せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年02月26日(日) 雨の日

 一日、台本に向かう日。資料をどんどん読み、メモをとっていく。
 朝、母親に呼ばれて下に降りる。何かと思ったら、猫がすずめをとってきたのだという。猫が台所でぽんぽん放り投げて遊んでいるのが、それらしい。ぐったりした小さな雀。近所の人の話から、うちの猫がカラスをねらっているという話は聞いていたが、こうして戦利品を見るのは初めて。
 食べるでもなく、いつまで放り投げては飛びついて遊んでいる。部屋がちらかるし、ちょっとおっかないので、外に出した。しばらくたって、大人しくしてるなと思ったら、がりがり食べていた。やっぱり食べるんだと少し納得。頭の部分を残して完食したところで部屋にいれる。いつもよりどう猛な獣のように思え、あちこち血がついているような気もして、今夜は風呂にいれてしまおうと決める。
 母親が近所の人に「うちの猫がすずめとってきて……」と話したら「うちのは鳩とってきたことがある」と言われたそう。鳩って。そんな大きなもの。越谷に棲息する天然記念物のシラコバトじゃないといいなと思う。
 一日中雨で買い物にも出かけない。母親と二人で、夜、鰻重を出前でとり、食事。ここのところ、土日も仕事だったので、こうして一日家にいて、母親と食事をするのは久しぶり。
 その後、猫を連れて入浴。せっけんで洗い、この冬はこれでおしまいになるだろう灯油の入ったストーブを付けっぱなしにした台所で、自然乾燥してもらう。夜中、案の定、灯油はおしまいになったので、僕の部屋に上げる。毛繕いをしながら、ぶつぶつ文句を言っていたが(多分)、そのうち寝てしまった。


