皇帝の日記
目次もくもく|ぶらり過去旅|ぶらり未来旅
雨がガンガン降ってる。
さて、離乳食。 なんせ、はじめの頃は歯がないし噛まないから、なんでもかんでもぐっちゃぐちゃに柔らかく茹でて潰さなければならなかった。 その上、ちょっとでも渋みや苦みがあると食べない。
とにかく煮て煮て煮まくって、栄養なんか全部熱で無くなっただろう、という感じ。 更にこしてこしてこしまくって、歯ごたえもなんもない状態。 手間と時間がかかって仕方が無いので、ベビーフードをガンガン投入していた。 アメリカの肉や野菜の安全性とか考えると、ベビーフードの方がむしろ清潔で良いかも、という気もしてたし。
ところが最近、ちょっとやそっとの固形物ならいけるくちになり、大根やほうれん草の苦みもわかる大人の男に成長したので、お母さんの手作り食に変更。 心を入れ替え、割とまともに料理している。
とはいえ、大変な事は続かないだろうから、今は鍋メソッド(勝手に命名)を活用している。 鍋に昆布を入れて煮て、そのお湯に次々に小さく切った野菜を放り込んでは、網オタマで引き上げて、器に入れておくのである。 豆腐、ほうれん草、人参、卵、サツマイモ〜とどんどん煮て置いて行くと、最初の方に煮た物が、ちょうどいい温度に冷めている。 基本、全て昆布味だが、それは致し方ない。 最後に米を入れて煮ると、野菜出汁の利いたお粥になる。
キャベツとか、いくら煮てもなかなか食べてくれない物は、納豆に混ぜてしまう。 すると、ぬるぬるになってつるっと口に入るので、わりと難無く食べてくれる。
まあ母になったのですから、たまには頑張ってしまいましょう。
ところで、こないだ元ルームメイトが我が家でだらだらしていたのだが。 ふとイサムさんの顔を見つめ「スポック博士みたい」と言うので、「じゃあかっこ良く髪を切ってあげてよー。失敗しても良いからさー」と言ったら、本当に格好良く、レイヤーの沢山入った今っぽい髪型にしてくれた。
ちょっと頭頂部の立ち上がった毛が短く落ち着いてしまったのは残念だが、また一歩アイドルに近づいたイサムさんであった。
南カリフォルニアでは大変珍しく、まとまった雨らしい雨が一週間に渡り降る予定。 昨日も今日も雨。 マリーナデルレイは海側だし、ロス自体が雨に弱い都市なので、道路のあちこちが水に埋まっている状態。
ジャバ夫さんが「このチャンスに、イサムに雨を教えなきゃ!」と言うので、雨なのに夫婦そろって外に出て、 「これが雨だよー」 「お空がおかしいねー」 「頭がどんどん濡れちゃうねー」 「雲が融けてるんだよー」 とイサムさんを濡らしていた。
オクラホマの子供が、「丘」や「山」という単語がわからないように、イサムさんも「雨」のわからない子になってしまうかもしれない。
さて、昨日の運転の試験。
お爺ちゃん先生の手作りテストだったのだが。 なんと、試験問題が全部旧漢字。 所々中国の簡体字も混じっており、これ、アメリカ育ちの二世の人とかは読めないんじゃ・・・と心配させられる問題だった。 いや、一世でも「通過」の「過」が簡体字とか、読めないかもしれない。(シンニョウに寸) 「しかし」を「然し」って格好付けないで書く人、私初めて。
「慢速」は「減速」って書きたかったんだろうな、と思う。 それは中国語。
外来語のカタカナ表記は、先生のフィーリングで構成されていて 「ミラー」は「ミーラー」 「スピード」は「スビート」 「ポンド」が「ボント」 だった。
あーアクセント置くところと、破裂音、濁音難しいですよね・・・。 有気音と無気音が日本人にわからないようにね・・・。
「カリフォルニア」「フィート」などの、拗音は難し過ぎたらしく、諦めてそこだけアルファベットで表記されていた。
これらの混沌とした問題文が、もちろんワープロではなく手書き。 しかも、お爺ちゃん達筆。 その上コピーが斜めで、文の端が切れている。
問題自体は簡単なのに、こんなに読み下しが困難な物だとは。
先生の複雑な言語習得背景と、その影響力、結果について、貴重な研究材料になり得る筆記だな、と思った。 どっかの研究室に寄付したい。
2010年01月18日(月) |
ドライビングスクール |
そんなわけで、信号無視の罪で行って来ました、ドライビングスクール。 ここで八時間の講習に耐えた後、筆記試験を受けて合格すれば、晴れて無罪放免。
ジャバ夫さんが、日本語で講習を受けられるところを探してくれたのだが、それがなんとパサディナ。 遠いよお。 いや、自分が悪いんだ。 めそめそ。 朝早く出かける。
すると、なんともはや、山が近い。 近いよー。 何にも無いよー。 やたらに歯医者があるよー。 学校の周辺だけで、1ブロックに5件も歯医者があるよー。
まあ、色々面白い事はあったが、最も面白かったのは、講師のおじいちゃん。 なんと90歳近い。 とても元気で、ヨボヨボではないのだが、下の歯が全部無いので何を言っているのかつまびらかではない。 歯医者で! 近所の歯医者で下の歯植えてもらって!
