せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年06月19日(月) カスタネット

 朝、新越谷から南越谷への乗り換えのコンコースで、ミュールをはいた女子がものすごい音を響かせながら、階段を降りていた。
 ハイヒールのコツコツいう音とは似てもにつかない、カスタネットを鳴らすような音だ。
 ミュールで階段を降りると、ミュールの後半分が足から離れて、先につま先が着地、続いてヒールが地面に当たって、「わざと鳴らしてんの?」と聞いてみたいくらいのいい音が出る。
 このところずっと調子が悪い左耳に響いて、ほんとに頭痛がして気分が悪くなってきた。
 つま先だけでひっかけて履くミュールはデザインとしてはかわいいものだけれど、こんなふうに出歩くときに履いていいもんなんだろうかという素朴な疑問がわく。階段じゃない平らな道を歩いているのを見ても、踵がついたり離れたりしながらの歩き方は、なんだかとってもだらしないおしゃれのような気がする。
 前に浴衣に下駄を履いて出かけたとき思ったのは、下駄は舗装された道路で履くものじゃないということだ。もともとはやわらかな地面を歩くための履き物だった下駄は、アスファルトやコンクリートの上を歩いているうちにものすごいいきおいで歯が削られていった。
 ミュールのかかとは、そんなふうにけずられてしまうようなやわなものじゃないから、ものすごい音が出るんだと思う。
 そばで聞いてても具合が悪くなるんだから、履いてる本人はどうなんだろう?
 カツンカツンと当たるあのかんじは、絶対にカラダによくないと思うのだけれど。

 BSジャパンの「未来図鑑 〜NEXT BREAKER〜」のインタビュー撮り。樺澤氏と待ち合わせ@ミラクルにて。
 このあいだまでアンの公演で通っていたミラクルで、また「ミッシング・ハーフ」の衣装とメークをしている。不思議な感覚。ここはホームグラウンドか? いや、いつもお世話になってしまって、ほんとうにありがたい。感謝だ。
 3Fの楽屋で着替えとメークをすませて、4Fまでハイヒールで上がっていく。朝のミュールの音ほどじゃないけど、やっぱりカツカツ音をさせて歩くと頭にひびいて、ちょっとくらくらする。
 楽屋は、新しいスリッパや座布団が置かれて、前より「楽屋度」が上がった印象。ミラクル自体も、前よりもいいかんじに汚れてきたというか、なじみやすい空間になってきた気がする。
 番組の構成は「ミッシング・ハーフ」の舞台の映像と、今週末スタジオで収録するトーク。今日のインタビューは、冒頭の挨拶部分とのこと。
 事前にもらっていたアンケートに沿った質問なのだけれど、間に大学の授業が入ったりしたせいで、この質問にはこう答えたという記憶があいまいで、やや戸惑う。結局、その場で思ったことをそのまま話させてもらった。
 きっちり女装しているので、このあいだの授業のすっぴん(というかヒゲ)での話とは少し気分が違う。別に演じているつもりもないし、どっちも同じ僕なのだけれど、今日の方が、よりていねいに話ができたかもしれない。僕にとっての女装とはそういうことか。


2006年06月18日(日) 百雀会@浅草公会堂

 まみぃこと石関準が出演する舞踊会「百雀会」@浅草公会堂へ。
 彼は、「はぐれこきりこ」という曲で、女形の踊り。
 春謡流の家元から「役者の踊りを踊りなさい」と言われたというだけあって、彼の踊りはちゃんと芝居になっていた。
 今日が初舞台の彼の踊りをもちろん初めて見る客席のおばちゃんたちも、ワンコーラスが終わった間奏で拍手をしていた。すごいことだと思う。次の舞台がとても楽しみだ。
 出番のあと、楽屋口でまみぃを囲んでしばしおしゃべり&撮影会。ちゃんとしたこしらえは「贋作・大奥」でも見ているけれど、あのときよりもずっと着物もかつらも板についているかんじ。
 公会堂を出て、三枝嬢、トシくん、小林くんとお昼を食べる。どうしようかとあちこち歩いたわりには、結局、大黒屋で天丼。
 みんなと別れて、僕は大門さんのお宅にお見舞いにうかがう。手術が少し延期になったので、しばらく退院しているとのこと。篠原演芸場の前で電話をして迎えにきてもらう。
 この間まで入院していたとは、来週手術の予定だとは思えない、元気な姿と声にほっとする。
 「ムーンリバー」のフライヤーとスケジュール表を渡して、芝居の話や今日の舞踊会や浅草のことなどを、しばらくおしゃべりする。
 いただいた地元の御手洗団子と草餅が、とってもおいしかった。


