せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年10月14日(土) |
宇宙堂「夢ノかたち」第二部「緑の指」 「許しつづける女たち」稽古 |
マチネの宇宙堂公演「夢ノかたち」第二部「緑の指」@シアターグリーン 8月の第一部に続く、連作の完結編。今回の舞台は、1983年の池袋。えり子さんのアパートの窓から見えたというサンシャイン60がそびえる空を背景にしたアパートの屋上にやってくる人々。 第一部の登場人物がきっちり年をとっていて、時代の流れをかんじさせる。そのなか、ちっとも変わらない少年のままのシマオが、トタンで葺いた物置の屋根に登場した姿に感動する。まるで、演劇の神様のようだと思った。劇中でも「神の使い」だという役だけれど、このシアターグリーンという劇場の屋根に降りた神様のように見えた。やせて目だけキラキラしている姿。 記生ちゃんは、当時のえり子さんをほうふつとさせる鯖子役。劇団の旗揚げ公演の台本が書けないで苦悩している姿、劇団員に責められ、励まさせる姿を笑いながら、ほろっとする。 70年代、80年代の小劇場のスタイルを21世紀の今から振り返る。ひやかし笑いながら、でもその熱さがなつかしく思えてくる。熱さをなんのてらいもなくそのまんま演じている宇宙堂の役者達がとても愛しい。 静かな等身大の現実的な演劇が多いなか、夢を見ないで何が演劇だといわんばかりのこの熱さが、じんわりと伝わってきた。 前回の白萩ホールの寸法で生き生きしていた役者達が、今回、シアターグリーンの(やや)大きな舞台でもくっきりした輪郭をもって登場しているのがうれしい。若手の劇団員のみなさんも、実におもしろい役者になったと思う。えり子さんはいい育て方をしたなあと、劇団ってこういうものなんだなあと思った。 終演後、ノグと裕子さんに声をかけられる。ノグには、初めての外部の作演出でもっと体型が変わってるかと思ったら「太ってもやせてもいないでほっとした」と言われる。 記生ちゃん、えり子さんにご挨拶。お疲れさまでした。大阪公演の成功をお祈りしています。 池袋までノグたちと話ながら歩く。最近見た芝居の感想などなど。 夜は稽古。 今日は6場の稽古の予定。少しセリフを直そうと思って、ずっと考えていたのだけれど、これを入れようというのを昨夜思いついた。でも、あともう一つが決まらない。もんもんと山の手線の中でノートに向かうが、途中の日暮里で降りて、喫茶店でちょっと落ち着いて考える。思いついたセリフを入れてみたら、前後の流れも追加したくなり、結局大幅な修正に。パソコンで入力して印刷する時間がないので、台本の裏にサインペンで書いて、コピーをとることにした。 稽古場に到着して、まずはやってみる。芝居の着地点がより明確になった印象。 動きの確認をおおざっぱにしてから、くわしくは明日さらに作り込むことにして、通し稽古の準備。 音響の齋藤さんが来てくれての通し。衣装もあり。 みんながやや余計にがんばってしまったかんじ。一人一人で芝居をしてしまって、やりとりが成立しない印象。まあ、こういう日もある。 自分がどう演じるかではなく、どうやりとりするかが大事なんだということ、芝居は役者の中ではなく、役者同士、役者と観客の間にあるんだよと話して、今日はおしまい。
2006年10月13日(金) |
「許しつづける女たち」稽古 |
午後からはスミケン、みかちゃん、あっくんの場面を中心に。ぐーんとおもしろくなった。 夜は衣装パレード。みんながそれぞれ持ち寄った衣装を確認していく。 普段着ばかりが登場するなかでさりげなく卑怯な(!)服も登場。なんでそんなのもってるの?などと言い合いながら。 今日も長時間の稽古。演出は、自分が演じるより余計に疲れるような気がするんはなんでだろうと思っていたのだけれど、具体的な言葉で伝えるということの大変さなのだと気がついた。作家はセリフを書いて、そのやりとりから浮かび上がるもものが伝わればいいと思っているし、役者は身体を使って言葉にならないものを伝えることができる。でも、演出は、徹底的に言葉だ。言葉にならないものを伝えてと、言葉で伝えるのはとても難しい。抽象的なイメージを伝えて、あとは役者に任せてしまうというやりかた、演出は交通整理だというやりかたが、僕にはよくわからない。台本を書いているせいかもしれないけど、もっともっとと思ってしまう。8月のリーディングでは演出で声を枯らしたし、今回も帰りの電車ではくったりしてしまう。作演出だから、ちょっとラクかな・・と思っていたのは大間違いだった。覚悟を決めて、これからの稽古終盤にのぞもうと思う。