2006年02月25日(土) 「放課後の卒業式」本番その2 3軒茶屋婦人会「女中たち」 写真撮影

 最後は「未来の友情」。さあ、どうなるか?とどきどきしながら見守る。「放課後の卒業式」の机と椅子は、きれいになくなって、あるのは、グレーのカーペットの道だけ。何もない空間に、4人の子ども達が放り出されているようで、とても心細そうに見える。
 でも、やりとりを重ねながら、だんだんその場にいるカラダになっていく彼ら。街の人たちのやりとりの中で、この場所の不思議さがだんだん見えてくるようだ。 最後の練習で、彼らにからむ4人の街の人たち役の彼らに、「どうして相手をしないのか理由を考えてごらん」と言った。今日の本番では、それぞれの理由がよくわかった。カツマくんは、腕時計を気にしながら、走り抜けていった。
 この4人の役は説明をいっぱいしなくちゃいけないし、この街の雰囲気も出さないといけないしで、彼らはとっても悩んだんじゃないかと思う。暗い人なんだけど、ちゃんと言葉は伝えてねとか、僕は難しい要求をいっぱいした。
 今日の本番では、このシーンを下級生の子たちが、楽しそうに笑いながら見てくれていた。話を聞かないかたくなさと、それをおいかける4人のやりとりが、シンプルにとてもおもしろいものになっていたからだ。
 チカちゃんに細かくお願いした動きの演出も、4人が一緒になって動くことで、さらに彼女の中にとまどいが生まれて、さらにおもしろくなった。
 氷の城の場面。ヒカルくんとマサミくんの門番二人がやっぱりおかしい。ぼけとつっこみの典型だ。
 彼らと一緒に登場して、1人2本、木の板を持って立っている、とらわれている街の人たちの並び方がとってもきれいになっている。きっと打ち合わせしたんだろうなと、ありがたい。
 氷が登場して、門番が2人を舞台上に追い上げるところ、そして、牢の中に閉じこめられた4人が、木の棒をつかんで「出せよ」と叫ぶところ、実際には全然リアルじゃない演出なんだけど、とてもよくわかる。
 門番が去ると、街の人たちは「きみたちもつかまったんだね」と言って、木の棒を大きな音を立てて倒す。すごい音が効果的だ。これも、稽古のとき子供たちに「どうして倒すんですか?」と聞かれた。僕は「その方がかっこいいから」と答えた。納得してくれてありがとう。
 街の人たちは、舞台のへりに一列になって腰をかける。牢の鉄格子はなくなって、ここは牢の中だ。4人の子どもたちは、彼らの後にいる。街の人たちは、正面を向いたまま、しゃべる。この場面も、さらに全然リアルじゃない。ここはどこだ? でも、こうした方がおもしろいし、よくわかる。練習しながら、僕が「こうやってみて」とお願いした。このあたりの演出は、理屈で考えると「リアルじゃない」ということで、ひっかかってしまうことばかりだ。でも、出演している彼らは、この「芝居の嘘と約束」に、軽々とのっかって生き生きといい芝居をしてくれた。
 照明の卓がある下の舞台下からは、このとき舞台に並んでいる街の人たちがとてもよく見えるんだそうだ。伊藤さんから、後から聞いた話だと、この場面の彼らはほんとに「はんぱじゃなく気の抜けた顔」をしていたらしい。たしかに「一緒に逃げよう」と炎に言われて、「無理無理……」と手を振るマキトくんをはじめ、みんなやる気のない無気力な表情(そういう役だからね)。
 ボールは取り上げられてしまったけど、遊ぶことはできると、炎を中心に「見えないボール」でキャッチボールを始める。まずは4人で、つづいて、街の人たちも加わって。
 そうすると、それまでの牢屋はぐーんと広がって、というか、牢自体がなくなって、子ども達は、舞台からフロアに降りて、大きく広がってキャッチボールをする。これもまた「芝居の嘘」だ。さっき道を聞いたりした4人の街の人たちも合流してしまう。
 にぎやかな声を聞いて、氷と門番が登場。炎は、氷に向かって「一緒に遊ぼう」と見えないボールを投げる。でも、氷は受け取らない。というか、「くだらない」と言って、見ようとしない。
 僕は、この瞬間がとても好きだ。それまで見えることになっていたボールが、やっぱり見えないんだということに、観客が気がつく瞬間。それまで、登場人物と一緒にボールを見ていた観客が、ふっと、ボールが見えない氷の立場になる瞬間。本番では、この瞬間、低学年の子ども達から笑いが起こった。ちゃんと彼らはボールを見たり、見なかったりしていてくれた。すごいことだと思う。
 続いて、氷は、「友情なんて信じない」という長台詞を語る。ここは、原作者のオオタくんが書いたセリフのまま。オーディションのとき、同じセリフで観客をうならせたヒデキくんのハレの舞台。途中、声が心配になるところがあったけど、ちゃんと伝わる声で語ってくれた。
 その言葉を聞いて、4人の子ども達の間に動揺が生まれる。それでも「友達はだいじだ」と、炎が歌い始める。「大切な友情」。
 ここでこの芝居は急にミュージカルになる。みんなで書いた詞、みんなで作った曲。まずは炎役のジュンヤくんのソロから始まる。仲間たち、街の人たちと歌う人はどんどん増えて、それまで、客席で見ていた他のチームのメンバーも、立ち上がって、歌い始め、フロアに移動して、氷に向かって歌いかける。「泣く前に笑おうよ、友達となら笑いあえる」「友情は見えないけれど、一緒ならば笑いあえる」。
 ここもまたすごいスペクタクルになった。舞台上に立つ氷1人に対して、残りの全員(今日はお休みが2人なので、72人。門番は、いつのまにか武器の棒を置いて、街の人たちに合流している)がユニゾンで歌う「大切な友情」。
 歌が終わると、炎は氷に背を向けて、体育館の後まで駆け出す。そして、一番遠くから、舞台上の氷に向かって、見えないボールを投げる。今度は受け取る氷。みんな拍手! ここのジュンヤくんはほんとにかっこよかった。そして、氷も炎に見えないボールを投げ返す。また拍手!
 この場面は、はじめ、舞台前のエリアでやりとりしていたのだけれど、本番直前に、健翔さんからアイデアをもらって、大きく距離をとってやってもらうことになった。彼らが見えないボールを見る視線と同じに、見ている下級生たちもボールを目で追っていたのがうれしい。この芝居全体のクライマックスだ。
 「友達になってもいい」と話す氷。「やった!」と喜ぶみんな。と、地震が起こる。これも「ここだけは効果音入れたほうがいいかね?」と篠原さんに話したところ(稽古中)、「足音でいい、足音で」と言われ、「やっぱ、そうだよね」と決めたところ。街の人全員で足を踏みならしてもらった。今日の半番では、見ている下級生たちも一緒になって足踏みしてくれた。で、この「放課後の卒業式」という芝居全体の中で、唯一の暗転。次の場面のため、4人の子どもたちは、フロアのまんなかに横たわり、他の全員は、舞台前のひなだんに整列する。
 と、ほんとに真っ暗になってしまった。照明は、伊藤さんにおまかせ。暗転中の移動は基本的にないから、最初の板付き以外、場当たりのような稽古は一度もしてない(照明が入ったのは今日が初めてだし)。フロアで見ていた、僕たちは青くなった。健翔さんも、篠原さんも、「点けて!」と叫ぼうとしたそうだ。でも、明かりは点かなかった。真っ暗闇の中、子ども達は、パニックを起こすこともなく、移動していた。
 これは、あとから伊藤さんに聞いた話。彼も、初め、しまったとおもって点けようと思ったんだそうだ。でも、暗がりのなか、位置を確認しながら、慎重に移動するこ子ども達のようすが見えたので、あえてそのままにしたとのこと。
