せきねしんいちの観劇&稽古日記
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富士見丘小学校の台本の僕の担当パートを今日中に仕上げないといけない。18日はオーディション。明日、印刷してもらって、子ども達に配ることを考えると、締切はどう考えても「今日中」だ。 15分という枠のなかでもがく。長いものはいくらでも書けてしまうのだが、短いシンプルなやりとりの中で、お話を進めるのが僕は苦手だ。 カットしようとした前半のくだりが、かえって長くなってしまい、直した部分を全部捨てる。 気持ちを説明することは極力やめて、セリフのうしろで気持ちが動いているように心がける。 劇中の歌の歌詞が実行委員から新しく来た。それまであった詞とのおりあいをどうつけようか悩む。いっそ、テイストを活かして、全部書き直そうか、どうしようか、考える。 夜、いっぱいになり、外に出る。散歩しながら、ぶつぶつしゃべる。 篠原さんから電話をもらい、進捗を話して、少しラクになる。すぐに書き上がりそうな気がして、明るく話をしたのだけれど、その後、また考え込んでしまい、朝までああでもないと考えつづける。
富士見丘の台本は今日はお休み。一日、他の仕事にかかりきり。天気も悪いので、一日一歩も外に出ない日。 不自然な姿勢で原稿を書いていたせいか、右手の手首が痛くなった。前にも、やったことのある腱鞘炎もどきの症状だ。 風呂にゆっくりつかって、マッサージする。 長時間の風呂には、猫をつれて入る。もっとも、猫は、半分開けた湯船のふたの上にいるだけ。猫を見ながら僕がお風呂に入っている。猫見風呂か。 ぬるめの湯にゆっくりつかった方がいいと思うのだけれど、ぼくはすぐ飽きてしまう。ラジオをもちこんだり、濡れてもいい本を読んだりいろいろしたのだけれど、今、一番いいのは、猫を連れての入浴だ。 猫も、風呂場は暖かいのでまんざらでもなさそうだ。僕が、風呂場へ行くと、ついてくるようになった。 夜、西田夏奈子さんと電話で話す。8月の「ムーンリバー」への出演のお願い。引き受けていただけることになった。よかった。なんとしても、主人公の母親役をお願いしたかった。だんだん家族の姿が見えてくる。
4月にお世話になるサンモールスタジオの新年会にうかがう。 改装したスタジオの内覧会もかねてということなので、まずは劇場を見せてもらう。 客席が鉄骨組みになり安定感が増し、舞台はバトンが数十センチ高くなり、サイドの壁が取り払われている。とてもすっきりといい空間になっていて感動する。ここでどんな芝居をつくろうかと、しばらく客席の椅子に座って考える。 おとなりのレストランで新年会。知っている人は誰一人いない心細い状況。それでも、ぽつぽつとおしゃべりをさせてもらっているうちに、だんだん気持ちがラクになってきた。 それにしても、ここに集まっている人たちの若さはとっても新鮮だ。池袋演劇祭のパーティも、同じようにいろんな劇団の人たちが集まるけれど、もっとずっと年齢層の幅が広い。今日、ここにいる若い人たちに、今の劇団ってこんななんだというのを教えてもらった気分。 各劇団の自己紹介挨拶も順番に。特色があるところ、どうなの?とよくわからないところなどなどいろいろある中、ステキな人たちをいっぱい見つける。公演をぜひ見てみたいなと思うところがいっぱい。 僕もフライングステージの紹介をさせてもらう。また呼ばれることがあったら、今度は女装で来ようかな?などと思う。 続いて、昨年の公演の中から優れた舞台、演出、演技等に賞が贈られる表彰式。どれも見ていない舞台だけれど、見ておきたかったと思うものばかり。 9時過ぎに失礼して、新宿まで歩く。富士見丘小学校の打ち合わせ。篠原さんと青井さんと個室居酒屋で。ナベを囲んでの新年会も兼ねつつ、いろいろと話し合う。 途中で平田さんも参加。新宿文化センターで狂言を見た帰りとのこと。 よし、これでだいじょぶということになり解散。 終電で帰れなかったら泊まるのかな?という案もありだったのだけれど、きっちり終電ちょい前に間に合う。 僕は、休日ダイヤで結局終電になってしまう。駅に降りたら雨がずいぶん降っている。 タクシーも来る気配がないので、コンビニでカサを買って歩いて帰る。雨の夜道も気持ちが明るいと元気に歩ける。