2006年10月12日(木) |
「許しつづける女たち」稽古 かわせみ座 |
昨日の通し稽古を踏まえての小返し。頭から、ていねいに。 これまでとは違ったダメの出し方をする。最初場面だからこうしてほしいとか、実はこの人は、この人についてどう思ってるんだよね、きっと、という確認をもろもろ。 きっちり稽古を積み重ねてきて、ふっとやりとりが惰性になってしまう、そんな時期かもしれない。それまで伝えたい、相手に訴えたいという思いがあったから成立していたいくつかのことが、微妙に成立しなくなっている。外側をなぞるんじゃなくて、気持ちの変化をきっちりおさえていかないと。昨日と同じことをやろうとするんじゃなくて、違うことをそのときそのときどきやっていこうと思いながら、結局は同じやりとりが成立するのが、いい稽古をしたということじゃないだろうか。そんな話を稽古の合間にしてみる。 稽古のあとは、篠原さん、平田さん、前田先生、田中先生と待ち合わせして、かわせみ座さんへうかがう。 ぼくと篠原さんは、その前に打ち合わせを、こんな喫茶店はいるの久しぶりだなあなかんじのお店で。 かわせみ座さんは、とてもユニークな人形劇団。富士見丘小学校の舞台に登場する犬の造形についての相談。 山本さんが、新しく、犬の胴体と足をつくってくれていた。いろいろな人形たちを見せてもらいながら、実現可能かどうかをいろいろうかがう。 見せていただいた、ロバの人形がすばらしかった。木で出来た黒目が大きい、やや無表情なつくりなのだけれど、山本さんが手にとって動かした途端に、生き始めた。感動して泣きそうになる。命ってこういうものなのかもしれない。人形を見ながら、命を感じる。 具体的な話はもう少しつめなければいけないけれど、劇中に登場する犬のイメージは固まった。あとは、どう作っていくか、それが問題。
2006年10月11日(水) |
富士見丘小学校演劇授業 「許しつづける女たち」稽古 |
午後の授業。今日のテーマは「気がつく」。 「あ」「何?」「ほら」「ほんとだ」というセリフを決めて、何かに気づくという場面を演じてもらう。 その後、先週につづいて、「光速のマシーン」。新らしい場面が加わった。 みんなで読んでいく。より具体的に演じることのおもしろさを感じてもらう。 最後の場面で、あ!と驚いた彼らは何を見たのか、即興でやってもらおうか・・という台本だったのだけれど、そこまでは行けず。今日は、全員で読んでみる授業に。 青井さんから。「セリフがなくても、ちゃんといる人物が後半いなくなったのが残念だった。俳優は、どんな役でも演じる。人間でないものまで。でも、男は男役、女は女ということにはどうしてもこだわってしまいがち。それを今日のみんなは関係なく、演じていってくれた、それはとてもすばらしいことだと思う」と言っていただく。
夜は稽古。鎌田の稽古場。 竜太郎さん、舞台監督の田中さん、小林さん、照明の佐々木さんたちが来てくれた。 小返しの後、通し稽古。6場はまだきっちり作っていないので、前回同様、どういうふうにラストにたどりつくのかを確認していく。 稽古場がとても声の響くところで、やや芝居が成り立ちにくい。セリフはちゃんと相手に渡して、と言い続けてきたのだけれど、部屋の反響を考えてどうするかというのはとても難しい。それでも、とにかく通してみる。前回とほぼ同タイムで終了。 細かくダメを出す。小返しは明日以降。 バスで二子玉に出て、スタッフ打ち合わせ。照明の鈴木さんは、今、円の「ロンサムウェスト」についている。出演メンバーは、なつかしい同期の面々。なんと見に行きたいのだけれど、ちょっとむずかしそうだ。 竜太郎さんから、もらった今回の音響プラン。夜中、鈴木さんに電話して打ち合わせ。