というのは大きなお世話だが、おじいちゃん、実は台湾人である。 日本植民地時代に生まれ、大戦中は日本の空軍として優秀な成績を修め、戦後は中国の弾圧を逃れてアメリカへ。 そんな経歴なので日本語が大変上手なのだが、使う単語が教育勅語時代なのだ。
「あにはからんや、ここで二台の車がであったのである」とか 「しからば裁判所へ行くしかないので」とか 「夜中に黒い着物を着た歩行者が通れば」など。 着物て。
また、戦中の人らしく「バカヤロー」を連発するのだが、問題を出す時に「こちらからバカヤローの白い車が左に曲がって来て、黄色い車にぶつかりました。悪いのはどっち?」という問題の出し方で、どちらの車の過失なのか、バレバレなのである。
歴史の話が好きなのか、講習の大半が中国の歴史。 午前中は現代から元までさかのぼり、午後はついに秦の始皇帝にまで話が及んだ。 更に、健康の秘訣まで。
健康の秘訣は、口腔衛生だそうな。 歯槽膿漏が人類の滅ぶ原因になるだろう、と予測された。
イサムさんを連れて日本食スーパーへ行き、ショッピングカートの幼児を座らせる部分に入れてあげたら、これ以上無いってくらいに喜んでいた。 興奮のあまり通り過ぎる全ての人々に、両腕をぶん回しケタケタ笑い、幸福をアピールするイサムさん。 突然共感を求められた人々は、戸惑いながら「あら、いいわねー」と言ってくれる。
今まで衛生面が心配で乗せた事が無かったが、これが使ってみたら、超便利。
ベビーカー押しながら買い物すると、せいぜいカゴ一杯、片手で持てる分しか買い物できない。 しかし、ショッピングカートならば、無制限に商品を詰め込めるのだ。 (帰宅後は、駐車場から部屋まで何往復かすることになる。)
もう、ショッピングカートを家に持って帰りたいとまで思った。 イサムさんも荷物も、何もかも詰め込んで歩きたい。
「将来何になりたくないですか?」と聞かれ、 「病院で使われる担架にだけはなりたくないですね」と答える夢を見た。 それは将来ではなくて、来世だろう。
さて、何も用事がなくても、一日一度くらいは外出させた方が良かろうよ、ということでイサムさんを担いで、近所の公園にぶらりと行って来た。 ら、背中が途中で痛くなりはじめ、帰るに帰れない程酷くなってしまった。 ああああああ。
公園から整体に電話したら、「今すぐなら昼休みだから診察してあげる」と言われ、車でがーっと行った。 そしたら、いつも一分の隙もなくメイクをしている受付のお姉さんの目が、半分しか完成してなかった。 ・・・すいません。 変な時間に来ちゃって・・・。
背中は、バッキバキに押され、腰までバキバキにされて、なんとかまっすぐ歩けるようになった。 最近調子が良かったから、油断して通っていなかったために、コリがたまりにたまって、腰にまで来てしまったんだとか。 調子が良くても、時々来たら良いよ、とのこと。
いつも「重いもの持たないでね」と送り出されるのだが、重いもの持たないのは無理だな〜。 イサムさん、今20ポンド。
イサムさん、ミルク飲んだ後必ずお母さんのシャツで口を拭くの、やめてください。 あと、隙あらばお母さんを噛んで、流血さすのをやめてください。
さて、演劇の宿題。 皇帝が来週演じなければならない役の台本に、「恋人に怒りながら、シャツを脱ぎすてる」というシーンがある。
たぶん、とてもセクシーなシーンなのだと思うのだが。
皇帝の頭の中は、北斗の拳。
ユリアー!!
