せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年10月21日(土) 「許しつづける女たち」中日

 昨日の初日がいいかんじだったので、二日落ちするんじゃないかと心配だった二日目マチネ、13時開演。
 まみぃが見に来てくれる。会うのは久しぶりだ。
 それほどのトラブルもなく、細かいミスがややあったものの無事に終了。
 ソワレは、やや二日落ちかな?というかんじ。全体に固く重たい芝居になってしまった印象。終演後にそんな感想を伝える。
 ノグと裕子さん、それにベンちゃんにご挨拶。オカダさんとも。


2006年10月20日(金) 「許しつづける女たち」初日

 14時からのゲネプロ。休憩のあと、初日開演。
 演出家は、居場所がむずかしい。いつもは、作演出でも役者を兼ねているから、楽屋で準備をしているのだけれど、今回は、本番の舞台を見るだけ。開場時間は、外でなんとなく立ち話。
 開演前にお客様と一緒に芝居をつくっていってほしいと話したとおり、初日の舞台が満席のお客様と一緒に立ち上がっていく。
 稽古場ではなかなかなかった笑い声や、じっと見続けてくれる視線にたすけられて、2時間の上演時間が過ぎていく。そして終演。暖かい拍手をいただいた。
 平田さん、谷岡さんにご挨拶。ありがとうございました。
 用事があって来てくれた郡司さんとしばしおしゃべり。この間の「しじんの村」の感想など。
 初日乾杯を客席で。気持ちよく乾杯ができていることに感謝。
 あと4回の公演。きっちり毎回を見ていきたいと思う。