 僕は、今でも、この瞬間のことを思うと、胸がいっぱいになる。練習もしてないのに、子供たちは、蓄光テープを頼りにして、正確な自分の位置に暗闇のなか移動した。お互いに助け合いながら。見えないけれど、ほんとにすばらしかった。
 暗転のトラブルでやけに時間がかかるというようなこともなく、当たり前のように明転すると、整然と並ぶ子ども達、それに、床に倒れていた4人が起きあがる。
 「ここはどこ?」「学校じゃん」と指さすライアンくん。彼は、ちゃんと体育館の壁を見てしゃべってくれた。これで、不思議な街が、まさに今ここ、体育館になる。
 ひなだんの子ども達のまんなかにいる氷が、立ち上がって、さっき取り上げたボールを投げ返す。投げたあと、するっとまた座るヒデキくん。
 空から落ちてきたボールを受け取って、今度はまた見えないボールにそれぞれ氷へのメッセージを書いて空に投げる4人。遠くのボールを見送って、終わり。
 ひなだんも前に一列に並んでお辞儀して、彼らもひな壇に上がっていく。
 で、「卒業証書授与」。高木先生への卒業証書を、みんなで読み上げていく。といっても、卒業証書自体はない。みんなで前にいるだろう高木先生に向かって、言葉を伝えていく。この卒業証書のなかみは、みんなに書いてもらったものを篠原さんが構成したものだ。印象的なフレーズがいくつもある。カイくんが書いてきた「リストラされんなよ!」も、ちょっとていねいな言い方になって、ちゃんと生きている。
 「卒業おめでとうございます!」と全員で言って、最後の歌「華道(さくらみち)」が始まる。「大切な友情」もそうだけど、誰に歌ってるのかがちゃんとわかる歌って、なんて心に届くんだろう。子供たちがみんなでつくったメロディも、畑先生の編曲もすばらしい。
 歌が終わって、終奏になると、子ども達は体育館を出ていった高木先生にむかって走り出す。「全員が」じゃなくて、行きたい人だけ。きっちり並んだひなだんの列から、降りていくのは、簡単なことじゃないのに、彼らは当たり前のようにやってのけた。手を振り、声をあげながら。そして、最後のピアノの音と一緒にゆっくりと暗くなっておしまい。
 僕は、体育館入口で暗幕を押さえながら見ていたので、子ども達が手を振る姿を正面から見るかたちになった。特等席だ。
 子供たちは、全員がいったんひな壇にもどって、下級生にお礼の言葉。そして「送る会」は終わった。午後には、保護者向けの発表が、もう一回ある。
 昼休み、校長室で、給食をいただきながら、感想を言い合い、確認をいくつか。「未来の友情」の暗転の話は、ここで聞いた。「じゃあ、今度はどうする?」という話になったのだけれど、「さっき、できたんだから、今度もだいじょうぶ。彼らを信じよう」とそのままで行くことにした。
 午後の発表と、その後のシンポジウムに向けて、劇作家教会のみなさんが、続々来校する。横内さんとごあいさつ。
 午後、舞台の確認をしてから、特活室に集合。みんなと最後の打ち合わせ。さっきの感想を伝えて、最後の「作戦タイム」をチームごとに。「未来の友情」チームでは、午前中の感想を言い合ってもらった。いいこと、よかったことがたくさん出たほかに、「あそこが困った」というのもいろいろ。セリフが出ないと思ったので、先につづけたら、あとから言われて困ったという話。言われたライアンくんは、「どこ忘れたの?」とよくわからないようす。「作戦タイム」の時間が終わって、集合するまでの短い間に「僕、どこ忘れた?」と聞かれた。僕も「あそこだよ」とちゃんと言ってあげられなかったので(ごめん)、「もし、また間違えてもだいじょうぶ。さっきと同じように、みんながたすけてくれるから。覚えたことをそのままやってごらん」と話す。
 彼は、僕に「セリフってどうやって覚えればいいんですか?」と聞いたことがある。日本語のセリフを、しかもあんなにたくさん覚えるなんて、僕が同じ立場だったら、とてもじゃないけどできないと思う。でも、彼はほんとによくがんばった。彼のがんばりが、みんなのやる気に火を点けたと思う。
 午後の発表は、保護者のみなさんと、来賓のみなさんの前で。
 今度は、さっきと反対側の客席の上手側奥、子供たちがスタンバイしているあたりに立ってみさせてもらう。
 二度目ということもあり、のびのびとしたいい芝居になった。大人たちを前にしてみると、午前中の下級生のノリがどんなののびやかですばらしかったかがよくわかる。保護者のみなさんは、ちゃんと見ていてくれるけど、反応がおとなしめ。花道をはさんで反対側に座った劇作家教会のみなさんは、笑い声をあげながら見ていてくれて、子ども達はどれだけ、やりやすくなっただろう。そして、無事終演。
 終演後、シンポジウムの前に、特活室で最後の挨拶。見に来てくれた扉座のみなさん、シンポジウムより子供たちに会いたいと来てくれた、永井さん、えり子さん。えり子さんは、「大切な友情」を目の前で力一杯歌っていた子の姿に涙がとまらなかったそうだ。「高木先生がうらやましい」と言っていた。永井さんは、「こういう感動を見ている人に与えたくて、芝居を始めたんだということを思い出しました。ありがとう」と子ども達に話してくれた。
 講師と先生方が、一人一人挨拶をして、解散。僕たちは、シンポジウムに参加。といっても、後のほうでお話を聞くだけ。今年も多くの保護者の方が残っていてくださった。パネラーとして登壇していたマツムラくんのお母さんから、マツムラくんの話がきけてうれしかった。
 終了後は、後かたづけ。寒いなあと思った体育館だけど、照明機材を片付けようとギャラリーに上ったら、とっても暑かった。やっぱり熱気は上にいくんだ。
 先生方もみなさんで片づけを手伝ってくれる。その間に、知らなかった子ども達のようすをいろいろとうかがう。「絶対、振り返っちゃだめだからね」と言った最後に振る桜を、高木先生にむかって駆け出しながら、うまく振り返って見た子がいたとか。「すっごいきれいだった」って言ってたそうだ。
 暗くなるまでかかって撤収終了。雨の中、打ち上げの席へ流れる。先生方一人一人の感想をうかがう。とてもいい時間。最後に若林先生と握手してご挨拶した。
 帰り、伊藤さんが車で途中まで送ってくれるとのことで、同乗させてもらう。「どこまで?」と聞かれ、「今日は気分がいいから、どんな遠回りでも平気」と答える。「俺も」ということで、結局、はるばる西日暮里まで送ってもらった。道中、僕の知らない子ども達のようすをいろいろ聞く。照明卓からでないとわからないあれこれ。卓はピアノの横、下手側のひな壇の奥にあった。コウヘイくんの笑顔もマキトくんの表情も、暗転中の子ども達の様子も、このとき教えてもらう。
 卓の前には座ってはいけないと言ったので、居場所のない子供が、卓の後の壁際にまわりこんで座っていたそうだ。でも、そこからは舞台の様子は何も見えない。午前中の一人目の子は、しかたないので、座ったまま「ピアノをなでていた」。午後の二人目の子は、ピアノの下にもぐりこもうとしたのだけれど、それはまずいと思い、結局、ピアノの脚を自分の足でかかえこんで体育座りをしていたそう。「同じ子じゃないんだ?」と聞いたら、「うん、一度、来た子は二度と来ない」と。なるほどね。
 伊藤さんと別れてからも、とてもいい気分のまま、地下鉄に乗り、帰ってくる。 ほんとにいい日、いい夜だった。みんな、どうもありがとう。

