜起きちゃうんじゃない?と心配していたが、夜は2時と4時にお腹がすいて起きただけで、やっぱりよく眠っていた。
良い子だ。
ジャバ夫さんと、散歩中にすれ違う赤ちゃんを、勝手に「イサムのライバル」と呼んでいる。
どちらがかわいいのか。 勝手に審査している。 イサムさんは連戦連勝。 何故なら、ライバル達にはハンディが有るのだ。 審査員の子供でないと言うハンディが。
「いやー今のライバルは僅差だったけど、やっぱりイサムの勝ちだね」 「イサムの方がほっぺがふくよかで、かわいいね」 とか、まことに勝手に言いたい放題。 赤ちゃん連れが道の向こうから歩いてくると、「イサムのライバルが来た!」と馬鹿夫婦は身構えるのだ。
ところが、ハンディをものともしない強敵が現れた。 その名もキキちゃん。
キキちゃんのお母さんは中国人とのハーフなので、キキちゃんはクウォーターアジアン。 黒いつぶらな瞳。 6ヶ月なのに、女の子のせいか、小柄でイサムさんよりちょっと大きいくらい。 いつもご機嫌で、ニコニコしている。
かわいい。 申し分無くかわいい。 アイドルイサムの地位が揺らぐ。
お父さんが、ジャバ夫さんの仕事関係の人なので、パーティーとかで時々出会うのだ。 ジャバ夫さんは、勝手にキキちゃんをイサムのお嫁さんにしようとしている。 二人の出会いを作戦立てているのだ。 まことに勝手な親心。
さて、今日は元ルームメイトどうしの結婚式! イサムさんも招待されているので、おめかしして行って参ります。 式の間、静かにしててくれるかなー。 どきどき。
最悪の事態は、ミルクを吐く事だな。 誓いの言葉あたりで。
写真屋さんから、撮影した写真のリンクが送られてきた。 全てすばらしい出来具合でルンルン。 イサムのチャームポイントが、きちんと撮れている。 (チャームポイント:でこっぱち)
プロの写真とは、一体何が違うのかなーと見てみると、やっぱり「光」が断然良い。 素人目にも、写真が輝いているのがわかる。 もちろん構図もピントの合わせ方も違うんだろうけど。
さて、この写真屋さん、結婚式の時のカメラマンだ。 赤ちゃん写真を撮ろうかなーとなって、「またあの人に撮ってもらいたい」と思い、連絡したのだ。 オックスナードに住んでいるので、サンタバーバラでもロスでも、どちらにも出張してくれる。 サンタバーバラでは、前の前の家のインテリア、建築雑誌用の写真も撮ってもらった。
思えば、この人に連絡を取る時は、いつも微妙なニュース付きなのである。 結婚式の後は「母親が病気なので、できるだけ早く写真のリストをください」だったし。 アルバムを作る時は「家が燃えてしまって、リストが無くなってしまったので、もう一冊ください」だったし。 アルバムのサンプルが出来上がった時には「あなたの写真がすばらしかったので、母の遺影に使いました。ありがとう」だったし。 赤ちゃん写真の予約を取った時は「今週末に予定していた撮影なんですけど、赤ちゃんが入院しちゃって。再来週に変えられますか」だった。
そして、今回は「素敵な赤ちゃん写真をありがとう。ところでまたサンタバーバラの家が燃えたんですけど」だ。
一体このクライアントは、どうなっちゃってんだろう、と思われているに違いない。 ちなみに、そんな理由かどうかわからないが、今回電話で連絡したら「あなたの友情に対し、今回の撮影費は無料です。らぶ」と言われた。 ・・・どーも・・・。 いつも、できるだけ陽気にお伝えしているのですが・・・。
禍福はあざなえる縄のごとし。 深い。
保険屋さんが毎週(!)「こんだけ医療費がかかりましたー。こんだけうちの会社は負担しましたー」という手紙を送ってくるのだが。 さて、イサムさんの誕生と、これまでにかかった医療費は、いったいいくらでしょう?
ヒント1。 妊娠中毎月の診察は、出産費用を入れないで、総額だいたい1万ドル。 超音波検査費も含まない。
ヒント2。 一番高額だったのは、帝王切開の費用。 出産費用とは別途請求されている。
ヒント3。 手術中、同室している医者には、全員バラバラに医療費を支払う。 執刀医とアシスタント3名と麻酔医と小児科医。 医者とは別に、病院にも手術代を支払う。
ヒント4。 次に高額だったのは、イサムさんが腎盂腎炎の時の入院費。 CTや血液検査など治療費を含まない、入院費。 宿泊費と言っても良いかもしれない。
正解はーだらだらだらだらだらだらだらだらん!
アバウト7万ドルでしたー。
一部負担でも苦しい。 保険屋もこっすからくなるわな。
こんだけ医療費が高額で、保険加入者が半数切ってるカリフォルニアってどういうことー? 病人は自然治癒を待ってれば良いの? それとも皆、病気の間仕事しないでも医療費が払える程お金持ちなの??