2006年10月19日(木) 杉並第一小学校演劇授業 「許しつづける女たち」仕込み

 朝目が覚めるとまだ外が暗い。5時前。もう秋なんだなあと思い、また寝てしまう。
 朝10時から、杉並第一小学校の演劇授業。講師は山本健翔さん、僕はお手伝いというか見学させてもらう。
 まずはゲームから。声のキャッチボール。全員で大きな輪になって、好きな相手に声を投げる。どんな声でもいい。かけ声のようなもの。
 6年生は単学級。35人がちょうどいいかんじの大きさ。
 つづいて「にょっき」。はじめはちょっと緊張気味の彼らがだんだん笑顔になってきた。
 体育館に入ってきた彼らを見て、最初に思ったのは、緊張のしかたが、一昨年の富士見丘小学校の6年生と似ているなあということだ。緊張というか、かまえているかんじ、鎧っているかんじ。
 平田さんと「大人だねえ」という話をしたのだけれど、それはそのまま、ちょっと構えているということなんだと思う。
 去年、今年の富士見丘小の子供達からはあまりかんじられない雰囲気だ。
 この間の授業のあと、形にならないものの継承という話を校長先生からうかがった。それは伝統といってもいいのかもしれないけど、見ていただけで同じことをやったわけではないのに、明らかに、一年目より二年目、二年目より三年目の方が、演劇に向きあう姿勢が自然にできている。
 話を聞くときの態度や、やってみるときの態度。行儀がいいというのとも違う、ちゃんとした向き合い方。演劇は約束だというのは、去年の授業で僕らが何度も言ったことだけれど、その約束を守るという姿勢がいつのまにか身に付いているのかもしれない。
 今日の子供たちから感じたのは、そんなあれこれ。でも、もう一つ思ったのは、演劇って何なのか? 何のためにやるのか?という問いに対する答えがちゃんと渡されているかどうかというのも大きなことなんじゃないかということ。
 富士見丘の一年目の子供たちは、まったく初めて演劇に触れて、思いもよらないことを次々にやっていった。それがいったいに何のためなのか、何になるのかもよくわからないまま。卒業公演に向けての授業も同様だ。二年目になる去年は、「下級生に伝えたいメッセージ」というものがはっきりあったから、少なくとも「なんでこれをやるのか?」という理由は手に入ったと思う。一年目の彼らの心細さが、今日、初めて会った子供達の様子から、ふと思い起こされた。
 さて、健翔さんの授業は、続いて、台本。
 三年に一度の学芸会のためのお芝居の練習。オーディションの前に、子供達にアドバイスというか、いつもとは違った面から演劇に触れる機会をというのが今回の授業の目的(だと思う)。なので、ウォームアップのあとは、台本を読んでみる。
 輪になって、「。」「、」までを一区切りにまわしながら。
 続いて、シーンを抜いて。ぼくと平田さんも輪に入って、一緒に読む。
 ぼくのとなりの女の子が、ずっとうつむいている。ゲームをしているときから。読んでみてもなかなか声がでない。そのうち、輪から外れて、後に行ってしまった。他の子供達も、そっと見ているかんじ。
 少し読んでみたのだけれど、やっぱり下を向いてしまった。きっと、自分でうまくいかないのが納得いかなくて、胸がいっぱいになったんだと思う。ぼくも、小学校のときはそんな子供だった。涙が出てきて、胸がいっぱいになってしまう気持ちはよくわかる。でも、なんとか今日の授業を楽しんでほしいと祈る。
 その後、いろいろやっていくなかで、少しずつ、参加できるようになった。それで全然だいじょうぶ。ちょっとほっとする。
 台本の最後のシーンでの、正義と悪の対立(おおざっぱに言うと)の場面。両方が歌を歌う。このシーンの歌詞をみんなで読む。
 そのあと、健翔さんは「北風と太陽」って知ってる?と質問した。イソップ童話の「北風と太陽」。
 北風と太陽が、旅人のコートを脱がそうと競争する。北風が冷たい風を吹かせてもだめだけど、太陽が暖かい日射しで温めたら、コートを脱いだ。という話。
 健翔さんが旅人、ぼくが北風、平田さんが太陽になって、その場面をやってみた。風の音、太陽の日射しの音(聞こえないけども)をいろいろやってみる。続いて、子供たちも。即興のお芝居だ。楽しそうにやっていたのが印象的だ。初めの固さから、2時間の授業の終わりには、とても柔らかい表情になった子供達。
 最後に、太陽になった気持ちで、全員でエンディングの歌を歌う。
 いい授業だった。思うことがいろいろ。参加させてもらって、ほんとうによかった。
 今日の授業で、はじめのうち戸惑っていた子供達が、集中してきたなと思えたのは、台本を開いてからだ。学芸会の上演台本。オーディションを控えているというのも大きかったと思う。何でやるのかという目的がまずはわかる。ともかく、まずは読んでみるということが、演劇に触れる第一歩としても、ある手応えを与えられるせいだからかもしれない。
 本番の舞台は、富士見丘小学校の学習発表会と重なるので見ることがむずかしいのだけれど、みんな楽しんで思い出に残るいい舞台をつくりあげてほしいと思う。
 授業のあと、体育館にバッグをまるごと忘れたのに気がついて戻る。子供達に「ありがとうございました」と挨拶されて、うれしい。
 昇降口に戻る廊下で、授業に参加していた発達障害の男の子(体育大学の学生さんがボランティアでつきそってくれている)に「さよなら」と挨拶したら、「ありがとうございました」と言ってくれた。うれしい。こちらこそ、どうもありがとう。
 健翔さん、平田さんと別れて、お先に失礼する。
 移動の途中、平田さんからもらった、富士見丘小の子供達が書いてくれた「大切な思い出」の作文を読む。大切な思い出を僕らに教えてくれたことがとてもうれしい。フィクションも実話も含めて、いい話、すてきなエピソードがいっぱいだ。前回の作文、未来の様子とは全然違う、手応えのある、いい言葉がつまっている。電車の中で読みながら、涙ぐんでしまう。きっといい芝居になる。そう思えてきた。

 昼、仕事先に顔を出して、また阿佐ヶ谷へ戻ってくる。
 劇場に行ったら、ちょうど停電中、漏電か?ということで心配したのだけれど、しばらくして問題は解決。
 その後、照明の仕込みが終わるのを待って、シュート。夕方から、転換ときっかけの稽古。段取りの確認が主なのだけれど、短い時間やってもらう芝居がいいかんじで落ち着いていて、安心する。
 夜は、場面の小返し。2場、3場、4場。昨日とは全然違う、きっちりしたやりとりが積み上がっていく。最後に6場の最後をやって終了。
 帰りの電車で爆睡してしまう。


