「社内に隠し事が増えた」。某社のK社長が、他社に勤務していた27歳のとき創業者であり社長である父親に連れ戻された理由だ。社長は会社の成長と共に自分の目が現場まで届かなくなったことに危機感を持ったのだ。小さな会社が多階層化することは機動力の低下を意味する。この危機意識、今でも同社の経営基本方針のひとつである「ミスは咎めない。ただし報告しないことは咎める」に語られている。
「仕事は誰でもできる。仕事でなくて経営を勉強しろ」。某社のK社長は、27歳で父親の経営する会社の副社長に就いたが、その理由がこれ。その彼が経営の勉強として彼が力を入れたのは「人とお金」を見ることだった。この姿勢は以来20年間変わらない。その彼の経営の極意は、ヤナセの社長の言葉「経営は人を通してコトを成すこと」「自分よりできる人を使ってやること」。
20%から50%へ。約15年前、自己資本比率を50%以上にするとビジョンに描いた会社が目標を達成した。当時副社長だった二世社長はその秘訣を「50%越えは期日を決めないとできなかった。10%UPなら手招きだけでできる。30%UPは経営のやり方を抜本的に変え、それを積み重ねた歴史があってこそできる」と振り返った。当時、私は50%越えなんて無理だと思っていた。そのことを素直に詫びると、「フラッグをどこに立てるか」。CNNの創業者テッド・ターナーは「生きている間に実現できるゴールは設定するな」といったそうだが、旗を立てるからこそスタートできるという。夢は本当に適うものなのだ。
昨日のT社長は、製材業に行き詰まりを感じたとき、友人から世の中には「作る会社」と「売る会社」の二種類があることを教えられた。そして「作る会社」のビジネスと「売る会社」のビジネスのどちらをやりたかを真剣に考えた。そして「作る会社」はしたくないと考えた。単価を値切られる「作る会社」より単価を自由に高くでき、工夫次第でライバルを出し抜ける「売る会社」の方が魅力的に見えたのだ。そして、製材業を捨てる覚悟をした。機械で稼ぐ時代は終わった、と自分に言い聞かせ、工務店へと転進した。
先代の製材業を引き継ぎ、自分の代で工務店に転進し、会社を急成長させているT社長。彼は駆け出しの頃に叔父から習った言葉「半人前だから半人前を貫け」を懐かしく思い出すという。わからないことがあれば「半人前だからわかりません。これどうやったらいいのですか?」と人に聴く。するといろんなことを丁寧に教えてもらえたという。それを聴きながら半人前とは何と謙虚な言葉で素晴らしい言葉なのかと思った。彼を鍛えた叔父のように、多くの二世に伝えていきたいと思った。
新たな事業を創造する後継者にとって最も重要なことは「ミッションを立て、稼げるビジネス」にすることだ。今の時代、単独で事業を立ち上げることは難しい。よってどんなパートナーを得るかが重要になるが、付加価値の高いパートナーを得るには「ミッション」が必要。ミッションに共鳴しあうから、数ある同業者の中からその企業と出会い、話し合い、組むことができる。今の創業にはミッションが不可欠なのだ。
後継者は「会社を引き継ぐ」という感覚で本当にいいのか?ある経営者の危機感だ。その経営者が属する業界は厳しく「当社も10年持たないかもしれない」という。そんな会社を継いでもらえる会社にするには、少なくとも本業以外の事業のウエイトを20%にしておく必要がある。それも短期間に実現しなければならない。それには、「継ぐ」ではなく、「新しい会社に創り変える」感覚が必要。今の二世には時間がない中で創業する創業者精神が必要なのだ。
二世経営者のF社長は後継者の育成のため、現在修行中の子息に「小さい会社を作って任せてみたい。失敗してもいいから」と語る。創業には自分の影響力が試される独特の面白さがあるし、創業特有の精神=世の中の役に立っていきたいと願う強い気持ちもある。一方で「先行投資を必要とするものはやらない」「在庫は持たない」など、自社の身の丈に合ったビジネス感覚も養われる。失敗してもそこから学ぶことは多い。
二世経営者の方が共通で語ることのひとつに先代との力関係がある。二世はよく先代と衝突するが、最も多いのは「勝手に変えていくのが気に入らん」。二世にしてみてみれば認めてもらっているという安心感ではじめたことだが、相談がないのが許せないのだ。そこで二世は一世一代の覚悟をする。ある人は「認めてくれなければ辞める!」と啖呵を切り、ある人は「自分は同じようにはなれない。自分は自分」と割り切る。それ以降、力関係が逆転する。継ぐ人の宿命とも言うべき、守破離の「離」の瞬間が必ずある。
社風を変えるにはトップの態度が変わらねば…そう考えた二世経営者のF社長は社員を巻き込んでビジョンを策定した。それは「当業界で地域貢献度No.1になる」というもの。そして、行動規範を制定し、それまで経営者が勝手に決めていた給与を制度化する人事制度をも導入した。模範にしたのは経営サイズが同じ経営品質賞受賞企業のネッツトヨタ南国の運営方法。社員を研修にいかせて学ばせた。その結果、今はホームページを見た学生が応募してくる会社になった。