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| 2004年06月17日(木) ■ |
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| 「心では重すぎる」文春文庫 大沢在昌 |
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「心では重すぎる上」文春文庫 大沢在昌 大沢在昌が探偵を主人公にした作品を描くのだから、チャンドラーを向こうに張ってどのような文章を書くのか期待していた。そう、私は佐久間公シリーズは初めて読んだわけだ。彼にもいろいろ紆余曲折があったらしいが、今は立派な中年である。しかしこれほど議論する探偵も珍しい。マーロウ探偵みたいに粋なセリフを吐くわけでもない。ひたすら中年が今の若者の気持ちを知ろうとする。私などはまさしく佐久間公と同年代の中年ではあるが、「迷惑掛けるのは友達じゃない」という若者の友達観に怒ったりはしない。佐久間は命を掛けて怒ろうとしている。下巻が見ものである。
「心では重すぎる下」文春文庫 大沢在昌 クスリ、渋谷、マンガ家の失踪、自己啓発セミナー、暴力団、高校生、上巻ではばらばらだったこれらの項目が一つの形になっていく下巻である。最終も最終になって見事に収まっていく構成はさすがである。 「はじめてやさしいことをいったね」最終盤に至り錦織が佐久間公にこう呟く。この言葉はいったいなにを意味しているのだろうか。それは読んでからのお楽しみ。
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| 2004年06月16日(水) ■ |
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| 「藤沢周平残日録」文春新書 阿部達二 |
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「藤沢周平残日録」文春新書 阿部達二 この本は藤沢周平の4冊のエッセイ集から人物、場所、学校、食べ物、本、映画など約150項目を抽出したもの。加えて長編32編と短編3編のあらすじを記している。 エッセイ集を全て熟読している人にはわざわざ買わなくていいような本である。ただ全然発見がなかったかというとウソになる。例えば、藤沢の母「小菅たきゑ」の項では四つのエッセイ集全てからエピソードが抽出され、彼女の全体像がくっきり浮かび上がる短文になっている。あるいは長編「風の果て」の主人公桑山又佐衛門のモデルが庄内藩改革派の「菅実秀」という事が分かるなど、今までの藤沢文学研究の到達点もいくらか盛り込まれている。しかしそれはあくまでもエピソードの羅列に過ぎない。幾つかの大事な事実が外されており、この辞典が決して辞典としては決定版ではないことを示している。(04.01)
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| 2004年06月15日(火) ■ |
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| 「東京遺産」岩波新書 森まゆみ |
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「東京遺産」岩波新書 森まゆみ 東京駅が歴史的建造物だと知ったのはつい最近の事だ。最初の東京駅の印象は悪かった。悪夢のような人の波波波。加えて駅構内が迷路のようで、山手線に乗り換えるのにもう少しで迷いそうになった。悪い印象のまま数十年間乗り降りしたあとふと東京駅玄関から降りた。そうすると目の前に広がる巨大な赤レンガの建物。「こりゃ、やっぱり首都の駅だわ。歴史的な建造物だわ」と変に納得した覚えがある。
この駅の超高層ビル構想を断念させた運動があったとはこの本を読んで初めて知った。いろんな文化人が参加して「おしゃれな運動」になったらしい。このような東京遺産保存運動の成功例(上野奏楽堂、岩崎邸、上野不忍池、安田邸)、失敗例(丸ビル、谷中五重塔、富士見坂、同潤会アパート等)の経験を語りながら、東京という「地域」から草の根「遺産保存運動」のあり方を問う書になっている。私の住んでいる倉敷でも参考にすべき点が多々あると感じた。(04.1)
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| 2004年06月14日(月) ■ |
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| 「M」文春文庫 馳星周 |
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「M」文春文庫 馳星周 男の手による情念の小説である。凄いものを読んだという気がしてならない。これは男にしか書けない。ぜひ女性にも読んでもらいたい。 小池真理子や山本文緒が「恋の情念」を描くのだとしたら、馳は「欲望の情念」を描いている。どちらが上等でどちらが下等だという議論は不毛である。感情が揺れ動き、制御できなくなり、奈落に落ちていく心の状態を余すことなく描く。確かに描かれている事は少し「特殊な事例」ではある。しかし一方ではどこか「思い当たる」所もある物語。それは小説を読むときの醍醐味である。(04.02)
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| 2004年06月13日(日) ■ |
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| 「東京ナイトメア」講談社文庫 田中芳樹 |
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「東京ナイトメア」講談社文庫 田中芳樹 薬師寺涼子警視が更にパワーアップして戻ってきた。部下(従者?)の泉田警部補も心なしか逞しくなっている。まあ「ドラキュラもよけてとおる」お涼とずっと付きあっていると、逞しくなろうというものだが、それだけではない。彼は元々相当優秀であったのだという事が今回の作品では明かになる。 今回私はずいぶん楽しめた。その最大の要因は私の精神状態にある。ちょっと精神的に参っているときにこういう本を読むと、彼女がハイヒールで足蹴にする男たちの描写がなぜか心地いいのである。そしてもう一つ魅力を発見した。泉田クンの一人言がほとんど「ハードボイルド」タッチなのである。めちゃくちゃな彼女のキャラクターを冷静に観る目、そして彼女を取り囲む警察機構の真実をつき皮肉る数々の言葉たち。いろんな名言がちりばめられていてそれはそれでなかなか楽しかった。 またちょっと疲れたとき付き合って貰いましょう。幸い、続編もいくつか出ているらしい事だし。(04.2)
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| 2004年06月12日(土) ■ |
