せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年04月23日(日) 「ミッシング・ハーフ」5日目

 マチネ、ソワレ二回の日、二日目。
 昨日のコンディションを考えて、マチネの準備から、前倒しを心がける。そのわりには、やっぱりバタバタしながら、開演時間に。
 今日は、トシくん、マミィ、それに早瀬くんが手伝いに来てくれている。早瀬くんから近況をいろいろと聞かせてもらう。
 マチネ、大勢のお客様に支えられての舞台。昨日の「事故」をふまえて、舞台裏に予備のつけまつげとノリを用意しておく。場面のあいまには、「まつげはある? よし大丈夫」と確認をしながら。
 公演が続いて、肌がだいぶ荒れてきた。特に、まぶたが。終演後、ご挨拶に出るのに、大慌てでメークを落とす。かなり乱暴にやっつけるので、ラメやらシャドーやらでやられてしまうのかもしれない。今日は、まつげだけをとって、着替えて、ロビーに出る。すっぴんで行くと、舞台の姿との落差が大きいので気づいてもらえなかったりするのだけれど、今日は、なんとか……。
 ロジャー・リーズのワークショップで知り合ったクミさん、ユミさんにごあいさつ。クミさんは大門さんともお知り合いだそうでおどろく。
 今回、メークを落としてから、外に出るので、お帰りになるお客様にご挨拶できないのが申し訳ない。普通はそれで全然いいのだし、慣れないといけないかもしれないと思うのだけれど、やっぱり一言、ご挨拶したいと思ってしまう。これから見に来ていただける方は、もしよろしければしばらくお待ちいただけるとうれしいです。毎回、必ずロビーに出ていきますので。
 休憩時間。今日も慌ただしい2時間。昨日に続いて、大門さんが差し入れのお総菜を持ってきてくれる。牛スジの煮込み、煮卵と麩とこんにゃく。白いご飯を買ってきてもらって、今日もおいしくいただく。ごちそうさまでした。
 ソワレの開演。追加公演ということだけれど、「他が満員なので追加」というわけではないので、正直、お客様の入りが心配なところ。それでもだんだん埋まって、ほっとする。
 「女優」としての大きさを意識しながら演じているこの頃。大きさと繊細さのかねあいをさぐるのが、とてもおもしろい。一緒に舞台に立っている大門さん、森川くんとどうわたりあうか、それに見ていてくれるお客様とどう一緒に芝居をつくっていくかということに、もう一つ、自分をちゃんと見ながら、操縦していくおもしろさ。もっとも、こんなことは、まず真っ先にできていないといけないことかもしれない。でも、僕にとっては、この順番だなと思ってしまう。
 終演後、篠原さん、yu-jinくんにご挨拶。篠原さんがどんなふうに見てくれるか、じつはドキドキしていたのだけれど、楽しんでもらえたようでほっとする。
 昨日に続いて、いただいた缶ビールで楽屋で乾杯。サンモールスタジオの佐山さんが見てくださって、感想をいろいろうかがう。初日に比べて、ずいぶん僕がまとっている空気が変わってきたと言っていただく。やっていることはそう変わらないはずなのに、そういうものなんだと納得する。この劇場の空気のなか、僕がちゃんと息をしていられるようになったということかもしれないなとも考える。
 今日で、全公演の日程が折り返し。いつもは、日曜日が千穐楽のフライングステージにとっては、初めての週末を越しての公演(祝日の月曜or火曜千穐楽というのはあったけれど)。
 最近、ミクシィ友達になったクミさんが、ご自分の日記に「ミッシング・ハーフ」のことを書いてくれて、僕たちのことを「役者○○」と呼んでくれていた。(○○にはたぶんカタカナ二文字が入るはず)。ほんとにそんな芝居だなと思う。出ずっぱり、しゃべりっぱなしの1時間50分。大門さんは、早変わりの3役、実際は時代が変わるのでキャラクターは4役。こんなに芝居ばっかりな芝居(変な言い方だけど)はないと思う。毎回をとっても大きな山に登るつもりで、頂上をめざす。それも、途中までロープウェイかなんかに乗るんじゃなくて、1合目からしっかり歩いて登る。そんな芝居になっているんじゃないかと思う。
 チケットはまだまだ余裕があるそうです。どうぞ、みなさまのご来場をお待ちしています。
 あと、5回の公演。明日もまた、頂上をめざして、しっかり登っていこう。


