せきねしんいちの観劇&稽古日記
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マチネ前に、ジェストダンスのクラスのパフォーマンス「アンテリア」のリハーサルを見せてもらう。 初日に見せてもらったときよりも、ずいぶんまとまってきている印象。ジェストダンスは全く同じ振りを全員で踊るんじゃなく、それぞれの思いが振りになってる。ある種、そのバラバラなかんじが、集団になると、不思議なアンサンブルになってくるのがおもしろい。 マチネ開演。シンプルに演じることというより、ただそこにいることを心がける。いつものように。ただ、なぞってはいけないと思うことがつまりはなぞってしまうことなんだということを、芝居しながら(芝居を見ながら)思ってしまった時点で、ちょっと気持ちが揺れてしまったかもしれない。 休憩時間、檀くんから、飼っている猫のオスカーくんの写真集を見せてもらう。代々木公園で撮影した写真がおしゃれなアルバムに入ってる。とってもかわいい。みんなで「かわいい!」(語尾上げ)と言いながら拝見する。 ソワレ。満員のお客さまを前に、やや「やりにいって」しまった感があると反省。気持ちはつくるもんじゃなくて、ただ思ったり感じたりしていればいいんだと、稽古の間にあんなに思っていたのに、作ろう作ろうとしてしまう気持ちと結果たたかってしまったようなかんじ。こんな気持ちにどう対応するのかという稽古までは、まだしてなかった。 今日のマチネから清木場さんの分も食べてしまっているエクレアでお腹がいっぱいというのも、微妙に集中の度合いに影響したかもしれない。 それでも、自分らしくこの芝居に幕を降ろすことができたのではないかと思う。これまでやったことのない芝居のつくりかたからの新鮮な発見、そして、自分自身についての気づきも大きかった。アンのみなさん、スタッフのみなさん、ご来場いただいたみなさん、どうもありがとうございました。 終演後、ノグや森川くんにごあいさつ。 さっそくバラシ。さくさくと。 バラシのあと、打ち上げを失礼して、仕事に行く。昨日の予定が、今日にずれこんでしまったもの。 夜の芝居の微妙な手応えと、打ち上げをすっきり終えてないせいで、仕事中もざわざわと落ち着かない。 結局、始発近くまでかかってしまい、一人で食事をしてから、始発で帰ってくる。 カラダは疲れているのだけれど、頭がもっともっとと言っている、そんなかんじ。
マチネ。どうも腹の具合が悪い。冷房がきいてしまってるんだろうか? 何度もトイレに行ってしまう。緊張してるんだろうか? こんなの初めてだ。 開演前、僕は舞台の壁をずっとなでている。劇場の壁にもたれたり抱きついたりしていると、劇中で僕が別れた男の思い出に触れているような気がして、その冷たさと、人じゃないとか、もういないとか、これはただの壁じゃないかと思うたびに、今回の澤渡くんに近づいていけるような気分。マイズナーでならったことの拡大解釈、僕なりのプリパレーション。 本番は、いいかんじで舞台の上で生きていくことができた。あ、できてると思っておだつこともなく、ただ思うまましゃべり、その場にいることが。 ただ、ラスト近く、ずっと首にかかってなければいけない首つりのビニールヒモがとれてしまった。稽古場でも一度もなかったアクシデント。拾ってかけなおすことは絶対に無理で、どうしようかと思う。清木場さんは、手に取るし、津崎くんには最後に外してもらわないといけないのに。 