新年発見した、コント。 http://www.youtube.com/watch?v=FFy0FBjIt9Q&feature=related 好き。
イサムさんを背負って、たまりにたまった割引クーポン券を持って近所のスーパーに行ったら、28ドルも値引きになった。 このような時に、円に換算すると目減りしてしまうのが、とても残念な昨今。
さて、本日の授業は、アニメーションのタイミング、というようなのだった。 アニメ動画で、動きがスムーズに見えるような時間割を作る技術、という、説明するとわけわからん話なのだが。 ようするに、上手に動画を作っちゃうぞ、という授業。
近頃動画を作る人は、もっぱらコンピューターを使っているので、例えば、「立ち上がる」動作を動画で作りたければ、立ってる絵と座ってる絵を描けば、間のところはコンピューターが作ってくれちゃうんだそうな。
でも、そうじゃないだろ? もっと、血が通った、重力を感じる絵が欲しいだろ? 紙芝居じゃ、無いんだぜ?
というようなわけで、人間にしかできない技術を学ぶのだ。 ふーん・・・。 産業革命の憂き目のごとく、技術が無いとどんどん首を切られる、世知辛い世の中。 アニメーターにも、プラスの技が求められるのですね。 ふんふん。
言うまでもなく、またしても生徒は、すでに基本的に動画が作れる人ばかり。 アニメーションを動かすソフトすら使えないのは、皇帝だけ。 いいんだ。 もう慣れたもん。 落ちこぼれだもん。
一人居残って、先生にカメラの使い方を教わったりしました。 なんで画像が勝手に反転するんだよー。 わーん。
ほんと、これだけ先生使って只だなんて、クーポンよりお得。
今日から学校新学期。
アニメやCGアニメを作る人たちは、演技を学ばなければならないんだそうな。 キャラクターの動きや表情を作るから。 ふーん。
というわけで、学校に演劇の授業がある。 ジャバ夫さんのスケジュールの都合上、今学期はこの演劇クラスをとる事に。 月曜日の午後。
あと、火曜日の午前中にも一個とってるのだが、これはどんなクラスなのか、説明を聞いても良くわからないので、明日判明したら書く。
演劇クラス初日は、またしても英語力が足りてないなあ、ということで終了。 しかし心優しいクラスメート達は、「わからない事があったら、遠慮なく聞いてね」と、メールアドレスを交換してくれた。 明らかに皇帝が一人だけ英語できてないからだ。
だのに、宿題はアルパチーノの映画から一部台本をおぼえて、来週皆の前で披露という、荒行。 辛い。 しくしく。 でも頑張ろう。 必要に迫られなきゃ勉強しないし。 必要に迫られる事なんて、今後ともないだろうから。
さて、学校に行ったら、ジャバ夫さんの同僚のイスラエル人にばったり出会った。 ので、イサムさんの日本デビュー写真を見せた。
ちょうど、イサムさんが福のお尻に触り、福が逃げている写真を見せた。 (イサムさん写真で、更新済み) 「まさか!猫のしっぽ切ったの!?」と絶叫された。
違うよ! 福さんのしっぽは、はじめから無いんだよ!! つか、日本の猫のしっぽは、かなりの確率で短いんだよ!!