2006年06月17日(土) 発送作業

 昼前に家を出て、今日はダイレクトメールの発送作業日。
 駅前のコンビニのコピー機でいつまでも延々と地図をコピーしているおじさんにイライラさせられるところから始まり、どんどんストレスがたまり、へとへとになる。
 用心のため新たなカートを購入して、その時点で大荷物をかかえながら移動。文面をキンコーズで出力して、コピー用紙5000枚を買うが、500枚の紙包みでは運びにくいので、500×5の箱入りを探して池袋を歩く。
 メジャーリーグの事務所でフライヤー2500枚をピックアップして計7500枚の紙を2つのカートでひっぱりながら印刷と折りの作業のため、三軒茶屋へ。この時点で40分の遅刻。だって、歩けないんだもの。電車の乗り降りも、発車を微妙に待ってもらいながらだし。
 三枝嬢と2人で作業をして、なんとか終了。やっぱり2人でできると思ったのはあさはかだったと反省。
 その後、メジャーリーグの事務所へ。トシくん、宇田くん、樺澤氏、それに遅くなって早瀬くんと小林くんが来て、総出で封入と発送の手配。
 「ムーンリバー」に客演してもらう羽田真さんに事務所に来てもらって、芝居についての打ち合わせをする。お願いしたい役どころなどを、みんなが作業している傍らのソファに座って。テレビの「徹子の部屋」状態で、みんなはぼくたちのトーク(?)を聞きながらの作業。
 郵便番号ごとの区分けに手間取り、終了したのは11時過ぎ。
 準備万端で、いつもよりずっとラクに終わるはずと思っていたのだけれど、実際は一人でも欠けていたら終わらなかっただろうというくらいの大仕事だった。
 終電で帰って、最寄り駅を降りたら、雨に混じって潮の香りがした。越谷なのになぜ海のにおい?と思うがまちがいない。もしかすると、梅雨前線が南の海の暖かい空気を運んできてるのかもしれない。
 家に着いて、トイレに行き、朝から今まで一度も用を足していないことに気がつく。帰ってくる途中の駅で、喉が渇いて、お茶やらアイソトニック系やら飲みまくっていた。今日は暑い一日だった。ずいぶん汗をかいたんだなあと振り返る。


2006年06月16日(金) 準備いろいろ

 土曜日の「ムーンリバー」のご案内ダイレクトメールのための準備作業。
 今回、先行予約のご案内をするために、いつもは顔合わせをしてから送っている劇団員の分のDMもいっせいに発送してしまう。そのための一人一人の案内文面の作成。
 こういう事務作業が僕はきらいじゃない。たんたんとすすめればちゃんとできあがっていくものは、気持ちをとてもおだやかにしてくれる。
 何もないところから何かを生み出すことに疲れると、僕はこの手の仕事に逃げてしまう。逃げ続けているわけにはいかないので、やるだけやったら帰っていくのだけれど。
 先週、家で大活躍だったホームベーカリー。ここ数日、新たなパンは焼かれていない。もう、飽きたのか?とややあきれてしまうが、湿っぽい陽気なので、そう次から次へと焼いて、カビさせてもいけないという母親の配慮かもしれない。
 キッチンには、職場の観劇会で行ってきたという三越劇場での歌舞伎公演のおみやげがいくつか。実演販売していたというバームクーヘンやジョアンのミニクロワッサンやら。これがなくなったら、また復活するんだろうかパンづくり。


2006年06月15日(木) 大学で授業

 高校時代の恩師、中島浩籌さんの法政大学での授業にゲスト講師として話をしにいく。
 2年ぶりの授業。教職課程をとっている学生さんたちに、僕のゲイとしてのライフヒストリーを中心にあれこれ話す90分授業を2コマ。これまでは1回でおさまったのに、今年は学生が増えたのだそう。対する100人×2回。
 2時限で50分話し、30分の質疑応答。100人にむかって話すよりは、質問してくれた相手に向かって話す方が、ちゃんと届く言葉を発することが出来ているような気がする。
 昼食をとりながら、ゼミ室で授業後のフィードバック。学生さんを交えて。
 4時限の授業でも50分話し、30分の質疑応答。
 昼休みと実質3時限目の間もまるまるしゃべり続けてしまったので、始まった時点で僕はかなりへろへろになっていた。内容も2時限目とほぼ同じものをと思ったら、なんだかなぞってしまったようなかんじになり、話し終えた後の気分は微妙。
 それでも、学生さんたちの反応は、午後の方がずっとよく、また多くの人たちと一緒にゼミ室でおしゃべり。5時限目の終了のチャイムまで。こんなにしゃべり続けたのはひさしぶりだ。
 年に何度かある自分について話す機会は、今の自分がどこにいるのかを確認するとてもいい機会だ。今日もとてもいい時間をすごさせてもらった。
 それにしても、教師というのは大変な仕事だとあらためて思った。こんなしゃべり続けの毎日を日常にしているわけだから。
 富士見丘小学校での授業よりも今日の方が疲労感が深いのは、リアクションに関係なく、しゃべり続けるという「講義」のスタイルだからだと思う。
 今日も講義で話しているときより、質疑応答、その後のフィードバックの時間のほうがカラダも気持ちもずっとラクだった。
 小学校では子ども達の反応をちゃんと見ながらやってるからかなと思い、今日の授業を学生さんたちの反応を意識しないですすめることに、なんの疑いもなかったことに気がつき、愕然とする。だって、見てたら、その時点で臆してしまいそうだったんだもんと思うが、やっぱり反省する。次回はきっと!