どうぞ傷跡をなでて!と清木場さんに、どうぞあることにして外して!と津崎くんに「念」を送る。気持ちが届きますよう。 と、二人とも、ないことがあたりまえのように芝居をつづけてくれる。感謝。 床に落ちっぱなしのヒモをラストのタブローに向けての片づけの最中、なるちえがこれまたあたりまえのように拾っていってくれる。感謝! と、彼女がスプーンを一本、カタリと音をさせて落としていったので、「ご恩返し」のつもりで足元にそーっと引き寄せて隠した。やった!と思ったら、なるちえは、下手からもう一回出てきて、僕の足元からスプーンを拾い上げて片付けていった。余計なことしたなあと反省。 終演後、楽屋でひといき。 澤唯くんからの差し入れをみんなでおいしくいただく。 ソワレ。ラストシーン、向き合って立った清木場さんがほろほろっと涙を流して、びっくりしてしまう。その後の僕の気持ちもそれを受けてのものになった。いつもとおおすじは変わらないけど、とっても納得。 終演後、中日乾杯。差し入れのラム、ロンサカパをおいしくいただく。ラムはやっぱり油断がならない。どんなふうに帰ったか、すぐには思い出せないくらい、よっぱらって帰ってきた。
2006年06月02日(金) |
la compagnie A-n「小峰公子をよみおどる+罠の狼」初日 |
マチネの初日は新鮮だ。 劇場になじむことと、人からもらうことを大事にしようと心がけて、いつもよりも謙虚な気持ちで舞台に立つことをこころがける。そんないかたが僕にはとても新鮮にかんじられる。 終演後、マミィ、宇田くん、桜澤さんにごあいさつ。 間の時間にパソコンのモジュラーケーブルをなくしてしまったようなので(バッグをひっくり返したときに)、買いに出かける。100円ショップではみつからず、結局さくらやまで。人でいっぱいの新宿にちょっと酔ったような気分。 ソワレも無事終了。 終演後、見に来てくれた、樺澤氏、阪口さん、記生ちゃん、小林くん、谷岡さんにご挨拶。 阪口さんは、8月の「ムーンリバー」に客演していただく役者さん。はじめましてのご挨拶。そして、記生ちゃん、小林くんを紹介する。 劇場で初日乾杯。外に出かける予定がなくなったので、腰をおちつけて、たくさんおしゃべりする。それでも、終電に追われるように帰ってくる。
小返しの稽古をして、今日はゲネプロ。本編の開演前に上演されるジェストダンスのクラスのパフォーマンス「アンテリア」の舞台稽古も。両方に出演する清木場さん、あかねちゃんたちは大忙しだ。 照明とのかねあいや、小道具の扱いなどなど、まるで稽古場のようにからんとした小さな舞台は実はとても緻密に組み立てられている。 「アンテリア」の出演者のみなさん、公子さん、もろさんが見ていてくれるなか、ゲネプロ開始。 1時間半の上演時間、全員が舞台上にいるという構造は、なんだかいっそとってもすがすがしい。 あきらかにセリフを言っているときよりも言ってないときの方の時間が長くて、それもただ見ているだけでなく、見て聞いているそのことが、人物の中に積み重なっていくそんな時間。 違うところに行こうともなぞろうともしないで、最後の場面に行き着くことができた。 ゲネ終了後、明樹さんとおしゃべり。芝居のことをいろいろ。 今回、ほんとに不思議な感覚で芝居をさせてもらっている。力を入れて頑張るというのではない、集中のしかたが、とても新鮮だ。 いよいよ明日は初日。お客様を前に、どんなことになるか楽しみだ。 みなさんのご来場をお待ちしています!