2006年10月10日(火) |
「許しつづける女たち」稽古 |
5場と6場の前半。ミカちゃん、スミケン、あっくん、タマキちゃん、リマちゃんで抜き稽古。 一昨日の通し稽古で見えてきたいろいろを確認しながらつくっていく。 仕事のあるミカちゃんにあわせて、みんなで早めにあがる。 いい天気で気持ちがいいのだけれど、やたらくしゃみが出る。風邪の引きはじめか? 長袖だとちょっと暑いのだけれど、寒気もしたりして、ずっと鼻をかんでいる。 帰りの電車で爆睡して、早めに帰宅。明日の富士見丘小学校の授業の準備。 夜、日本テレビのドラマ「私が私であるために」を見る。性同一性障害を抱えたというか、トランスジェンダーな主人公のお話。キャストに当事者が何人もいて、それだけでぐんと深みがましていると思う。竹下景子、橋爪功の演技もすばらしい。 このあいだ見た映画「トランスアメリカ」とはまったく違う、今の日本のトランスジェンダーの問題がきっちり提示されていると思った。性同一性障害という言葉は「障害」というのがいやで、つい「トランスジェンダー」と言い換えてしまうのだけれど、今夜のドラマは「性同一性障害」のお話だった。難病ものにとっても近くて、それが生き方に直結するという位置づけだろうか。 病気なのか生き方なのか。ゲイというのは、病気ではなくて、生き方だと思う。ゲイであることは病気ではないという事実がようやく常識になろうという今、性同一性障害は、ようやく「病気」なのだから治療してもいいということになっている。 とても近くて、とても遠い、ゲイであることとトランスジェンダーであること。痛みや苦しみを共有することはできるんだろうか? ぼくは、同じセクシュアルマイノリティとして、共有したいと思っているのだけれど。 歌手の中村中が、ほぼ本人と同じ設定で出演(歌手としてデビューするMTFのトランスジェンダー)。彼女が歌う「友達の詩」がとても好きだ。久しぶりに聞きながら涙してしまう曲。これから、どんな活躍をしていくのか、注目したい。
今日は稽古休み。ぼくがこれだけ疲れているのだから、キャストのみんなの疲れはどれほどだろうと思う。あ、みんな若いから、全然平気なのかな? ともあれ、今日は休みの予定だったのだけれど、昼間から仕事と打ち合わせ。夜、予定していた宇宙堂の公演に間に合いそうもないということがわかって、記生ちゃんにメールする。 朝干した洗濯物を夜になってから取り込む。ついでに夏の半袖の衣類をしまいここむ。まだコートは出さないけど、衣替えその1というかんじ。
2006年10月08日(日) |
「許しつづける女たち」稽古 |
稽古に出かける昼前の東武線の窓から、富士山が見えた。今朝、天気予報で言っていたとおり、頂上が少しだけ白くなってる。初冠雪ってやつか。 今日は初めての稽古場。祖師ヶ谷大蔵から延々と歩く。今回、こうやって知らない町を歩くことが多い。 午後は抜き稽古。4場後半の女性ばかりの場面。さもないやりとりなのだけれど、ちゃんと話しかけることを意識しながら積み上げていく。 夕方から4場を通して、5場の後半、6場の途中までの小返し。 音響の鈴木さんと竜太郎さんが来てくれて、7時過ぎから通してみる。 当初の予定よりやや長くなった。これは芝居のテンポではなくて、明らかに台本の饒舌さのせい。ここはもう少しつくりこまないとというところがよくわかった。これからの課題も。 帰り、鈴木さんとおしゃべりしながら、駅までの道を歩く。 鈴木さんは今、二兎社の「書く女」についている。ぼくの日記を読んだ永井さんが、間違いについて話していたと聞く。劇中に登場する半水桃水の作品名について。家に帰って、早速訂正をして、永井さんにメールする。 夜中、篠原さんと富士見丘小学校の授業についての打ち合わせをみっちり。 途中から、最近見た舞台の感想を言い合ったり、ひさしぶりにたくさんおしゃべりした気分。
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