(あまりにも長文だったので一日分にアップできませんでした。読みにくくてすみません。ていうか、長すぎてごめんなさい。書きとめておきたいことがありすぎたもので……)

2月25日(土)3軒茶屋婦人会「女中たち」 絶対王様写真撮影

 3軒茶屋婦人会「女中たち」@本多劇場を見に行く。篠原さんと劇場で待ち合わせ。篠井英介さん、深沢敦さん、大谷亮介さんの出演。
 青井陽治さんの新訳で、すっきりとわかりやすい、エンターテインメントになっていた。豪華な装置が、実は吊られたもので、壁がぐらぐら揺れるとか、登場の前に舞台前のスペースをゆっくり歩くシーンがあったり(銀橋みたい!)、おもしろい工夫がいっぱい。
 大谷さんのソランジュは、無骨なかんじが、ぴったり。篠井さんのクレールは、奥さまごっこでの気品と、うって変わって、地のクレールのときの下品なかんじの変化が見事。姿勢、特に足の開き方がすごい。場末の女郎のような、だらしなくゆるんだかんじ。
 深沢さんの奥さまは、ぽっこりしたお腹とそれを強調するようなドレスからして、もうチャーミングで、いるいるこういう人!なかんじだった。
 終演後、チケットをお願いした深沢さんにご挨拶。「みなさん、男前でとってもステキでした」とお話しする。
 篠原さんと、富士見丘の次年度の打ち合わせを喫茶店で。打ち上げから一足先に帰った篠原さんに昨日の様子と、それをふまえての感想を言い合う。
 先生と全校の生徒に僕たちが協力してつくった昨日の舞台。まるで「劇団富士見丘小学校6年生」ってかんじだと話す。1年から5年生までは研究生。大人たちはそれぞれ違う、関わり方で6年生を支えている。

 夜、絶対王様のオープニングCG用の写真撮影。東北沢の稽古場にて。小林くん、トシくん、アルピーナさんと、待ち合わせ。笹木さんたちとも一緒になって、歩きながらおしゃべり。
 無事に撮影が終わったあと、一足先に失礼して、帰り道、アルピーナさんとフライングステージチームで打ち合わせ。衣装の相談を中心に。アルピーナさんに、候補の衣装の画像を見せてもらう。ほー、なるほどね。だったら、僕はどうしようか?と考える。
 夜、演出助手の寺谷さんから、お願いしていたアプルの舞台のあれこれ(回り舞台のことなど)や、装置についてのメールをいただく。イメージしていたことの実現がやや無理そうなことが判明。あっさり捨てて他のプランを検討する。

 セブンアンドワイに読んでおきたい本を注文する。アマゾンと違って、手数料、送料無料で近くのセブンイレブンで受け取れる。普通にありそうなのに、探すのが大変な本が、ほんとに簡単に手に入るようになった。