昨日の授業で子どもたちの一人に「金髪にしないの? 金髪の方がかっこいいのに」と言われたからというわけではないのだけれど、久しぶりに髪をブリーチした。 黒い髪でヒゲを生やしているとどんどん男くさくなっていくので、それがねらいというか防波堤でもあるのだけれど、それをいっさいやめて、女優モードへ切り替える。 ずっと買いそびれていたカレンダーをようやく購入。いいのが見つかった。動物のイラストが版画になっているシックでかわいいもの。さっそく部屋に掛ける。 夜、ブリーチした髪をめぐって母親と口論。というか、久しぶりに声を荒げてしまう。大人げないと反省。それでも、家で大声を出したのは、いつ以来だろうと考える。思い出せない。なるたけ静かにおとなしく、もとい大人として母親とは接したいと思っているのだけれど、今日は、つい一声出てしまった。そのまま部屋に上がるが、食事の前だったので、しれっと降りてテーブルを囲む。なんでもない普通のやりとりが始まった。これが家族ってもんなのかもしれないと思った。喧嘩しても一緒にご飯は食べる。そんな関係。 カレンダーと一緒に買って帰った、母親が前からほしがっていた「ちょうどいい大きさの中皿」があったのがよかったのかもしれない。バーゲンで半額だったシンプルな青と白の縞模様の皿。デパ地下で買って帰った随園別館の春巻をのせてみる。 今日から始まったドラマ「白夜行」。ラスト30分だけを見る。原作はとてもおもしろかった。冒頭からというか番宣の段階で、「親を殺した子供同士」という小説としては「謎」の部分をいっきに種明かししてしまっている大胆さ。連続ドラマの手法としてはしかたなかったのだろう。 綾瀬はるかの子供時代を演じる福田麻由子に泣かされてしまう。この子はいったい何なんだろう? 原作には絶対になかった場面、読者の想像の中にしかなかった場面が、ていねいに描かれる。シナリオの勝利と言っていいと僕は思う。来週も見てみようと思える、気になるドラマが始まった。
2006年01月11日(水) |
富士見丘小学校演劇授業 |
朝方、メールでなんとか台本を送る。ばたばたと出かける。遅くなったので、いつもと同じルートでは間に合わないことがわかり、武蔵野線で西国分寺まで行き、吉祥寺から井の頭線に乗り換えることにする。久しぶりに乗った武蔵野線。南に向いた窓から射す日射しがあたたかくて気持ちいい。西国分寺駅の寒さに眠気がふっとぶ。 打ち合わせをして、青井さん、篠原さん、田中さん、鈴木理沙さんと特活室へ。 やってきた子ども達はお正月を超して、なんだかみっしりしているよう。大きくなったんだろうか。 まずは、田中さんによる、ウォームアップゲーム。続いての前半は、「未来の友情」の後半部分。新しく創作した「門番」役が人気でおどろく。 休憩のあと後半は、「未来の友情」の中に登場する「見えないボールでキャッチボールする」というのを体験してもらうことにする。 田中さんと鈴木さんに指導をお願いする。まずは「なわとび」。見えない縄で縄跳びをするということから。こちらの方がボールより見えやすいとのこと。 子ども達はせまい特活室で大いに盛り上がる。予想していたよりは微妙になわとびが苦手なのかなという印象。それでも、全員が縄をこわがることなく入っていくことが出来た。 時間が来たので、キャッチボールはまたということに。おしまいに来週のオーディションの説明を先生方にしてもらう。 解散したあと、新しいセリフの語尾を「『じゃん』じゃなくて『じゃないか』」にしたほうがよくない」とアイデアをもらう。「おお、そうくるか」うれしい。「考えておくね」と答える。 午後から、校内研究会に参加させていただく。議題は「総合的学習の時間における演劇の位置づけ」。講師は、文教大学教授の嶋野道弘先生。総合的学習の時間をつくられた方だそうだ。 嶋野先生がいらっしゃるまでの時間、先生方の前で、演劇授業の進捗について話をさせてもらう。 また、演劇授業に立ち会っていない先生方から、子ども達の反応を聞かせてもらう。廊下ですれちがったときのようすなど。若林先生からは、放課後に、今日やった「見えないなわとび」をみんなでやっていたという話をうかがう。うれしい。 嶋野先生のお話は、各地での総合的学習の時間の取り組みについての具体例がとても興味深かった。演授業の中で、劇をどう位置づけていくのか。根付かせるにはどうしたらいいのか。考えさせられることが多かった。