paranoia kiss
    

ある年の七夕に、大勢で宴会をした。
その中に彼女と彼はいた。

その頃のあたしは、汚いものが一杯ついてて、
打算的で、物分りのいい女を演じていた。

彼女は純粋で、あたしがずっと昔に
もう捨ててきたものをたくさん持っていた。
色々相談に乗った。
ただ、彼女が羨ましかった。
もう、あたしが持つことのできないカードのようなものを
これからたくさん切ることができるのだ。

物分りのいい女を演じるか、
自分の気持ちに素直になるのか。
51%対49%で、心の中で戦っていた。

彼女の泪を見て、思わず、抱きしめてしまった。
やっと会えたのに。
心から応援しなくちゃいけないのに。

アタシノブンマデ シアワセニナッテネ。

もう、その日は飲むことに決めた。
宴会場所があたしの大好きな焼き鳥屋だったのは、
泣くに泣けない事実であり。

最近になって一度だけ、彼女を見かけた。
颯爽と歩く彼女はかなり格好良くて。
声をかけるのも躊躇った。

2006年10月30日(月)



スポーツカーのバケットシートに体をうずめ、
高速を飛ばして、小一時間。
海の見える防波堤まで行くのが好きだった。

高速は大概空いていて、
あたしより背の小さい彼のハンドル操作に
命を預ける。

防波堤では缶コーヒーとタバコ。
別に何をするわけでもなく、
寝転がったり、うだうだと話すのが常。

オンナガ スウ タバコジャナイ。

ただフィルターの部分がお気に入りだっただけ。

ジッポのレディースライターを貰った。
イニシャルが入ってた。
なのに、あたしの手にはあまりにも小さすぎて。

モウイッカイ サガシテクル。

後日、普通サイズに交換してもらった。
今はもうどこにあるのかもわからない。

周りの人が振り返るほど身長差があった。
待ち合わせのたびに、探すのが大変だった。
いつも見つけてもらってた。
そんなことも、もうない。

2006年10月28日(土)



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