せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年11月04日(土) 燐光群「チェックポイント黒点島」

 劇作家協会で、篠原さんと二人、富士見丘小学校のDVDの打ち合わせ。テキストの構成を再検討して、それぞれの章に新たに付け足す項目を決定。
 授業自体を紹介する項目なのだけれど、これがあることで、ぐーんとわかりやすくなった。
 一人で書くよりも、むかいあって座り、それぞれパソコンで自分の仕事をしながら、思いついたことを相談しながらの時間。おお、そうだね、ということにいくつも気がつく。一人で家で書いていたら、きっと思いつかなかったことのあれこれがうれしい。
 夜は、篠原さんと下北沢に出て、燐光群「チェックポイント黒点島」@スズナリの初日にうかがう。
 燐光群のメンバーに、竹下景子さん、渡辺美佐子さんが客演。スズナリ25周年記念公演ということで、1カ月のロングランだ。
 ロビーにはこの劇場で公演を行ってきた劇団のチラシが貼られている。僕が十九、二十歳の頃客演した劇団のチラシがあって、びっくり。とてもなつかしい。あの頃はまだ、劇場は打ち抜きになってなかった。たっぱの低い、普通の小屋だった。 折り込みの25周年記念パンフ(チラシ)の歴史を見ていたら、一番最初にスズナリで公演を打った本多スタジオの「黄昏のボードビル」という舞台も僕は見ていることに気がついた。あれがこけら落としだったんだなあと記憶の糸をたぐり寄せる。
 さて「チェックポイント黒点島」。舞台は、東シナ海に突然浮上した「黒点島」(太陽の黒点観測をしていた発見者の夫婦が命名)と、ベルリンのチェックポイント・チャーリー、それに世田谷の一家惨殺事件などがからむ構造。竹下さん演ずる漫画家が描いた「チェックポイント黒点島」というマンガの中と外を、自由自在に行き来する、とても娯楽性の高い作品。
 竹島問題や、日本人拉致問題が登場してきて、これははっきりした主張をもった固い芝居なのかしらと思っていたら、どんどん家族のありよう、親と子、夫婦、姉と弟、友人といった、人と人の間にある「チェックポイント」の話にひろがっていく、そのスリリングなかんじがおもしろい。
 スズナリの舞台で見る竹下景子、渡辺美佐子というだけでも、わくわくしてくる。なんて贅沢な芝居だ。そして、二人とも一体何役やっているんだろうというくらいの早変わり盛りだくさんで、そこまでやるかというような、ノリノリの芝居をくりひろげてる。
 息子をなじる母親役が見事だった渡辺美佐子さん、漫画家、母。妻としてというだけでなく、女性のいろんな面をきらきらと見せてくれる竹下さん。漫画家の友人として、地に足の着いた存在感の中山マリさん、ストイックななかにとても色っぽい夫役の猪熊さん、みなさんとてもすばらしかった。(案内人役の渡辺美佐子さんがばっちりメイクを決めて、チタ・リベラのよう!)
 終演後、篠原さん、一緒になった明樹さんと初日乾杯におじゃまする。坂手さんにご挨拶、マリさんとおしゃべり。
 劇場の外で竹下さんにご挨拶。一昨年の非戦の会で僕の担当したパートを読んでもらって以来、非戦の会のことを少し立ち話。
 一ヶ月の長丁場。これからどんなふうに変わっていくんだろう。もう一度また見てみたい、そう思わせてくれる舞台だった。


2006年11月03日(金) 扉座「ご長寿ねばねばランド」

 篠原さんと待ち合わせをして、紀伊國屋ホール。扉座「ご長寿ねばねばランド」。
 舞台は、老人ばかりが住んでいる夢の島のお話。
 3人のおばあちゃんがやってくるところから始まるというか、扉座の舞台にしてはめずらしく、一本スジのとおったストーリーというのがないんじゃないだろうか。いろんな人がホテルの庭を舞台に、繰り広げる人間ドラマ。グランドホテル形式のさりげない、でも、老人たちの言葉は、さりげないなかにもとても重みがあって、しっとりとしたいい芝居になっていた。
 三人のおばあちゃんのうちの一人は松田かおりさん。三谷幸喜の「天国から南へ三キロ」からのファンだ。でも、最後に見たのは、デヴィッド・ルヴォーのマクベスだから、もう何年ぶりだろう。色っぽく、でも、哀しいおばあちゃんをステキに演じていた。感動。
 年老いたピーター・パンが登場する場面で涙が出てきた。理由のない涙。舞台はおかしさでいっぱいなのに。せつない、とてもいい場面だった。
 里沙ちゃんは、客室係のおばあちゃん。肉をいっぱい着て、メイドのドレスを着ているところは、まるで「風と共に去りぬ」のマミィのよう。タップダンスもあざやかで、とてもチャーミングだった。
 終演後、ロビーで横内さん、田中さんにご挨拶。CSの未来図鑑に出ている僕を見てくれたそうだ。総集編の放送があったんだそう。びっくりしたよと言われる。僕もびっくり。そんなの放送してたんだ。
 篠原さんとお茶をして、解散。また明日と別れる。


