せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年05月14日(日) 「罠の狼」稽古6日目

 自主稽古の日。清木場さんと2人であれこれ話したあと、ざっくり頭からはじめてみる。
 この稽古場は、前回来たときはとても汗くさかった。僕と清木場さんの風邪は、まちがいなくこの部屋から始まった(水木さん、津崎くんも、今風邪をひいてしまってるそうだ。もとは「エクレア」組といわれてるそうな。たしかに……。すみません)。
 今日は、なんだかとってもカレーの匂いがする。それも駄菓子やさんのスナック菓子の粉っぽいカレー。カーペットの床にねそべっていると、よりいっそう。風邪関係の何かもこうやって吸ってしまったんだろうな。匂いがしないだけで。
 水木さんが、来てくれてびっくりする。結婚式が早めに終わったのだそうで、すてきなドレスのまま。
 いつもの稽古よりも、ややフランクな気持ちのまま、水木さんに見ていてもらえて、なんだかとてもいい時間だった。
 水木さんに言われたことが、僕のなかで、ああ、そうなのかとすっきり腑に落ちて、これまで思いもよらなかったことが思えるようになった。
 短い芝居をセリフのやりとりだけじゃない、何を思ってるんだろう、この人は?ということを、ていねいにさぐりながら、作っていく。とてもぜいたくな時間。

 今日は、母の日。大がかりなものはいいやと思ったので、アーケードのケーキやさん「シュガーローズ」でなぜか売っていた、カーネーションのブーケを買う。といっても赤いカーネーションと葉っぱが一枚だけ。まあ、気持ちということで。


2006年05月13日(土) 休みの日

 「罠の狼」の台本を読み、昨日の「ブロークバックマウンテン」のことを考えている。ネットサーフィンして、いろんな人の感想を読んだり、誰かが勝手にシーンをつなげた映像をアップしているのを見てみたりする。
 昨日と一昨日と2日つづけた見た映画の余韻にひたっているような一日。
 受け取ったものをどうしたら外に出していくものに変換させていけるだろう。俳優として、作家として、演出家として。考える。
 昨日の夜、出しっぱなしで雨でずぶぬれになってしまった洗濯物を洗い直す。心配なので、今日は部屋干し。


2006年05月12日(金) 「ブロークバックマウンテン」

 朝、起きたら、鼻の奥がむずむずする。あれ、鼻血かな?と思い、鼻をかんだら、血じゃなくて、黄色い液体がさらーっと出てきた。しかも大量に。びっくりする。痛みもないので、ただただ不思議。寝ている間にたまった鼻水が出たのかな? とりあえず覚えておくためにメモ。
 北千住の駅の常磐線のホームで鳩が死んでいた。どうしてだろう?何かが絡まったりしてるのかなと近寄ってみたけどよくわからない。きっちり目を閉じて、足を縮めて死んでいる。

 仕事の帰り、「ブロークバックマウンテン」を見に行く。ずいぶん前にチケットを買って、そのうちに行こうと思いながら、今日を逃すともう見れないかもという日になってしまった。
 こんな映画です。(以下、サイトからの引用)
 「グリーン・デスティニー」「ハルク」のアン・リー監督がワイオミング州ブロークバック・マウンテンの雄大な風景をバックに綴る、2人のカウボーイの20年にわたる秘められた禁断の愛の物語。原作はアニー・プルーの同名短編。主演は「ブラザーズ・グリム」のヒース・レジャーと「デイ・アフター・トゥモロー」のジェイク・ギレンホール。男同士の純愛というセンシティブなテーマにもかかわらず2005年度の映画賞レースを席巻した感動作。

 1963年、ワイオミング。ブロークバック・マウンテンの農牧場に季節労働者として雇われ、運命の出逢いを果たした2人の青年、イニスとジャック。彼らは山でキャンプをしながら羊の放牧の管理を任される。寡黙なイニスと天衣無縫なジャック。対照的な2人は大自然の中で一緒の時間を過ごすうちに深い友情を築いていく。そしていつしか2人の感情は、彼ら自身気づかぬうちに、友情を超えたものへと変わっていくのだったが…。