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| 「OKAGE」 新潮文庫 梶尾真治 |
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「OKAGE」 新潮文庫 梶尾真治 一気に読める本である、ではない。読まされる本である。 「ハーメルンの笛吹き」ならぬある日突然、全世界規模で子供たちが移動を始める。世界的規模の話なのだが、舞台はあくまで熊本県内に限定されている。だから話としては滑稽無等なのだが、身近に感じられて話は結構リアルである。作品冒頭に謎が提示され、その中身を知るために最後まで一気に読ませられるのである。 ただ、最終的な謎はあまりにも不思議SF。「旧人類」の私には「納得」は難しかった。「新人類」たる子供たちに祝福あれ。(01.1)
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| 2004年06月11日(金) ■ |
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| 「古事記の読み方」岩波新書 坂本勝 |
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「古事記の読み方」岩波新書 坂本勝 「古事記」をめぐる雑学である。特に言葉の持つ意味、あるいは風景、力に及んだ叙述に魅力がある。古事記は日本書紀のような完全漢文で、官制の立場に完全に立ったような文章ではなく、変体漢文体で綴られ、生活の言葉がここかしこに溢れる魅力ある文学なのだ。 「天」(あめ)と「空」(そら)を古事記はどのように使い分けていたのか。 「原」は現代におけるそれとどう違うのか。 「黄泉」と「常世」の境界はどこにあるのか。 創世神話の中の自然観察、そして性の描写、等々。 筆者の学者の眼と詩人の眼を併せ持った文章に出逢い、私も遠い古代の国々に遊んだような心地もちをした。(01.1読了)
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| 2004年06月10日(木) ■ |
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| 「ワカタケル大王」文春文庫 黒岩重吾 |
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「ワカタケル大王」(上)文春文庫 黒岩重吾 時は西暦460年、朝鮮半島の百済からこの物語は始まる。日本で初めて中央集権国家らしきものをつくった倭王武(雄略天皇)の王子時代の物語なのだが、物語を倭国だけに限定していないところがこの時代の雰囲気をよくとらえていて素晴らしいと思う。一方で百済王の弟が一時期飛鳥地方に住んでいたと描かれる。彼の子飼いの部下ムサの青の描写は生き生きとしている。 古代の人たちは私たちの想像よりずっと国際的であり、行動的であり、知略に優れていた。そういうことが実感できる物語としてこの作品はうってつけ。この時代をいきいきと描く事の出来る人は黒岩重吾氏しかいなかった。つくづく氏の死が惜しまれる。
「ワカタケル大王下」文春文庫 黒岩重吾 五世紀は大和朝廷の基盤が出来た時期である。それまではまだ地方の「国」との連合国だった傾向が強い。首長の強い個性と武力・戦略、そして国際感覚。それらを兼ね備えた大王として「ワカタケル」が登場する。当時の国際情勢、王子同士の覇権争い、そして遠景として描かれる当時の人々の暮らし。五世紀後半の倭国が生き生きと描かれていて、一気に読ませた。 ただ、ワカタケル王子が即位してからの話が尻すぼみなのがなんとも残念である。せっかく百済王の弟を重要人物として登場させているのたがら、弟の帰還、百済の公州への遷都(475)、ワカタケル大王の宋への上表文(476)への件をもっと描いて欲しかった。
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| 2004年06月08日(火) ■ |
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| 「本と私」岩波新書 鶴見俊輔編 |
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「本と私」岩波新書 鶴見俊輔編 本好きの私が本好きの人たちの文章を読む。また楽しからずや。多くの興味深い話題があったのだが、とり合えず2編のみ選んで感想を付す。
「戦火のなかの1冊」(中嶋多喜子)。忘れられない本というものはある。戦時化、敵の国の本という事でこっそり母子で読んだ『岩窟王』。「どうせ死ぬのだから。どうせ死ぬのだから」と呟きながら母子で逃げ惑い、戦火をくぐりぬけ、九死に一生を得たあと瓦礫の中に見つけた身代わりになったかのように半分に胴だけ残ったこの本。おばあちゃんの話として、親子3代、そして更にその子へと、語り継がれていく伝説。時代は変わるけど、古典の中身は変わらない。人生と時代と古典について考えさせる一文章であった。
「社会的記憶装置としての図書館」(岡林秀明)。社会には貴重な経験をつんでるけれどもなかなかそれを「本」にするまでは出来ない人たちが多数いる。「商業出版」でもない。「自費出版」でもない。第三の道を実現する手段として図書館に次ぎの機能を持たせてはどうかと提案する。�)椶鼎�りの教育。�∨椶鼎�りのコンサルティング。�J垢�書きボランティア・スタッフの育成。�な垢�書きの実施。私は素晴らしい提案だと思う。高齢化社会のこれから、実現できるし、必要とされる「道」ではないだろうか。日本もそろそろ「経済大国」ではなく「文化大国」を目指してもいいのではないだろうか。(01.1読了)
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| 2004年06月07日(月) ■ |
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| 「指輪物語王の帰還下」評論社文庫 J.R.トールキン |
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「指輪物語王の帰還下」評論社文庫 J.R.トールキン 指輪戦争が終った。それで大団円かと思いきや、この本はまだ半分も終っていない。ホビット庄から始まったこの物語はホビット庄で終る。そしてそれは決して単なる付けたしではなかった。 物語を貫く大きな事件が終る。その事件が終った直後から真の主題が現れる。映画では省略されている「ホビット庄の掃蕩」がなければ、この物語は真には終らなかった。いやはや見事な終り方であった。私はこの物語の主題は著者がどう言おうとやはり「戦争と平和」だと思う。 「王の帰還」の「王」はほとんどの人はアラゴルンと思っているのだろう。しかし私は違うと思う。(01.1読了)
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