これからの演劇授業の進め方に、さっそく反映させていきたいと思う。 研究会のあと、校長室で来年度の授業についてのうちあわせをする。予定していなかったのだけれど、お話をうかがったあと、これはぜひ話しておこうというかんじにどんどんなっていった。 今の五年生のようすや、これまでやってきたことなど、担任の先生方からいろいろうかがう。こういう打ち合わせに自然さは以前はなかなかなかったことだ。先生方とはじめから一緒につくりあげていくということが、するっとできてしまう3年目になっていくのかもしれない。 すっかり暗くなってから、篠原さんと音楽の畠先生と駅まで歩く。演劇授業の話をおしゃべりしながら。これもまたいい時間。 買い物に立ち寄った北千住の駅前。大画面に白石加代子さんの「百物語」の映像が映し出されてびっくりする。すごい迫力。シアターセンジュでの公演用だろう。しばらく立ち止まって見入ってしまう。
明日の授業用の台本が仕上がらない。僕の担当の「未来の友情」の場面は、15分。太田くんの原作に、台本委員の意見を採り入れて、三稿を書いているのだけれど、書けば書くほど、これでいいのか?という疑問が浮かんできて、ついに書けなくなってしまった。もともと短いものは得意ではないのだけれど、今回、要になるロジックが見つからず、苦しい。 他の2本の資料を読んだり、仕事に行ったり、いいアイデアが浮かぶのを待つが、これというものは浮かばない。 昼間、ギャラの振り込みでいきちがいがあったのも追い打ちをかけて、すとんと落ち込んでしまう。母親も帰ってこない、猫もいない家で、それでも悶々とする。 夜中、これでいこうという案が浮かぶ。ほんとに「浮かぶ」というのはこういうことなんだというかんじで思いつく。 それまでのだらだら理屈と説明を書いたところと捨てて、書き直し始める。
友人の大ちゃんと泰子さんのおうちへ伺う。去年の9月に生まれた優一郎くんの「命名の儀」とのことで、ご招待いただいた。 本当は、去年のうちに伺っていなければいけなかったのだけれど、10月はのどをはらしてしまい、風邪でもうつしたら大変と遠慮し、11月12月は台本やら稽古やらでいっぱいになってしまって、ようやく新年のごあいさつをかねて。 3カ月の優一郎くんは、赤ちゃんがどんどんかわいくなっていくさかり。甥っ子姪っ子や友人たちの子供もすっかり大きくなってしまって、ほんとに久しぶりに赤ちゃんとの出会いだ。 当時僕が中心メンバーの一人として活動していたTOGETHERというサークルで知り合った二人ということで、今回、形だけの名付け親(実際、命名したのはお二人なので)、ゴッドファーザー(マザーか?)をさせていただくことになった。 食事をして、お酒をごちそうになり、優一郎くんが眠ったところで、さてとばかりに大ちゃんが色紙を取り出してきた。初めて見る「命名用紙(?)」と、筆と墨汁。筆ペンでささっと書けばいいと思っていたのでびっくりする。 昔から書道は苦手。普段書く字は丸文字。筆ペンでも開き直って丸い字を書いてしまっているのだけれど、今日はさすがに丸文字じゃないだろう。おそるおそる筆に墨をつけて、色紙に向かう。墨の匂いがすがすがしい。 優一郎くんの「優」の字は、にんべんがシンプルなわりに右側のつくりがもりだくさんだ。バランスが取れない。なんとかおさまるようになったら、今度はにんべんの二画目のまっすぐな縦の棒(?)がむずかしいことに気づく。 手を何のささえもなしにまっすぐ動かすことの困難さにぶち当たる。富士見丘小学校の宮校長先生のことが頭に浮かぶ。もっとふだんからやっておけばよかったと思うが今さら何を言ってもしょうがない。へろへろになりながら、何とか書き終える。 まっさらな色紙に大ちゃんが書いた「命名」の文字も、泰子さんいわく「今日はじめて練習するから」ということで、僕に負けない微妙さ。ちょっとほっとする。 ともあれ、元気にすくすく育っていってほしいと思う優一郎くんだ。 臨月間近でフライングステージの舞台を見に来てくれた泰子さんだが、今日はまた一段と元気そうだった。母親になってとても力強く、たくましくなったようだ。友人の元気でしあわせな姿を見るのはとてもうれしい。元気をもらって帰ってくる。
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