 見た人の感想はいろいろ聞いていたので、そんなに期待せず。冒頭の山の景色もきれいねえと思いながら、それほど引き込まれることもなく、わあ、羊がいっぱいだ!と思って見ていた。
 イニスとジャックの出会いと最初に結ばれるまでの流れもふんふんと見守る。そんな早急なエッチってありかな?なんだかボーイズラブにありがちな唐突なインサートだわ、ありえない!などと思いながら。
 そんなふうに、ややひいたかんじで見ていたのだけれど、ある場面からくぎづけに。山から下りた二人が別れる場面、ジャックは車に乗って走っていき、バックミラー越しに歩いているイニスを見てる。イニスは、ジャックの車が見えなくなると、道をそれて、路地の壁にもたれて号泣する。とんでもないいきおいで。通りがかった男が不審に思うくらい。僕は、この「恋に落ちてしまった」かんじにやられてしまった。
 男と寝てしまったことを後悔して泣いてるんじゃなく、別れるのがつらくて、もちろんもっともっと複雑な思いがあって、泣きくずれてる。その姿の圧倒的だったこと。
 その後の展開にも、男どうしの恋愛なのに、それぞれの妻とのやりとりが多くないかしら?とか、どうして後半に行くほど、二人が抱き合ったりする場面が少なくなっちゃうの?とか、不思議(不満?)に思うことはあったものの、僕はすっかりこの映画に感動させられてしまった。
 1980年までを描いているわけだから、当然、サンフランシスコやニューヨークでは、ゲイ・ムーブメントが動きだしているはず。それでも、このワイオミングの田舎を舞台にした物語では、男同士の恋愛が全く禁じられたものとしてしか想像されない。
 妻も子もいながら、男の恋人との関係を続けるというお話が、これほどピュアな印象を与えていることに、僕は作り手の力量を感じる。決して、美化するのではなく、うまくバランスをとりながら、どうしようもなかった二人の二〇年を描くことに成功していると思う。
 冒頭の号泣の場面から、ヒース・レジャーの芝居には拍手だ。僕が、あの手のルックスに弱いというのもあるのだけれど(瞳の表情のよくわからない彫りの深い顔、そしてもごもごしゃべるかんじ、どれもみんなすばらしい)。
 ラストのシャツの話は、いかにも原作が短編小説というかんじがする。でも、なんのてらいもなく、あそこまでまっすぐに提示されると、もうそれだけでいいという気がしてくる。気持ちよく、泣かされて帰ってきた。
 きっと予想していた、批判的な気持ちになることもなく(それほどは)、この映画をつくった人たちのがんばりに感謝したいと素直に思った。


2006年05月11日(木) 「罠の狼」稽古5日目 「トランスアメリカ」 

 銀座にて。タックさんにいただいた試写状で映画「トランスアメリカ」を見る。
 「男性であることに違和感を持つブリー(フェリシティ・ハフマン)は、肉体的にも女性になるため最後の手術を控えていた。そんな“彼女”の前に、突然トピー(ケヴィン・ゼガーズ)という少年が出現。彼はブリーが男だったころに出来た息子であることが判明するが、女性になりたい“彼女”は彼を養父の元へ送り返そうとする……」
 フェリシティ・ホフマンがアカデミー賞の主演女優にノミネートされてたのは知ってたけど、タックさんに薦めてもらうまで、何にも知らなかった映画。
 とてもシンプルな気持ちで見たのだけれど、これがとんでもなくおもしろかった。
 「ミッシング・ハーフ」で性転換ということが身近になったからだろうか?
 というよりも、女性らしく振る舞おうとする努力のあとのディティールの細かさに感動する。のっけから、声のトレーニング、その場面は、ブリーの手のアップから始まる。
 フェリシティ・ホフマンは女性なのだけれど、この「転換期」にある人物の、独特なカラダをとてもていねいに作り出すことに成功している。
 その全てが、まるで「失敗しちゃった女装」に近かったり、あちこちが「うん、わかる、わかる」ということの連続だ。
 そして、息子役のケヴィン・セガース。なんてセクシーなんだろう。親しみを表すための方法として「カラダを投げ出す」ことしか思いつかない、というか、そうしないでは居られない孤独な心が、とってもきれいなカラダに閉じこめられてる。
 ストーリーも、なんでそんなむちゃくちゃな話を……と思いそうなものなのだけれど、実に気持ちよく運ばれていく。
 自分らしく生きることへの闘いは、まずは自分一人の問題で、そのことだけでも死にそうな苦しみを経なければいけないものだけれど、このお話は、その過程に家族との絆というとてもやっかいなものをどかんと落としてくる。
 登場人物はみんなどこか孤独を抱えていて、でも、この物語を通して、少しは一人じゃなくなっていくようだ。そんなところが、見終わったあと暖かな気持ちになれる理由だと思う。
 ほんとに見て良かった、いい映画。7月のロードショーが楽しみだ。
 タックさん、どうもありがとうございました。
 