2006年10月18日(水) 富士見丘小学校演劇授業 「許しつづける女たち」劇場入り

 富士見丘小学校の授業。一昨日の打ち合わせを踏まえて、篠原さんが上演台本を書き進めてくれた。
 「光速のマシーン」に乗るところと、未来に行ってしまった先で、警備員と警官に追われ、犬たちが登場する場面。
 初めに特活室で、「こういうお話をやります」という、今回の舞台、全体の説明。誰が書いてくれたお話からとったかをていねいに。両方のクラスの何人もの人の思いが、反映した作品だ。
 ダンスをどうするか、歌は何曲かというのも説明。今日のあと、授業はしばらくなし(学習発表会の準備のため)、次に会うのはオーディションだ。それまでに台本を仕上げておくと約束する。
 前田先生が、犬をつくってきてくれた。かわせみ座さんからいただいたものから、型紙を起こして、工作用紙で作られた新しい犬。足も顔も糸もついて、持ってるだけで、とても生き生きと動く。子供達に、これを使ってもらうよと説明。まさか、人形劇になるとは思わなかっただろう。僕らもそうだもの。でも、この、なんだか話しているうちに思いついたことを、次々やっていってみようと思うノリ、これがみんなで作ってるってかんじなんだなあと思う。
 AB2チームに分かれての練習、というか授業。篠原さんは特活室、僕は体育館に移動する。
 まずはウォームアップのしりとりとだるまさんがころんだ。続いて、台本を読んでみる。新しい台本は、人物が整理されて、すっきりした印象。それでも、とっても読み出があっておもしろい。
 まずは、「、」「。」で区切って、全員で輪になって読む。続いて、やりたい人!と聞いて、手を挙げてくれた人を田中先生に選んでもらって、前半、後半に分かれて、まずは前半。続いて、後半。全員が登場することになった。
 後半は、未来に行った先の「空がない」というセリフをもとに、空がないと気がついたところの即興をやってもらう。
 何人か(6人)で歩いていると、一人が気がついてみんなに言う「あ、空がない」。それを受けてのみんなの対応とやりとり。
 篠原さんの台本にもやりとりが書かれているのだけれど、子供達の言葉を反映させたいねと話しあった。で、やってもらう。
 思いがけない言葉と関係がいくつも見えてくる。空がないと気がつくと、こわいのか、不思議なのか、どう思うのか? 携帯で電話をかけてみようとする人も。平田さんに記録していってもらう。
 授業の最後は、特活室に戻って、フィードバック。両方のチームの発表をする。篠原さんのチームは後半をきっちり読んで、犬の鳴き声にも言葉としての意味をこめていた。整然と、そして役の印象まで深めての読み方がとてもすばらしい。続いて、体育館チームは、もう一度、即興劇をやってもらう。みんなに見守られて、その場にいること、そして、驚いているようすが、その場にちゃんとあった。読んでるだけとは違う、芝居しているかんじがぐんとおもしろい。
 お昼、給食をいただきながら、打ち合わせ。健翔さん、平田さんと。校長先生にも一昨日の打ち合わせで思ったことなどをお伝えする。
 みんなにお願いした宿題、大切な思い出は、もう提出されたそう。篠原さんが先に帰ったので、コピーしたものを送ってもらう。僕は明日平田さんから受け取ることに。
 校長室でああでもないこうでもないと言い合いながら、今日もおもしろいアイデアがたくさん浮かぶ。誰からということでもなく、みんなで話しているうちに誰かが言ったことが、どんどん実現していく。言ったもん勝ちということじゃなくて、何でも言い合える現場はやっぱりいいもんだ。

 劇場入り。午後小屋入りすると、舞台はすっかりできあがっていて、客席をつくっている最中。予想よりもずっときれいでおしゃれな空間ができあがっている。田中さんが用意してくれたものたちが、きちんと納まって、台本のイメージが無理なく立ち上がる。
 しばらくは役者が舞台に慣れるための自由な時間。その後、1場、2場、3場、6場を通してみる。段取りのむずかしいところを細かく確認。大勢が登場するシーンも。
 19時過ぎから通し稽古。照明はなしだけれど、音響は入れてもらう。さっきはできなかったことができてぐーんとよくなった場面、できてたのにどうして?な早くも2日オチな気分の場面などなど。まあ、今日のうちに一回へこんでおくのはいいことだと思う。やや厳しいダメ出しをして、今日は終了。


2006年10月17日(火) 「許しつづける女たち」稽古

 稽古場最後。まずは、昨日に続いての場面毎の通し稽古。6場、1場、2場、3場までを二度ずつ通して、最後に4場を一回やってダメだし。通してみる。
 音響さん、照明さんに見てもらいながらの通し稽古。
 初めて、音が入る。留守電のメッセージ、録音した山本さんの声も。
 1場、2場、3場とところどころ微妙なかんじでいたのが、4場からぐーんとおもしろくなった。綺麗に幕がおりて終了。いい稽古、いい芝居になった。
 ダメ出しをして、撤収。
 明日は劇場入り。当日の仕事が演出だけというのはほぼ初めての経験なので、小屋入りしてからのいかたがやや心もとない。
 ともあれ、明日は、午前中は富士見丘で授業。ゆっくり午後から劇場入りをさせてもらう。
 帰りの電車。いい芝居を見た後のような気分でなかなか家に帰りたくない。都営浅草線の浅草で降りて、浅草の街を少し歩く。東武線の各駅停車に乗って、すわりっぱなしののんびりした気持ち。パソコンを広げて日記を書いてみる。