2006年02月24日(金) 富士見丘小学校 6年生を送る会「放課後の卒業式」本番その1

 富士見丘の駅に8時に着いて歩いていたら、ふじみ学級の前原先生と会い、学校までお話しながら歩く。リハーサルが見られなかったとのことで、こんなところがすごいですよ!というところをおしゃべりする。
 昇降口の前で低学年の子ども達に会う。僕の金髪がめずらしいようで、じーっと見ている。この間は、小さな声で「香取慎吾?」と言われた(!)。僕はこの一年、なるたけ、学校にいつもはいない「違う存在」としてここに来ようと心がけてきた。金髪もそうだし、ひげもそう。先生方と一緒になってしまうのは、とてもいいことだとは思うのだけれど、子供たちには、なにかひっかかるものを感じてもらいながら、つきあっていきたかった。「おはようございます」と挨拶して校長室経由、体育館へ。
 元々の舞台の前面に置かれたひな段のへりに蓄光テープを貼っていく。田中さん、里沙ちゃん、それに扉座の研究生の安達さんも来てくれて、一緒になってわたわたと。伊藤さんと篠原さんは照明のチェック。
 昨日の予定では、特活室に集合ということだったのだけれど、照明の入った体育館を見て置いてほしいということで、体育館に集合してもらう。
 8時45分、子ども達がやってくる。客入れの照明になっている体育館を見て、「すごい」「すっげぇ」と声をあげている。よしよし。
 全体の挨拶のあと、それぞれのチームで最終打ち合わせ。大きな問題が2つ。演劇授業チームの男の子が一人、風邪のため欠席。山本健翔さんと篠原さんで代役の相談。そして「未来の友情」チームでは、氷役のヒデキくんが遅刻との連絡があったそう。彼がいないと芝居ができないので、一瞬どきっとするが、きっと来ると信じて待つことに。
 演劇授業チームに舞台を明け渡して、未来の友情チームは、丸くなって打ち合わせ。この期に及んでも、炎役のジュンヤくんに細かい演出のお願いをする。ここ数日、一日毎に違うことを追加でやってもらっている。それにきっちり応えてくれて、どんどんよくなっている彼だからこそのこと。
 最後の場面の歌、「桜道(はなみち)」の背景で桜吹雪が舞台に降る。子ども達は、正面にいる高木先生を見ているのでうしろに降る桜は全く見えない。昨日から、「絶対に見ちゃだめだからね」と言っていたのだけれど、やっぱり見られないのは気の毒なので、この時間に一回降らせて見ることにした。今、見せてあげるから、本番は絶対に振り返らないよと話して。
 伊藤さんの照明をあてて、田中さんが桜吹雪を降らす。すっごいきれい。子供たちのなかから歓声が上がった。よしよし。
 それぞれのチームに分かれて打ち合わせているとき、竜崎役の彼が、「(小道具の)ランドセル忘れた!」と言って、教室に走っていった。子ども達何人かと体育館の外の入口のところで待つ。しばらくして校舎から出てきた彼に「走るのおせーよ」とか言っているようすは、芝居のなかの彼らとこれっぽっちも変わらない。
 彼が戻ったあと、トイレに行きたくなって、外のトイレに入ったら、となりの個室から物音がする。用を済ませて振り返ったら、モップがにゅーっと出てきた。すぐにナオキくんが登場。いたずらされたらしい。「そんなひまあったら、練習する!」と言って出てくる。ナオキくんの出番は、演劇授業の即興劇「エレベーター」のBチーム。このノリならだいじょうぶと思いながら、なんだこの余裕は?と感心する。
 2時間目は下級生による「6年生を送る会」なので、6年生はいったん特活室へ移動して、スタンバイ。でも、まだ打ち合わせをつづける。
 と、ヒデキくんがやってきた。濃い色味のジーンズに同じ色のGジャン。それに白いセーター、光る糸が織り込んであって、とてもきれい。氷っていう役にぴったりだ。見ていたココちゃんが「お、気合い入ってるね」と言った。遅刻してドレスアップって、なんだかすごいなあと、妙におかしくもあり、頼もしくもなってくる。それを受け入れている側のみんなもね。
 ヒデキくんを交えて、最後の打ち合わせ。そして、並んで入場する彼らを残して、講師陣は一足先に体育館へ。「自分がやるよりどきどきする」と篠原さんと言い合う。
 初めは、下級生による「6年生を送る会」。この会の最後が、下級生からのお祝いの言葉や出し物のお礼に6年生が披露する演劇、「放課後の卒業式」だ。
 去年は盛りだくさんの演目で、クイズなんかがあったりしてとても盛り上がったのだけれど、今年は、6年生の演劇が長いので、とてもシンプルなものになったのだそう。
 合奏や合唱、お祝いの言葉などなど、それでもまっすぐに届くものばかり。なかでも、5年生の出し物がおもしろかった。贈る言葉を全部リズムに乗せて歌う。歌詞は6年生にアンケートをとって作ったそうだ。なりたいものに「貿易商」なんてのがあって、一体だれが?と思ったりする。
 とてもラップっぽいんだけど、すっごい「日本」なノリが底に流れていて。合いの手の「ある、ある」とか「そう、そう」とか「うん、うん」なんてのも、とってもユニーク。
 で、6年生の舞台。本番1回目。僕は、保護者の方が途中入場してくる入口の暗幕を押さえて立っていた。本来のステージからは遠いけれど、フロア全体を使うので、ここからでもよく見える。
 それまでの送る会の間は開けていたギャラリーの暗幕を閉めて、客入れの照明に変わる。体育館が急に全然違う空間に変わった。
 全員で声を出す目覚まし時計の音で「放課後の卒業式」が始まった。
 始まってすぐ気がついたのは、声がよく聞こえることだ。全校生徒が集まったせいで、反響が適度に吸われたのだろう。それに、出演している6年生も実際に伝えたい相手がいることで、格段にやりやすくなったにちがいない。
 まずは、本舞台での朝の場面。雪の朝のいくつもの家族の風景。窓を開けて、雪を見る子ども達。親や兄弟とのとても自然なやりとり。
 最後にコウヘイくんが「わーい、雪だ、雪だ!」といいながら、舞台を降りて、下手袖まで走る。今日は、ランドセルを振り回して、すごいのり。客席からも笑い声があがった。
 あとで、下手袖のピアノの横に照明の卓にいた伊藤さんから聞いたのだけれど、笑いながら、下手に飛び込んで来るコウヘイくんの笑顔は、それは素晴らしかったとのこと。そして、ひっこんだあと、客席の反応を受けてのやった!という、また違った笑顔も、実によかったそうだ。