2006年04月22日(土) 「ミッシング・ハーフ」4日目

 二回公演の日、一日目。マミィ、ノグ、トシくんが来てくれる。
 僕は、12時入りで準備を始める。今回、僕は、メークと準備に約一時間かかる。ヒゲを剃って(朝剃ると浮いてくるから直前に)、メークをして、ウィッグをかぶり、着替えて、ヘッドドレスをつける。途中で何度も「まだ終わらないの?」と思ってしまう。できあがった姿はとてもシンプルなのだけれど、とっても手間がかかってる、今回のこしらえだ。
 開場前に、大門さん、森川くんと、舞台であれこれ話す。ダメだしというよりも、昨日のおもしろかったあれこれを共有する時間。話の合間に今度はこうしてみようというアイデアもうかんできて、それを確認してみたりする。
 今日のマチネは、とっても大勢のお客様がいらっしゃる回。平土間の席も一列余分になっていて、舞台との距離がとっても近い。
 芝居としては、昨日よりも押していった印象。大勢のお客様に負けないでずっと向き合いつづけることをこころがけた。
 終演後、客出しのご挨拶のあとの昼休み。大門さんの手作りのお総菜。れんこんのきんぴらに、もやしとほうれんそうとぜんまいのナムル。近くのコンビニでごはん(大盛り)を買ってきて、ごちそうになる。ほかほかとあったかいお昼。キャスト、スタッフ、みんなでわいわいと。ごちそうさまでした。
 ソワレの開場、開演。間の時間が二時間しかないので、ややあわただしい。マチネと同じように準備を始める。メークを落としてない森川くんはややのんびり。昨日も帰りの電車で別れしなに「メーク落としてね!」とほろ酔いの彼に念をおした(それでも、いったんはそのまま寝たらしい)。
 夜の舞台もおおぜいのお客様と一緒に1時間50分の旅をする。昼夜の間の時間に森川くんと確認をした、「一番大変なのは1場だね!」をふまえて、最初からややがんばる。その後の展開がとてもカラダになじんできた。
 途中、6場でひっこんだとき、右の上のつけまつげがなくなってることに気がつく(今回は、上まつげ&下まつげ)。どうしよう?と思ったら、袖で落ちてたのを拾っていてくれた。これも、実はものすごい奇跡だ。今回は、メークを直す時間もない出ずっぱりなので、まつげが落ちたら、それっきりと覚悟を決めていた。でも、6場で直す時間がありそうだということに気がつく。舞台に落としたら上演中は絶対に拾えないつけまつげを拾ってもらえたんだから、これはつけなくては!と決心。
 拾ってもらったまつげを手に、袖の中、舞監の中西さんに小さな声で「両面テープ1ミリください」とお願いして、テープを細く切ってもらう。指先で細くよじって、ノリのかわりにして、まつげをつけてみる。やった、ついたよ、ついた!
 6場の後半は、それでいくことにする。両面テープは白いのだけれど、「ノリがかわいてないの」と思うことに。
 やや、切ない展開の6場の後半、とっても近い距離で顔を合わせる森川くん。演じていて哀しくなってしまう場面だけれど、今日は「絶対にまつげが変!」とどこかさめた自分がいた。ちょうどよかったんじゃないだろうか。その場面で新しく気がついたことがいくつもある。なんだろうこれは? 大事におぼえておくことにする。
 そして、終演。カーテンコールで登場する前に、お客様から拍手をいただく。とってもうれしい気持ちでごあいさつに出る。
 帰り、今日は終演時間が早いので、差し入れにいただいた缶ビールで、みんなで軽い飲み。ロビーor楽屋にて。
 8月の「ムーンリバー」の先行予約を何人もの方からいただく。ほんとにありがたい。出演してくれる、木村佐都美ちゃんがお母様と一緒に来てくれた。感謝。久しぶりのマッスーの元気なすがたも見ることができた!
 帰り、ちょうど空になってしまったアイライナーを探して、新宿まで歩こうと決心。二丁目にあるドラッグストアで、今使ってるのと同じものをゲット。よかった! 横断歩道を渡ったら、タックスノットのタックさんに遭遇。そのままお店に。
 MTFのアンジェリーナ(名取裕子or深田恭子のようにゴージャス!)、上海出身のアキラくんと、おしゃべり。「ミッシング・ハーフ」を演じている僕にとって、とても意味のある話をいろいろ聞き、思うことたくさん。
 ほろ酔いのまま電車で帰る。
 明日からの舞台がさらに楽しみになる。
 決まったことをなぞろうとするんじゃなくて、毎回が新鮮で新しい、そんな舞台に、思い切りよく飛び出していけることの幸せ。
 明日は、公演中日。