病院も医者も取り過ぎ。 政府関与しなさ過ぎ。
なんかが改正されないまま、この国で老いて行く自信が無いわ。
そんなわけでイサムさん、UCLAに実験されに行ってきた。 実験は二種類。
一つは、イサムさんが白人とアジア人の写真を見せられた時、どちらの顔に、より脳が活発に反応するのか。 お母さんの顔は毎日100%見ているけど、お父さんは一日の20%程度。 でもかなりの頻度で会っているグランパとグランマは白人だしなあ。 今週も、グランパマはサンタモニカのホテルに陣取って、イサムさんを見に来ているし。 さて結果はいかに。
とわくわくしていたのに、この実験は成立しなかった。 イサムさんの視線を追う機械が、イサムさんの目に反応しなかったのだ。 何故ならイサムさんが、実は人間の皮をかぶったエイリアンで、本当の目は鼻の穴の中だから。
ではなく、イサムさんの目が青いから。
機械は黒から茶色の目に反応するように設定されていて、イサムさんを後ろから抱っこしている皇帝の視線にガンガン反応して、肝心のイサムさんの視線は捉えられなかったのだ。 皇帝が目を閉じても、結果は変わらず。 こちらは目が茶色くなってから出直し。
もう一つは、似てるけど、ちょっと違う2種類の図形を見せて、違いがわかるかどうか。 違いがわかれば、違う図形が出てきた時に、脳が活発に反応する筈。 男児の70%は、違いに反応するらしい。 女の子はあんまりわからないとか。
こちらは成功。 イサムさんはちゃんと二種類の図形の違いがわかりました。
でも一緒に見ていた皇帝は、実は全くわからなかった。 図形がすり替わったことすら気がつかなかった。
まあ、お母さん女の子だしね・・・。
もし頭にモニター付けてたら、お母さんの脳は全然動いてないってのがばれてしまうのだろうなあ・・・。
サンディエゴは砂漠気候だというのに。 一年に3日くらいしか雨が降らないというのに。 皇帝が行くと、必ず雨。
4回行って、4回雨。 もう皆、皇帝が来るから屋外イベントは止めよう、という程雨。 1000BCに生まれていたら、巫女さんだったかもしれない。 1000ACに生まれていたら、魔女だったかもしれない。 でも21世紀の皇帝は、ただの主婦。
更にサンディエゴミラクルは続く。 夜は皆でポーカー(プッシュアップ)をやっていたのだが。 ルールもわからないのに、皇帝一人勝ち。 なんだかわからないけど、適当にチップを置くと、ことごとく皇帝の懐に入ってくるのだ。 やっぱりミラクルなのか?
そうしているうちに、夜も更けてきて、友達がベビーシッターをしてくれることになり、ジャバ夫さんと映画を見に行った。 スタートレックと公開がかぶってしまった、「天使と悪魔」。 トムハンクスを見に行ったわけではなく、ユアンマクレガーを見に行った。 ジャバ夫さんが、痩せたらユアンマクレガーなんだ、という言葉を信じて結婚したのに、なかなか真の姿を見せてくれないので、本物のユアンマクレガーを見に行くしか無い。
で、スタートレックに並ぶ人の列をかき分けて、天使と悪魔の劇場に入ると、けっこう空きがちらほら・・・。 適当に後ろの方に腰掛けると、隣の人がじっとこちらを見ている。 まさか、夫が肉襦袢を着たユアンだとばれたのか!? と思ったら、友達の従兄弟だった。 この人とは、前回別の映画館で「21」を見た時にも、偶然隣になったのだ。
ミラクル過ぎる。
なんかサンディエゴに憑き物があるんだろうか。
本日初結婚記念日。 ときめきのサンディエゴレポートは、また後日。 雨が降ったりお金を巻き上げたりジャバ夫さんの新作を見たり、大忙しでした。
イサムさんは下の歯がちろっと見えてきました。
今日はお友達のベビーシャワーなので、一家でサンディエゴに行く。 イサムさん、初のお泊まり。 ミルクとオムツを山ほど持って。 お昼寝用マットレスと、夜用バシネット。 山盛りタオル。 こんなに必要ないんだけど、旅慣れてない感むんむん。
皇帝の荷物はほとんどなし。 歯ブラシをズボンのポケットに突っ込んで、世界中を旅するのさ、俺は。状態。
ところで髪の毛ががっつり抜けてきた。 赤ちゃんが生後三ヶ月くらいになると、ヘアーロスに悩まされるよ、と美容師さんが言っていたがその通り。 ブラシでとかすと、ごっそり抜ける。 シャワーを浴びると、ずるずる抜ける。 オスカル様にしておいて良かった。
ちなみに美容師さんは、一人目の子の時にヘアーロスに悩んだので、二人目ではパンチパーマで出産に挑んだんだそう。
パンチか・・・。
なんで皆やる事が大胆なんだ。
中学高校の家庭科の授業で、やっておいて欲しかったなあ、と思う事。
それは「繕い」。
実際アメリカに裁縫箱を持って来て、一番活躍しているのはボタン付けと穴塞ぎの時。 ジャバ夫さんが雑に服を扱うのか、よくボタンが吹っ飛ぶのだ。 それから、どうやって着たらそうなるのかわからないのだが、頻繁にシャツの脇や袖口が破ける。
こないだは、ジップアップのジャケットを着たまま眠って、布団の内側の布をジッパーにがっちり挟んでしまい、服を切るか布団を切るか、散々悩んで布団を30センチも切る大手術をし、縫合した。
だのに、中高の授業では、洋服作ったり、レースのコースター作ったり。 (それも、親戚のおばちゃんが、あまりの出来に見かねて修正してくれてしまう有様だった) 実際の生活では、まず使わない技術ばかりを教えられたものだ。 (そして皇帝の成績は10段階評価で2だった)
これからカリキュラムに改正が有るのなら、是非プッシュしたい「繕い」の授業。 どうやったら糸が外に出ないで、穴が塞げるのか。 そういう生きた授業をしていただきたい。
ところで、裁縫箱を出すとジャバ夫さんは、 「自分でできるよ〜」 と言うのだが、彼のボタン付けは、たま結びもなく、ただひたすらボタンの穴とまわりをぐるぐる縫い付けるだけ。 確かにボタンは、次の洗濯までは付いているが、付いているだけで、ホールにも入らず使えないのだ。 糸がもったいない。
皇帝

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