 場面は変わって、教室。「高木先生、学校やめるんだって」という噂をみんなで話している。外では、2人の男子が雪合戦。窓を開けてのやりとり、そして、彼らも教室にやってきてのやりとりが続く。
 もともとの台本では、この2人の雪合戦は実際に演じる予定ではなかった。でも、稽古中に2人が自主的に雪合戦を始めて、稽古場が体育館に移ってもそれは継続。ところが、教室でのやりとりが、遊ぶ2人の靴音に微妙に邪魔されてしますことがわかった。どうしたらいいだろうかと、大人たちは話し合った。で、思いついたのが、マットを敷くということ。体育館にあったマットを敷いてその上で雪合戦してもらう。体育用のマットのふかふかしたかんじが、雪の上で遊んでるのに近いかも。何より、音がしないし、色も白い! やってみたら、これはとてもいいアイデアだということがわかった。片付けるときに、いっそ、雪だるまをつくって、丸めてみたらという案も出たのだけれど、マットの裏は滑り止めのゴムがひいてあって、緑だったので却下。
 マットを使っての初めての練習のあと、2人が「すっごい疲れた」と言っていたので、「途中で雪だるまつくってみてもいいんじゃない?(マットじゃなくね)」と提案したのだけれど、今日も2人は、最後まできっちり雪合戦をしつづけて、教室にかけこんできた。マットは、スタンバイしている他の場面に出演する子供たちが片付ける。
 次の場面は、なんで学校をやめるのかということを高木先生に聞いてきた女子2名が、クラスのみんなに報告。「少し早い卒業式」をしてほしいと言った高木先生のために、「放課後の卒業式」をやろうという話をする。なんで卒業式なのか?という討論がずっと続く。クラスの子たちそれぞれのキャラクターが実におもしろい。
 稽古の間、僕たちは、一度も「こうやりなさい」とセリフを言って指導したことはないと思う。だから、彼らは一人一人、全然違うスタイルでセリフをしゃべっている。スタイルという自覚もないかもしれないが、そのくらいみんなが一人一人特別で、自分としてそこにいるための努力をしたんだと思う。この、教室の場面では、それが特に感じられた。
 「何をやろうか?」「合奏?」「花束贈呈」とアイデアがいろいろ出る中、最後に「演劇がいいと思います」という意見が出る。
 この意見を出すのはリョウタくん。そっと手を挙げて、ミカコちゃんに「さっきからカリヤくんが手を挙げてます」と言われて(この場面は、黒板の前に司会と書記がいる、学級会の形式だ)、おそるおそる話しだす。そのかんじのうそのなさ。意見を言ったあと、片足を椅子の脚にひっかけて、すっと引き寄せて座るスムーズさと一緒に、大好きな場面。
 演劇をやろうということになったあと、教室の装置(机と椅子×12セット)は出番を待っている子ども達によって片付けられる。口々に、「演劇だって……」などと「好きなこと」をいいながら、わらわらと出てくる子ども達。元々はただ片付けるだけだったのが、生き生きとおもしろい場面になった。(午後の上演では「冬のソナタがやりたい」なんて言ってる子もいた)
 ここからは高木先生の「放課後の卒業式」になる。体育館のカーペットの先にいる高木先生に向けて、挨拶し、解説をしながらすすむ。
 まずはダンス。全員が登場して踊る。49秒。ダンス自体もかっこいいが、この「全員が登場する」というのが、ほんとにかっこいい。スペクタクルだ。全員が登場して、踊って、さあっと退場する。
 つづいて「演劇授業」。エレベーターが止まってしまい、乗り合わせた人たちがさあどうするか?といった即興劇。前期の永井さんの授業でやったことを元にした創作。即興のおもしろさは活かしながら、流れはほぼ決めて、全員でつくりあげていった。
 Aチームから。10Fまでしかないはずのビルのエレベーターが、100Fまで行ってしまう。ドアが開いて、降りてみると、そこは不思議な世界。彼らはとっても小さくなってしまって、元のままの巨大なクラスメートとやりとりをする。
 はじめに外に出される小柄なコウスケくんが、「この白いのなんだ?」と指さしたら(それは実は消しゴム)、客席の最前列に座っていた一年生が、一斉に指さす方を向いた。小さなこどもは、実に素直にこの「見えないもの」を見てくれた。そして、今回の1時間強の上演時間、彼らは、この想像力を使わないといけない、出演者と一緒に見えないものを見なければいけないこの芝居に、ずっと集中して、とても楽しんで見ていてくれた。
 Bチームは、エレベーター型タイムマシーンで3000年経ったらどうなるかという実験だったということが最後に明かされる。右往左往していた人たちは、最後、サルになったり、ロボットになったり、妖怪になったりしてしまう。
 エレベーターは、図工で作った木の板(棒)を四隅の柱に見立てた。2つのチームは、エレベーターの位置を、フロアの全然違うところに設定した。これは、子ども達が、自分でどこでやったらいいかを話し合った結果だ。最後に登場する科学者たちの話す位置も同様に。
 「演劇授業チーム」は、即興劇ということだったのだけれど、練習を積み重ねるうちに、だんだん「こんなかんじ」というふうにゆるやかにお話が決まったものになっている。本当の意味での即興ではないのだけれど、彼らが発する言葉とそれを受けている聞き方は、とても嘘がなくて、書かれた設定でセリフをどうしゃべるかということとは、全然違うものになっている。何より、彼らが楽しそうにやっているのがいい。
 続いて、「世界の子供たち」。戦争や内戦で苦しむ世界の子供の子供たちの手紙を、みんなで語る。「ここにいない人のことを思ってみよう」という授業でやったことの発表だ。舞台と、客席の後側、体育館全体を使った演出。「たすけて」とか「殺さないで」といった叫びが、稽古のときは、なかなか叫びにならなかった。今日はきっちり聞こえてくる。
 一人お休みしてしまった子の代役はナオキくんが台本を手にして読んだ。朝から、代役の可能性をさぐっていろいろ試した結果、やっぱり台本を持とうということになった。本番は、そのことで損なわれたものは何もない結果。朝、健翔さんを中心に、演劇授業チーム全員は、ぎりぎりまで、真剣に打ち合わせをしていた。その姿が、ひとつの成果と言えるんじゃないかと思う。
(翌日の日記に続く)


