paranoia kiss
    

何が正しくて間違ってるかとか、
痛いとか辛いとか、
そんなことを感じなくなってしまっている。
ただ、思い出しても悲しくならない。
それが許すということ?

---
泥棒猫って言われると思った。と彼女が言った。
もしかしたら、泥棒猫はあたしの方かもしれない。
君がカラカラと氷の音をたてながら、水を飲む。
その音を聞いて、ウォッカトニックが飲みたい。と
あたしは言った。

あたしの言うことを肯定も否定もせず、
ソコマデウタガイマスカ?と君は言った。
だから言うことも疑うことも
考えることも止める。

たいせつなものたちが目の前に現れたときの
君の泪がほんものだったと思いたい。

---
君のお母さんは電話をしてくるなり、
怒鳴りつけ、激昂し、言いたいことを言うだけ言って、
ぷつっ。と電話を切ってしまう。
昔のあたしみたいに。

たくさんの人を傷つけたんだな。と
今更になって気づく。
ほんとに、今更でどうにもならないけど。

カリカリに焼いたら、おいしそう。と君は言う。
それぐらい、チキンなあたしの手足。
ぶつぶつぶつぶつ。
不平不満は体に出るのか。
だから、此処に書き付ける。

---
あたしは身元保証人を記された紙切れを前に
本当は迷っていた。
だけど、あの人が言うのだから。と言い聞かせ、
ハンコを押した。
2人で返していけばいい。と。

あの人がギャンブルに費やした
50万という金額はあたしの手元に残った。

その気になれば、すぐにでも返済できたけど、
ファイナンス会社のカードででも
繋がっていたかったあたしは、
飲むことにお金を費やし、
ぐだぐだと返済していた。

あの人に請求することもせず。
きっと結婚準備に忙しいだろうし。

あの人を偶然、海の見える街でみかけたとき、
車が変わっているのに気づいた。
車のローンもあるし。
何も言わなければ、気づかずに
あの場所で世界一幸せな日を迎えられる。

また、請求することを躊躇った。
高いお祝いだったと思う。

ぐだぐだしていても、
金額はきっちりと減っていった。
それだけの時が流れたんだろう。

カードだけが目の前にあった。
さくっとはさみで真っ二つ。
忘れられると思ったけれど、
そんなに簡単なことじゃなかった。

いつ思い出しても楽しいことは思い出せない。


2006年11月18日(土)



結局、返品できなかった。
何か使用方法を考えてみる。
あっさりとゴミ箱につっこむ。

---
今頃、君は彼女に何を話しているんだろう。

---
君がぽつぽつと彼女のことを話す。
あたしは、すっかり役回りが変わってしまって、
聞き役になってしまってる。

そういえば、君と知り合った頃も
カウンターだったりソファーだったりで
いろんな話を聞いたっけ。
結局は、そういう風に繋がっているのかも知れない。

彼女はあたしがなりたかったような強い人で、
なぜだかあたしのほうが、無条件降伏したようだった。
お互いがこれで最後の人だと
左手の薬指に誓ったあの日。
確かに、お互いに最後なのかもしれない。
彼女とはあたしより昔に始まっていたのだから。

積み上げたものが壊れたと思った。
壊れたらまた積み上げたらいい。
時間はいくらでもある。

あたしには、もうあの人といたとき以上に
辛いことは起きないのだから。
君が言ったように、あたしには
もう目の前に壁はない。
花壇の柵のようなものなのだ。

だから、ぽーんと飛び越えられる。

2006年11月17日(金)



My追加
Skin by yukie