 稽古前に時間が空いてしまったので、駅前のバーミヤンで早めの食事。チャーハンが油っこくて、後悔。
 昨日に続いて台本を読んでいる。さっき見た「トランスアメリカ」、その上でどう読む?みたいなことを考えながら。
 稽古場には、津崎くん、入交さん(まじりん)、それに演出助手のあかねちゃんが来てくれる。
 となりのお部屋はカラオケ。だいじょぶかしら?と心配しながらの稽古。
 でも、ずっと聞こえてくる演歌の中、かえっていつもよりも集中できたかもしれない。
 リーディングと小道具の段取りを、まじりんとあかねちゃんが手伝ってくれる。2人芝居だけど、2人だけでやってるんじゃないんだと、急に大人数な芝居をやっているような気分になる。
 今日もらった後半の部分の新しいテキストが、どうカラダになじんでくるか。
 前半にもフィードバックして、少しずつつくっていこう。
 水木さんに「そんなに一度にはできないでしょ」といわれ、あせらなくていいんだ、この人が、少しずつカラダにおちてくるのをかんじていこうと思う。
 帰り、初めてのみにいく。軽いかんじでさくっと。
 いろいろ話す。僕は稽古のあとの飲みというのが実は苦手だ。稽古している芝居の話をあれこれしてしまうことが、稽古の続きのようなノリであることにとても抵抗がある。打ち合わせするなら、お酒は抜きにしようと思う。
 今日はすっぱりと飲むことに徹する。「罠の狼」とは関係ない、芝居の話をいろいろ。みんなとはもちろん、水木さんとこうして話すのも初めてだ。ずいぶんおしゃべりさせてもらってしまう。「トランスアメリカ」のことも、「ぜひ見てね」とおすすめしまくる。