2006年02月23日(木) 「放課後の卒業式」リハーサル

 目覚ましをかけわすれ、というか、「放課後の卒業式」の冒頭に使うために学校に持っていってしまったので手元にないんだった、それよりも目覚ましをかけなきゃと思う前に眠ってしまった。見事に寝坊。
 6時半には家を出ていなければいけないのに、目が覚めたのは7時45分。あわてて平田さんに電話をかけ、飛び出す。「今日は通し稽古だから大丈夫」と言ってもらったもののずっとドキドキしながら電車に乗っている。
 富士見ヶ丘の駅を降りて歩いていたら、森江先生に会う。風邪で熱があって病院に行ったので、遅くなったのだそう。学校までの道を、授業のことをお話ししながら歩く。思いがけないいい時間がもてた。
 体育館に行ったら、場面は演劇授業、エレベーターの2チーム目。
 今日は通し稽古なので、「未来の友情」チームのみんなに挨拶もできないまま、客席から見させてもらう。段取りは一応できているのだけれど、いまいちいきおいがない。せりふもあちこちよどみがちだ。このノリの悪さは僕が遅刻したせいかもしれないと思えて、ほんとうに申し訳ない。
 客席にいたほかのチームの全員が舞台に登場するクライマックスまできて、セリフのやりとりが急に微妙になった。そりゃそうだ。毎回、時間いっぱいになって、「未来の友情」のラストは、毎回の授業でもあまり練習できていない。
町の人として出演している、原作者のオオタくんが、他の子たちのセリフがつまるたびに、ふっと一歩前に出ている。なにができるわけでもないのに、一歩前に。で、また元に戻る。そんなことが、3、4回続いた。心配だったんだねというのがよくわかった。彼はきっと無意識なのだろうけれど、なんとかしようという思いが伝わってきた。
 1回目の通し稽古が終わって、一休み。この時間に、大人たちは作戦会議。あ、子供たちも。細かい打ち合わせをする。全員の段取りの確認もして、2度目のリハーサル開始。
 フロアに1.8メートル幅のグレーのパンチカーペット、25メートルを敷く。「今日、敷かないんだったら、本番もないほうがいい」と、田中さん、照明の伊藤さんに言ってもらって、大急ぎで。急に舞台っぽくなったフロアがいいかんじ。カーペット一枚で急に空間の質が変わる。体育館が劇場に変わるように。
2回目のリハーサルは1回目よりずっと順調にはこぶ。声の広げ方、空間のおさえかたを、子供たちは、実際の舞台に立ち、感じることで、学習している。
終わって、校長先生、篠原さんと手を取り合って、泣いてしまう。舞台に並んでいる子ども達のなからか、ショウヘイくんが「涙は明日にとっておいてください」といい声で。思わず「うるさいよ」と言ってしまう。怒ったんじゃなくて、照れくさかった。そんなこと言えてしまう、彼も大したもんだ。
すごいよ、みんな。
 ちっとも、感傷的な話じゃなくて(感動的ではあるけれど)、それよりも何よりも、みんなで作り上げてるってことが、すばらしい。
 給食をいただきながら、打ち合わせ。今日はスパゲティミートソース。おいしくいただく。
 照明と舞台の仕込みを開始。田中さんたちは、給食を後回しにして、舞台に降る桜のしかけに取り組んでくれた。
 僕は、篠原さん、伊藤さんのお手伝いで、照明の機材運び。体育館全体を使う、今回の舞台では、照明もなかなかの量。ギャラリーに次々と照明がセットされて、なんだかすごいことに。クラスごとに切ってもらった桜吹雪の追加を持ってきてくれたマサヤスくんがクラスに帰って「すごいよ、体育館、『要塞』みたいになってる」と言っていたとの情報がとどく。たしかにそうかも。
 僕たちが、照明と舞台上の仕掛けの確認、それにさっき仮止めしたカーペットをきちんと張っているあいだ、先生方は、図工の前田先生を中心に、木のオブジェを体育館全体に配置。ギャラリーから吊していってくれた。それから、明日の「6年生を送る会」のためにアーチや、花でつくった文字のセッティングも。それに、ビデオ撮影のためのカメラと三脚もギャラリーに置かれていく。
 ほんとにみんなでつくってるんだなあというかんじ。なんて気持ちのいい現場なんだろう。
 ヒデキくんが、授業の終わりに僕のところにやってきて、昨日ユウヤくんにお願いして渡してもらった僕の台本を返してくれた。片手にちゃんと自分の台本を持って。だいじょぶだからというように。サンキュと受け取る。
 暗くなるまでかかって、なんとか仕込みを終える。いや、舞台上の桜吹雪当てのシュートは明日ということに。その間、子ども達の何人かは、校庭でサッカークラブの練習で走り回っていた。その元気はなに? 
 伊藤さんの車でスタッフ一同、荻窪まで送ってもらう。車の中で、伊藤さんが担当していた中学校のことをいろいろ聞く。
 荻窪から、篠原さんと一緒に北千住まで。子ども達のこと、芝居のことをずっと話しながら。篠原さんと別れて、僕は東急ハンズで蓄光テープとビニールテープを購入。明日は今日寝坊した分、早く行って、舞台の階段に蓄光テープを貼ろうと思う。