2006年05月31日(水) |
「罠の狼」稽古16日目 |
場当たりのつづきと、小返し。そして、通し稽古。 舞台上の小道具の位置とだんどりにやや戸惑いながら、だんだんカラダをなじませていく。 劇場の壁や床をなでたり、ちいさなキズを見つけたりしている。この劇場と仲良くなりたいと思うときに、よくやることだけれど、今回は、劇中の「失った恋人」のイメージも重なって、壁の角にすがりついたりしている。かなりあやしい役作りかもしれない。 稽古に参加できない檀くんの代役できてくれた聖太くんが、今日の通しから登場の檀くんに段取りを引き継いでいた。 昨日の稽古では、すっかりセリフを入れての代役の芝居、すごいなあと思って見せてもらっていた。 おしゃべりしていたら、友人の高山光乗くんと「グランドホテル」で共演しているとのこと。そういえば、テレビでやっていた「グランドホテル」の特番で高山くんの姿を探していたとき、よく似た、背格好の彼を見ていたような気がする。 稽古場での代役をきっちりつとめて、引き継いだあと、通し稽古を客席から見ている彼の姿は、なんだかとてもかっこよかった。 通し稽古は、全体の流れ、というか、僕の役の気持ちの流れがわかって、最後こんな気持ちになるんだということに、清木場さんと二人、納得する。こうなるんだねと。 この気持ちにならなくちゃいけないから、そこまでどう持っていくかということではなく、積み重ねていったら、こうなったということを、二人で大事にして作っている、僕と清木場さんの「エクレア」だ。 帰りの電車で、今日の芝居をふりかえし、もう一段、からだになじませておく。
2006年05月30日(火) |
「罠の狼」稽古劇場入り |
今日からミラクル入り。当初の予定が一日前倒し。僕は、仕事のあと、遅れての劇場入り。すみません。 仕込みがすんだあと、場当たりをしていく。 「ミッシング・ハーフ」の稽古ですっかりおなじみだと思っていた空間だけど、客席をつくって、照明が吊られると、まるではじめてのような新鮮な印象。 稽古場でのものとは違う、本番用の小道具や、実寸での位置の関係にとまどいながら、頭から芝居をからだになじませていく。 終了予定時間を過ぎても、できるところまで行こうということになり、終電ぎりぎりまで場当たりをつづける。 僕と同じくらい終電が早い清木場さんと二人で駅まで走る。 一人になって、今日も電車の中で、今日の芝居のことを考える。何をやっただろうかと。水木さんからのダメだしを確認する。 いつもフライングステージを見に来てもらっているみなさんに、どうぞ見に来てくださいというご案内のメールを送る。 いつものフライングステージでの僕とは全然違う芝居をしているなあという実感と確信がある、今回の「罠の狼」。多くの人にぜひ見ていただけたらと思う。 昼間の待ち時間に、明樹さんと話す。今回の芝居のこと、いつもと違う作り方をしている気がするということ、それをとても楽しませてもらっているということ。マイズナーのワークショップとの関連などなど……。 芝居の中で登場する小道具の週刊誌。これまでは普通の週刊誌をそのまま使っていたのだけれど、小道具として白い紙をとじたものを作った。芝居の中で使ってみたら、イメージのわきあがりかたが全然ちがうことにおどろく。なぞるんではなく、今、思ったことを自然に大事にできるカラダになっているんだなあとおもしろい。
2006年05月29日(月) |
「罠の狼」稽古14日目 |
ファームの後半からラストまでを確認して、通してみる。 全員そろって全部通すのは初めて。 スタッフのみなさんが見てくれている前で、やや緊張しながら。 エクレアの後半は、途中をずっと見ていた気持ちを抱えたまま始めることになるので、通してみないと正直どうなるかわからない。 終わって、あ、こうなんだとわかったような気持ち。 僕も清木場さんも、こんなことするの初めてだよねということをいろいろしあい、それを受け止め、返していきながら、それでもこれまでとはあまり違わない気持ちでラストにたどり着く。 帰り、新宿まで檀くんとおしゃべり。なるほどねと思うことたくさん。 一人になって、思うままにやってしまった、今日の芝居のことを確認していく。 なんでああなったのか。僕は、思いつくまま、感じるままにやったことでも、覚えていられなくてはいけないと思う方だ。きっちり、覚えて、その次、またやるときのよすがにする。なぞるということではなく、気持ちの流れを確認できるだけの余裕はいつも持っていたいと思う。 いくつかのポイントで、どうしてこうしゃべるのかということが、いつもより自分の中で明確になっていたんだということがよくわかった。 後半のエクレアは起伏の少ないエピローグのようなものだと思っていたのだけれど、ちっともそうじゃないんだということに気がついた。気持ちがあんなにどんどん動いていったんだもの。 いつか清木場さんと、自主稽古のあいまに、「稽古ってしてみないとわからないもんだね」と話した。ほんとにそうだ。一人で考えていてどうにもならないことも、稽古場で実際にやってみると、想像もしないことが見えてくる。 初日まであとわずか、わくわくしながら、芝居することを楽しませてもらっている。感謝。
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