2006年04月21日(金) 「ミッシング・ハーフ」3日目

 朝から洗濯機を4回まわす。よし干すぞ!とベランダに出たら、急に空が暗くなってきた。夕立のようなすごい雨の予感がしたので部屋干しにしてから出かける。
 午後になっても雨が降る気配はなく、ついには快晴。やられた。
 公演三日目。昨日の反省をふまえて、守りに入ってしまわないよう心がける。前半、声の調子がやや微妙になるものの、なんとか乗り切り、中盤からはいつものように。
 今日は、なんだか、森川くんと舞台で初めて会ったような気持ちになる。大門さんの沢村源之助とも。不思議な感覚。そんな気持ちのままラストまでの時間を積み重ねていった。
 終演後、森川くん、しいたけをさん、ピンズ・ログの平林さんたちと飲みに流れる。となりのテーブルには、今日見に来てくれたワタルくんたち、影坂狩人さんご一行。今日は狩人さんの誕生会とのこと。芝居の話で楽しく盛り上がる。帰り際に、中西さんたちスタッフのみなさんが入口付近のテーブルにいたことに気がつく。わお、ちっとも知らなかったよ。
 森川くんと地下鉄で、おしゃべりしながら帰る。陽気なラテン系の人たちが大勢乗り込んできて、にぎやかな新宿線。目に優しい濃ゆい系の人々。
 一人になった乗り換えのコンコース、頭の中でセリフをさらっていたら、前を歩いていた人に思い切り振り返られた。ぶつぶつ言っていたつもりがいつの間にか大声になってしまっていたらしい。そのセリフは「もう帰って、あなたを好きになりそう」。びっくりするはずだ。
 新御茶ノ水駅の長い長いエスカレーター、二十代前半の男子二人が、ハグしながら乗っていた。ブリーチした髪に大きめのピアス。二丁目からの帰りかな。なんだかうれしい気持ちになった。
 いい夜。


2006年04月20日(木) 「ミッシング・ハーフ」2日目

 二日目にして、ややゆっくり目の入り時間。中西さんと舞台の確認。そして、準備にとりかかる。
 まみぃが衣装を洗濯してくれた。かたじけない。感謝。
 ノグ、小林くんがオモテ方スタッフとして来てくれる。
 開演前、楽屋で森川くんと話す。膨大なセリフ、そして出ずっぱりの芝居は、開演前に楽屋でじたばたしてもしょうがない。とにかく舞台に出ていって、そこで生きるしかないんだねと。
 去年の「二人でお茶を TEA FOR TWO」の時、開演前の楽屋でも同じような話をした。僕は、それでも不安なので、台本をめくる。お寺の儀式か何かで経本をぱーっとめくっていくと「3千回」唱えたことになるという、あんなかんじで。
 開演。今日もお客様に支えられて舞台にいることができた。
 劇中で語る映画の話。「語り」なので、言葉よりもカラダが先行するように組み立てている。その気分が、今日はとてもすっきりとふにおちた。でも、その分、それ以外の場面のやりとりが、なぞるものになってしまったかもしれない。終演後、感想を聞き、そんなことを考える。
 見に来てくれたエスムラルダさん、森川くんとアイランドへ寄っていく。芝居の話、近頃のドラマの話などで盛り上がる。
 帰りの電車で言葉とカラダのことをずっと考えている。たらたら歩いていたら、いつの間にか終電になってしまった。