2006年02月22日(水) 富士見丘小学校演劇授業

 2、3、4時間目。もともとは予定になかったのだけれど、急遽、もう一日やろうということで、先生方に授業の都合をつけていただき、講師陣も集まった。
 頭から、転換を中心に通していく。
 冒頭のウォームアップ、つづいて、一番初めの「放課後の卒業式」の朝の場面から開始。
 今日、出番のない子供たちは、本番のときにいるだろう位置についてもらう。出番がないときもつねに、客席や舞台袖にいつづけることの意味をかんじてもらう。
 合間合間に、若林先生から、子どもたちに意見を言ってもらっていいですかとたずねられて、ぜひとお願いする。
 いろんな意見がどんどん出る。お互いに感想やあそこはもっとこうした方がいいということを、とてもシンプルに、ただみんなでいいものをつくろうという気持ちだけで、言葉にしていっている。
 感動する。ただの段取り確認の稽古の予定が、一気に中身の濃いものになった。
 続いてのダンス、そして演劇授業の発表のあとも、意見をどんどん言ってもらう。本番の発表には直接現れないけど、このディスカッションの時間は、今年一年の授業の総まとめといっていいものだったと思う。
「未来の友情」チームは、門番2のマサミくんがお休み。門番1のヒカルくんが朝一番にやってきて、どうしようかと相談を受ける。代役を誰かにお願いしようかと言ったら、「一人でできるかも。できると思う」と言う。「じゃ、やって!」とお願いした。
 ひかるくんはぼけとつっこみの2人の門番を1人でみごとに演じていた。みているみんなからも歓声があがった。木の板(棒)を武器に4人の子供たちを舞台上に追い上げるシーンも、1人で2本の板をうまく使っていた。すばらしい。
 「未来の友情」は時間がなくなってしまったので、フィードバックは各クラスにお願いすることに。
 最後の挨拶の時間、若林先生が「今日のMVPは間違いなくヒカルくんだね」と言ってヒカルくんが挨拶の号令をかけた。拍手。
 授業のあと、氷役のヒデキくんが、「ありがとうございました」と言って、この間渡した僕の台本を返しに来てくれた。はーいと受け取ったのだけれど、あとで心配になった。セリフは覚えたからだいじょうぶってことだったらどうしようと。同じクラスのユウヤくんをつかまえて「これヒデキくんに渡してくれるかな。台本ちゃんと読むようにって伝えて」とお願いする。
 今日も校長室で打ち合わせ。それぞれの担当の枠を越えて、講師のあいだでいろんな意見がやりとりされる。今回は、そんな演出の変更が次から次へとあった。大人数のスペクタクルな演出。75人全員がかかわる大仕事。どうしようかと思うがやってもらおうと思い、彼らに伝えた。初日直前の演出の変更は、本来いけないものかもしれないが、もっといいものにしたいという思いはきっと伝わるだろうと、彼ら、6年生全員を信じることができている。明日も授業が楽しみだ。
 仕事夜中まで、車で送ってもらう。今日中に入稿しなければいけないものを、ひたすらつくる。夕方7時の予定が、明日の朝一に変更になり、どんどんずれこみ、夜中までの残業。終電がなくなったので、車で送ってもらう。
 部屋について、畑先生と篠原さんに至急のメールを送ったところまでで、記憶がなくなる。たぶん爆睡。


2006年02月21日(火) 新曲

 昼間の仕事の追いこみの日。本番前にやっておかないといけない期限付きの仕事を片付ける。
 ばたばたとした一日。帰りは、バスでのんびり帰ってくるが、車内でパソコンを広げて、日記やら、台本のメモやらを書き留める。
 絶対王様用の曲をあれこれ聴いてみるが、これはというものが見つからない。一つ思いついた曲を、ネットで注文する。いつもはアメリカから輸入するCDが、国内の業者に注文できた。これがいけそうだといいなと思う。到着するのを待っている間、富士見丘の本番に向けてのラストスパートだ。


2006年02月20日(月) 富士見丘小学校演劇授業

 1時間目からの授業。中学校に向かう去年の6年生何人かすれちがい、挨拶する。
 今日は、前半、チームに別れての授業。前回の荒ら通しを踏まえての練習。セリフを覚えてきて!と話したのだけれど、授業前に廊下で会ったジュンヤくんに「セリフ覚えてきたよ!」と元気に挨拶される。よしよし。
 まずは、久しぶりの発声練習から。自分の声をちゃんと聞くことが大事だと僕は思う。ただ大きな声を出そうとするよりも、自分の声をまずは聞くことが大切なんじゃないかと。子ども達は、声を出すことにまず照れていて、それでも、ハミング、胸のひびきをかんじて、部屋全体に広げるということをやっていってもらう。
 お休みの人が誰もいないフルキャストでの稽古。図工で作った、カラフルに模様を描いた木の板を小道具にすることにして、いろいろ使ってもらう。
 どうしようかというのは、ほとんどその場でどんどんやってもらって、決めていく。壁になったり、牢屋の格子になったり、門番の武器になったり。いつまでも持ったままだとつらいので、どこかで手から離さないといけないのだけれど、どうするかを考えてしまう。バタンと床に倒したら、音も迫力があって、なかなかおもしろそうだ。早速、採用する。
 完璧ではないけれど、セリフが入ってきているので、いいテンポで芝居が進む。最初に登場する4人には、ボールを投げ合いながらやってとお願いした。むずかしくて、苦労していたけれど、明らかにボールなしのときよりも、セリフが届くようになる。そのことを、確認する。
 体育館に移動して、全体の流れをやってみる。今日は、出番のないときに、どこにいるかを決めることを目標にする。
 75人の子ども達が、いくつもの場面に登場するので、大勢をあちこちに動かしながら、順を追っていく。
 「未来の友情」のラストは、「当たり前のように」全員が登場する。舞台の上にただ一人いるヒデキくん。いい場面だ。その後の地震の流れはややあたふたと。最後の卒業証書のシークエンスは、時間切れでおしまいまでできなかった。
 授業のあと、今日も校長室で打ち合わせ。給食をいただきながら。
 新しいアイデアがまたいろいろ浮かぶ。次回、やってみようということがいくつも。
 昼休み、今日の授業を撮ったビデオ、子供たちが「確認したい」ということで学校放送で流していた。僕たち講師の声はよく聞こえるんだけど、子ども達の芝居になると、かなり聞き取りにくい。職員室に「すみません、ボリュームを上げてください」という電話が教室からあったそうだ。副校長先生が「これでいっぱいです。」と答えたそう。子ども達は、改めて自分たちの声の大きさ(小ささ)を知ったかもしれない。次回はどうなってくるか、楽しみだ。
 台本をなくしてしまったというヒデキくんに僕の名前の千社札のシールをはった僕の台本を渡す。体育館に行ったら、「はい」とホカロンをくれた。どうもありがとう。


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