東の果ての国で、猫のしっぽを切り取る異教がある。 と思われている。
渡米してからと言うもの、色んな方々にお茶をいただくので、あきらかに自分が買うお茶よりランクが上の物を飲んでいます。 ありがたいことです。 しかし、良いお茶を新鮮なうちに飲んじゃおう、と思って先に開けてしまう為、自分の買った安いお茶が古くなって、ますますいけてない味になっている事だろう。 嗜好品なのに、嗜好していない味に。
さて、ゲッティセンターに行って来た。 展示品を観る目的ではなくて、芝生の上でピクニックをしよう、というわけで。
というのも、先日サンタモニカの銀行に行った帰りに、芝生のある公園に寄ったのだが。 芝生でイサムさんをハイハイさせたい。 思う存分遊ばせたい。 と思ったのだが、お土地柄か、公園の芝生の中にタバコの吸い殻やら、ガラスの破片やら、注射器の針やらが落ちていて、とても赤ちゃんを放す気になれず。
ゲッティセンターは、常時清掃人がうろうろしているので、ディズニーランドよりきれい。 喫煙マナーにも厳しい。 週末は多くの親子連れがピクニックに来るのだ。
しかし、朝突然「行こう!」と決めたもんだから、なんの準備もしておらず。 ミルクやらオムツやら、なんとなく必要な物をぎゅうぎゅう紙袋に詰め込んで出発。 途中日本食スーパーで、おにぎりとウーロン茶を買って、ビニール袋にぶら下げて。
イサムさんの服も「芝生の汁が、シミになるから」と、すでに最もミルクが激しくシミになっている汚いパジャマ。 ジャバ夫さんは、昨晩遅くまで会社のパーティーでインタビュアーとして働いていたので、そのまま寝ちゃった、ヨレヨレの埃だらけの会社パーカー。 皇帝は、標高の高いところに行くので、スキーで着ていた、ゴアテック。
もっさ〜。
なにやら・・・。 家のない一家みたいだ・・・。
更に小脇に抱えているのは、皇帝が赤ちゃんの時に使っていた毛布。 今はぼろぼろなので、レジャーシートとして活躍してます。 はい。
ジャバ夫さんと 「やばいね、これは・・・」 「うん、我々すごい不幸そうだね」 「せめて、幸福そうにしよう」 と、ニヤニヤしながらゲッティ行きのモノレールに乗り込む。
他の家族の赤ちゃん達は、皆よそ行きのちょっと良い服を着ている。 高貴なイサム王子が、同情するなら金をくれの人に見える。
もっさもっさと出かけてみれば、なーんと、思ったよりもポカポカ暖かい、良い陽気。 ゴアテックでは暑い。 上着を脱いだ皇帝は、タンクトップ。 その二の腕には、イサムさんに噛まれた、見事な青タンが。
家のない不孝な家族な上に、DVの疑いまで。
こそこそ。 ちょっと庭の隅っこで、ぼろい毛布を敷いて、おにぎりを控えめに食べながら、イサムさんを放牧。
するとイサムさん、はりきっちゃって、猛然と芝生の上をハイハイダッシュ! 同じくピクニックをしている家族のところに行っては、「かわいいねー」と言われて、大喜びで駆け回っていく。
うん、最大の目的は達した。 浮浪者夫婦は、満足したのであった。 もっさ〜。
サロン・ド・母ちゃん。 イサムさんの前髪が、目の中に入りそうになっていたので、ジョキジョキと心赴くままに切り揃えていたら、狙った以上にまっすぐになってしまった。 完全に直線でもないから、スポック博士みたいだ。
さて、口座を作った銀行に行かなければならない用事があり、前の家の近所まで、えっちらおっちら車を走らせて来た。
前日、やだなー。銀行混むなー。時間かかるなー。 と、うじうじ言っていたら、ジャバ夫さんが「かわいい服を着ていけ」という意味不明なアドバイスをくれたので、シフォンワンピにちょうちん袖ブラウスを合わせ、とどめにムートンのブーツでガーリーに出かけたレディ。 甘さの引き算は、ごついカートに乗せた赤子で。
銀行は、予想通りの長い列。 しかし、最後尾に並んだら、奥から若い兄ちゃん行員が現れ、「May I help you?」と言って来た。 なにー!? かわいい服って、こう言う事〜?
えーと、国際ネットバンキングで、振り込む時に必要な情報をください。 とたどたどしい英語で言ったら、紙に必要な番号とかを、全部書き出して持たせてくれた。 「僕はジョージ。木曜日の午後は空いてるよ」と、必要のない情報までくれた。 ご丁寧に、ジョージの携帯番号までくれた。
・・・どーも・・・。 そんな軟派なことで良いのか、行員。 経済的にいち早く再建したからって、余裕ね、バンカメ。
それにしても、実は皇帝、子持ちになってからやたらアメリカ男児にちやほやされるのだよ。 映画館の切符切りやら、スーパーのおっちゃんやらに電話番号を聞かれ。 原因は、究明するまでもなく。
太ったからだよ。
痩せた女は御しがたく、ぽっちゃり女は引っ掛けやすい。 とでも思っているのか、本当にアメリカ人がデブ好きなのか。
子持ちの女に声をかける神経はわからんが、店で親切にしてもらえるなら良しだな。 でも木曜日の午後は空いてねえ。
皇帝

|