2006年04月19日(水) 「ミッシング・ハーフ」初日

 なかなか寝付かれず、寝たり起きたりを繰り返し、もう起きる時間だなあとおもいながら、気持ちよさそうに寝ている猫と一緒に寝てしまい、ばたばたと出かける。
 森川くんと場面を小返しして、ゲネプロに備える。昨日よりもちゃんと彼を見ることができているような気がする。
 ゲネプロ。大門さんのメークをすませた姿と舞台上で出会う。映画やドラマで見ている大門さんだと、ドキドキしながら、気持ちがぐーんと盛り上がる。
 終了後、ダメだしというか、いくつかの確認。初日の舞台の準備を始める。
 宇田くん、小林くんが来てくれる。くにおさんがカメラで本番前のぼくらを撮ってる。いっぱいいっぱいという気持ちにはそんなにならず、静かな気持ちで開場、そして開演の時間を迎える。
 開演前、舞台奥に板付きしながら、川野万里江のことを考える。実在しなかった彼女に挨拶する。で、開演。
 1時間50分。お客様に支えられながら、一緒に「ミッシング・ハーフ」という舞台ができあがっていった。カーテンコールに出ていって、あたたかい拍手をいただく。感謝。感謝。
 終演後、初日乾杯を客席で。いっこうちゃん、にしやん、それに宇宙堂の加藤記生ちゃんたち。スタッフ、キャスト、お客様方と、みんなで小さな缶ビールで乾杯。
 樺澤氏と一緒に打ち合わせがてら飲みにいく。土井美和子さん、サンモールスタジオの吉田さん、劇場関係のみなさん方をはじめとする、大人の芝居者な集まり。となりのテーブルには中西さんたちスタッフのみなさんも。
 帰りの電車で、小池さん、青木さんとおしゃべり。楽しいお酒でほろ酔い気分。
 さあ、初日が開いた。これから1週間の長丁場。毎回をなぞらずに、一回一回をていねいに、キャスト、スタッフ、それにお客様とつくりあげていきたいと思う。
 チケットはまだまだどの回にも余裕があるとのこと。(追加公演は、「どの回もいっぱいになったから」というのが理由ではないので)。みなさまのご来場をこころよりお待ちしています。


2006年04月18日(火) 「ミッシング・ハーフ」仕込み

 昨日の続きの明かりづくり。最後までを確認して、場当たり。
 照明と音響のきっかけを確認していく。
 鈴木さんが入れてくれる効果音が、芝居をぐーんとたすけてくれる。
 稽古場ではただの間だったのが、ひとつひとつ、意味を持ったものになる。そんなかんじ。
 順調にラストまでを確認して、ひとだんらく。
 舞台上は床材にクッションが入っているため、稽古場よりもずっと歩きやすい。ピンヒールが苦にならない。ヒールのあとがついたらどうしよう?というのが課題だったのだけれど、それほどでもなく。というか、置いてある椅子の脚のあとも普通についてしまう床。舞監の中西さんにヒールにパンチカーペットを張ってもらう。よりラクチンになり、ほっとする。もう、これで、駆け出してもだいじょうぶ。
 場当たり終了後、森川くんと打ち合わせ。道具こみの演出を確認しながら舞台で動いてみたいなと思ったのだけれど、結局、撤収の時間まで、楽屋でいろいろ話してしまう。僕らが演じる人物のこと。彼らがお互いに何を感じるか。何が目的かなどなど。
 毎日同じ稽古場でできた稽古はとてもよかったのだけれど、稽古場からの帰り道にあれこれおしゃべりする時間が、いつもより少なかったかもしれない。一緒に帰っても駅がすぐだから。今日はそのうめあわせのような時間がもてた。話すことでいろいろなことがみえてくるのは、いつものことだ。明日の初日の前に確認できたことがとてもうれしい。


2006年04月17日(月) 「ミッシング・ハーフ」劇場入り

 朝10時から劇場入り。ノグ、小林くん、マミィがフライングステージから来てくれている。
 照明の仕込み、そして、舞台を尺高に上げて、装置を建て込んでいく。小池れいさんデザインのこの装置は、フライングステージではいまだかつてないほどの重厚さ。ロビーで、模型を見せてもらう。赤いチャイナ服を着た僕が(劇中では着ないけど)が立ってる、精巧なもの。ロビーの照明が模型の窓から射して、何ともいえないいい雰囲気。
 実際の装置も見事に立ち上がる。床や壁の古びたかんじ、壁の柱の牡丹の彫刻までもが、とってもこまかくて、感動する。
 思い切りしめても大丈夫なドアと窓。そして、とんでもない存在感の寝椅子。
 今回の「ミッシング・ハーフ」はある意味、「毛皮のマリー」や「サンセット大通り」へのオマージュだ。「毛皮のマリー」の舞台にある「バスタブ」のような生々しさを醸し出してる寝椅子。すごくいいかんじ。森川君と相談して、普通のソファでは成立しない、座り方を考えてみる。うーん、おもしろい。
 装置ができて、照明の仕込みが終わり、夕方から明かりづくり。1場のデリケートかつダイナミック(ていうか大げさ)な照明をつくっていく。2場の終わりの微妙なアレンジについて、青木さんと相談するところで、今日はここまで。続きはまた明日。
 ここで芝居をするんだと思うとわくわくする。初日まであと2日。


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