2006年05月10日(水) 「罠の狼」稽古4日目

 今日は一日、区役所へ出向。毎年この時期にやっている資料の引き写しをみっちり。合間に最上階の展望ロビーに行って、気分転換。うっすら曇った空模様。それでも、遠くまでとてもよく見える。
 「罠の狼」の稽古。今日は頭から。水木さんに、「はじめのうちは相手役をものすごく見てしまうので……」と言い訳して、ぞんぶんに清木場さんを見ながらの芝居。相手からもらってつくることを心がける。
 ずいぶん楽にいられるようになるが、それでも、あちこちでひっかかってしまう。ただつるつるしゃべってるだけだとどこにもいけない。何にもならない。
 水木さんにいろいろ質問する。実は一番ひっかかっていたことに、「なんだ、そうなんだ……」とほっとするような答えをもらい、一気に目の前が明るくなったよう。
 稽古の終わりの頃の時間は、あれこれおしゃべり。水木さんいうところの、僕の「頭と口の距離がどのくらいか」。芝居の稽古だけを効率よくするだけじゃない、こんなおしゃべりの時間がとてもおもしろい。
 帰り、仕事関係で、ショックなことがあり、ダメージを受ける。どうしようかと途方にくれる。
 暗い気持ちのまま、芝居のことを考えていく。恋をする気持ちのことを考える。恋が終わる苦しみと痛みのことを考える。
 誰かを好きになって涙を流したのは、いつが最後だったろうとふと思う。切実な、この人を失いたくないという思いが、僕のなかにどのくらいあるんだろうと。
 その遠さに気がついて、ややショックを受ける。そして、ため息をつく。
 傷ついてなんかいられないから、恋はしない。もちろん、人のことは好きになるけど、かなわなかったからって、ダメージなんか受けない。そうやって、自分のことを守ってきた。
 そんなことを繰り返しているうちに、傷ついて涙を流すような思いは、とてもとても遠くなってしまったようだ。
 稽古をしながら、一番足りなくて一番遠いのは、僕のなかの傷つくことをためらわないほどの強烈な思い。もしくは、そんなまるで血を流しているような心かもしれないと思う。
 過去の恋愛の記憶を総ざらいする。舞台で演じてきた恋する役、特に恋に破れて傷ついてる役のことを思い出す。コクトーの「声」をやったことを思いだし、プーランクのオペラを聞いてみる。
 中島みゆきが、今のようなしたり顔の人生の応援歌じゃなくて、まだ、恋の恨みつらみを唄ってた頃、一緒になって涙を流していたことを思い出す。あの頃の僕はどこにいったんだろう。
 そんなことを考えながら、セリフをさらっていたら眠れなくなってしまった。ぐずぐずの涙ながらのセリフを、かなりいい気持ちでぶつぶつしゃべって、中島みゆきを聞いたあとのようにすっきりする。
 自分をかわいそがることとは違うはず。自分の中に傷つく心がまだあるんだということを再確認した、そんな夜。


2006年05月09日(火) 「サラリーマン体操」

 仕事に行く。連休中もほぼ寝ていて、すぐに風邪を引いてまた寝ていたせいか、カラダが軽くなった気がする。体重計に乗ってみたら、「おおっ!」と驚くほどではないが、確かに減っている。最近では一番やせてた去年の「二人でお茶を」のときよりも体重は少ない。見た目と気分では、ほんとうにそうなの?となんだか信じられないかんじ。このまま維持して、さらにダイエットして、「ムーンリバー」につづけたいもの。
 夜、NHKの「サラリーマンNEO」を見てしまう。前にちょっと見たときは、あまりのべたさ加減にちょっとひいてしまったのだけれど、今日は笑ってみている。
 コンドルズの面々が、「サラリーマン体操」をやっている。学生服をそろいのスーツに着替えて、司会は近藤さん。大好きな鎌倉さんの濃いヒゲと長い手足に萌え(笑)。このコーナーだけの総集編とかやってくれないだろうか。「ピタゴラスイッチ」の「10本アニメ」と同じくらい好きかもしれない。


2006年05月08日(月) ダウン

 朝になっても熱が下がらないので、仕事を休んで一日寝ることにする。
 食欲もないので、紅茶ばかり飲んでいる。のどはずいぶんラクになったが、去年のように腫れてしまったらどうしようと、ドキドキしている。
 晴れ間がのぞいたかと思うと雨が降ったり、窓の外の天気もおちつかない。
 本でも読むかと泉鏡花の文庫本を読みかけるが、活字が目に痛いようで断念。結局、どうでもいいビデオ、体調の悪いときに見ることにしているビデオを流しっぱなしにしてうとうとする午後。キャシー・リグビーの「ピーターパン」のフライングのシーンで条件反射のように涙を流し、坂東玉三郎の「古典芸能図鑑」の美しい映像にいやされる。
 夕方、熱はほぼ下がり、食事をする。汗をいっぱいかいたので、着替えをして、また横になる。
 この間、無理矢理ブラシをかけたうちの猫は、すっきりと細くなったようだ。外から小雨に濡れて帰ってきて、枕元で寝ている。
 パソコンの壁紙に、「ゆずてん」のゆずの画像を使おうか思い、一度、アレンジしてみるが、あまりにまっすぐこっちを見ているので、やっぱりやめておく。なんて人間くさい猫なんだろう。


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