2006年10月16日(月) 富士見丘小学校打ち合わせ 「許しつづける女たち」稽古

 仕事に出かけたあと、富士見丘小学校で打ち合わせ。田中先生、阿部先生、長崎先生、畑先生、前田先生、平田さんと、篠原さんと僕。
 先生方ともろもろの確認。マリオネットの犬をどうするか、何頭出すか、全体のお話はどうするかなどなど。
 篠原さんが書いてきてくれたレジュメをもとに、これからの授業についての打ち合わせ。
 下級生へのメッセージということではなく、おもしろい感動的な舞台をつくればいいということを確認する。今回は送る会ではなく、1月なので、このあたりをどうしようかというのが、なかなか難しいところだった。
 それと、全員が出演するかという問題も。
 犬をつくる時間があるかという問題は、11月の学習発表会の準備と同時進行するということで解決した。よかった。これで、犬を登場させることができる。
 初めの企画では思いも寄らなかったマリオネットの犬の登場。今年もまた、びっくりするような思いつきの連鎖で、当たり前のようにすごいことをやろうとしている。
 明後日の授業は、台本に子供達のことばが活かせるよう、即興をやってもらうことにした。
 去年もそうやって、子供たちから出た言葉を採録して、台本に反映させていったんだなと思い出す。たった一年前のことなのに、もうあやふやな記憶しかないのが情けない。一生懸命やっていたのは間違いないけど、作り方の記憶はもっと落とし込んで置かなければと反省。
 子供たちに最後の宿題をお願いする。未来から現代にもどってくるために、ひきかえに差し出す「大切な思い出」を書いてきて欲しい。どんな思い出か、具体的に。そして、なぜ大切なのかも。同時に、犬との思い出も。犬が出てくる芝居なので、そのあたりも、僕らが考えたものじゃなくて、子供たちから言葉をもらいたい。具体的に。もちろんフィクションでいい。
 という話をしたところ、平田さんが、「大型犬じゃなくって、ちゃんと言わないと」とチェックが入る。今回作る犬の人形は、大きさで言えば、小型犬サイズ。そうじゃないと作るのもの大変だし、あやつれない。「雪山で遭難したのをたすけられたっていうのだと成り立たないから」と。たしかにそうだ。さすが、平田さん、子供達全員分の作文をワープロ打ちしてくれただけのことはある。というか、そのつっこみが、妙におかしくて、やや固いムードの打ち合わせが、一気に和やかなものになった。
 結末をどうするかという点について長崎先生から提案が。そのアイデアは、僕らが実は・・・という落としどころとして想定していたもので、その前に、子供達から「大切な思い出」を募りたいと思っていたのだけれど、すっきりわかりやすい、その結末(しかも感動的!)が見えたせいで、芝居全体がいっきに具体的になった。
 打ちあわせに伺う前は、どうなるんだろうとやや考えてこんでしまっていたのだけれど、帰り道はとても明るい気持ちに。篠原さんと電車の中で、フィードバック。とても前向きに。
 
 夜は稽古。打ち合わせが五時過ぎまでかかってしまったので、遅刻して稽古場入り。
 4場、5場を小返し。いいかんじにやりとりが成立している。
 こうしたらもっと面白くなるというところをチェックしながら、やや観客の視点で楽しむ。
 初日間近の緊張がいいかんじに作用しているのかもしれない。
 ぐーんとノリがよくなった印象。明日は稽古場最後。


2006年10月15日(日) 「許しつづける女たち」稽古

 午後から夜までの稽古。
 昨日の通しを踏まえての稽古。5場と2場の小返し。
 「自分が勝つためには相手を勝たさないと」とか、「相手がやりやすく演じることが結局自分が演じやすくなることなんだからね」とか、今さらな言葉をいろいろ言ってみる。みんなにお願いしたいのは自分がどう演じるかに一生懸命になることよりも、みんなでつくっているというチーム感だ。
 夜は全員そろって6場の稽古。大勢の人間が登場する場面。バラバラにやっていたら何にも生まれてこない。一つ一つをていねいにチェックしていって、集中のしかた、話の中心をさぐっていく。最後に6場を通しておしまい。


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