2006年06月14日(水) プラネタリウム

 来週のテレビの取材のために、両国の倉庫に置いてある「ミッシング・ハーフ」の衣装をとりにいく。
 そのまま、階上の森川邸におじゃまする。コロッケをさかなに日本酒を飲み、おしゃべりする。芝居のこと、これからのこと、などなど。
 美猫のデリ子さんは、また新たに毛狩りをほどこされて、すっかり夏仕様。抱き上げてもいやがらない、とても人なつっこい猫になっている。前はこんな猫じゃなかったのに。
 おとなしく抱かれながら、誰もいない部屋の片隅や天井の一角をじっと見つめているデリ子さん。やめて、こわいから!と言うがデリ子さんには通じない。
 本棚にあった「大人の科学」の付録のプラネタリウムを見せてもらう。本屋で買おうかどうしようか迷って、結局、買わなかったもの。
 豆電球の光で天井がいっぱいの星空に変わった。プラネタリム界の革命児、メガスターの大平貴之さんによる満天の星空は、星がありすぎて、かえってありがたみがなく思えてしまうほどだったけど、四角い天井にうつる星々はやっぱりとてもきれいだった。
 森川邸の近くの気になるコインランドリー「ちびた」が、また模様替えをしていた。ゲーセンのゲーム機風のディスプレイがショーウィンドウに飾られてる。電飾が光ってきらきらしているだけで、だから何?と聞いてみたいかんじ。
 道路に面した高いところに「自販機80円〜」という電灯の入ったりっぱな看板が取り付けられている。前に来たときはなかったはず。80円の自販機なんて、ただでさえ儲けがないだろうに、その上、このお金がかかってそうな看板はどういうわけだろう。ますますよくわからない。


2006年06月13日(火) 聖ルドビコ学園「ひめゆりの花をゆらす風」

 桜木さやかさん作・演出・主演の聖ルドビコ学園一学期生徒会公演「ひめゆりの花をゆらす風」@サンモールスタジオ。
 「ミッシング・ハーフ」以来のサンモールスタジオ。同じスタイルの客席のつくり。思うこといろいろ。
 ひめゆり部隊の思い出を語る老婆の回想から、当時の女学生たちの芝居に一気になだれこむ。その先のお話は、女学生の一人が書いている「お話」の話。ひめゆり部隊が夜は遊郭に働きにでていて、そこには不時着した特攻隊の生き残りがやってきて……という、とっても荒唐無稽なお話。女学生が書いている「お話」という枠組みがあってこそ成り立つんだということを百も承知でやりちぎっているのがすがすがしい。
 歌あり、踊りありのミュージカル仕立てで、女子も男子(聖アントニオ学園の生徒さんたち)もかっこいいんだけど、決まりすぎない、そこはかとない脱力感がいい味になっている。
 最後に、劇中劇が終わって、戦争末期の現実に戻るあたりで、この荒唐無稽なお話の切実さがちゃんと胸に迫ってくるのが新鮮だった。
 聖ルドビコ学園の「生徒会の公演」という枠組みも、じつにいさぎよくておもしろい。構成の根本が、聖ルドビコ学園の生徒たちが修学旅行で訪れた沖縄というところから始まるのもユニークだ。
 たとえば、この芝居を、40代になった彼女たち彼らが演じているのは、想像しづらい。だからこその、3年間の在学中にやっているんだというわりきりかたがとてもステキだ(卒業しちゃったらどうするんだろう?とは思うけれども)。
 終演後、樺澤氏とうちあわせ。週末のDMの発送の件、来年の企画などなど。


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