2006年11月02日(木) 振り返るのはまだ早い

 昼間の仕事がまずは一区切り、それでも年明けでいいよねと思っていた予定が、来週からということになって、ややあたふたする。
 もう11月。2カ月で一枚のカレンダーは最後のページになってしまった。
 今月は、富士見丘小学校のDVDの原稿を書き上げて、今年の舞台の台本を書き上げて、オーディションをして配役決定。富士見丘が一区切りついたところで、「女たちのシェイクスピア」の稽古と本番。それが終わると、富士見丘の授業でどんどん練習をしていくことに。年末のgaku-GAY-kaiの稽古もいよいよ始まる。
 この日記は「観劇&稽古日記」と名付けているので、それ以外のことはなかなか書きづらい。それでも、今年は、ずいぶん稽古している日数が多いんじゃないだろうか? 数えてみたら、一年間で9本の舞台に関わっていることになる。これは、僕にとっては新記録じゃないだろうか。まだ振り返るのは早いので、残りの二本をきっちりつとめて、新しいトシを迎えられたらと思う。


2006年11月01日(水) 左腕

 電車が遅れて、遅刻かしらというぎりぎりの時間に富士見ヶ丘に到着。8時45分からの授業になんとか間に合う。
 1、2時間目、図工室で犬づくり。前田先生が、厚手の段ボールに型紙をあてて線を引いて置いてくれたものが、10体分。まずは、型紙どおりに裁断していく作業。
 予定通り、一体あたり、二人で取り組む。総勢20人の選抜チーム。おお、君が来たか!というような子たち、というか、こんなふうに一緒に工作をするのは初めてなので、どの子もとても新鮮な印象。初めて見る表情をこっそり観察する。
 ハサミでもカッターでもない、段ボールカッターを使っての作業。ハサミの半分の歯がノコギリのようになったもの。こんなのがあるんだとびっくり。
 胴体と頭には、曲線がいっぱいあるので、なかなかめんどくさい。手こずっていそうなところを見つけては、段ボールを押さえたりのお手伝いをする。図工室の工作用の机のへりをつかって、ぎこぎこ切っていく。ああ、それじゃ、危ない!とか言いながら。
 つづいて、顔の正面と胴体の側面を丸めていく。固くて分厚い段ボールを曲げていくのはなかなかむずかしい。僕は、大人で手が大きいので、全体を押さえながら、ちゃっちゃとやれてしまうのだけれど、子供達はずいぶん苦労している。裏側からカッターでスジをつけて、ていねいに曲げていく。
 今日作っている犬たちは、胴体はみんな同じ大きさ。ただ、顔は大小二種類ある。でも、裁断のしかたや、丸め方で、ずいぶんいろいろな顔ができあがっているようだ。
 つづいて、足と首を取り付ける。厚紙の筒を前田先生が糸鋸で切って、子供たちに配る。千枚通しで針金を通す穴を開けていく。今度も危なくないように、あちこちの様子を見る。そんな押さえ方じゃ指に穴があくよ!と注意したりしながら。
 穴があいたチームは、針金をもらって、胴体に足をとりつける作業に進んだ。つづいて首も。僕がわりと見ていたガクくんたちのチームは、時間の終わりまでに、首もついて、すっかり犬らしいものができあがっていた。
 途中で、犬の名前の説明が前田先生から。アマレットという名前の犬がいるとわかって、「大切な思い出」の作文で家で飼ってる犬のアマレットのことを描いてくれたキヌちゃんが喜んでくれた。よしよし。
 最後にそれぞれのチームが途中までできあがった犬を、大きなゴミ袋にそっくり入れて、教室にぶらさげて終了。
 次回は、糸をつけるところだろうか? 今度もなんとか顔をだしたいと思う。
 演劇授業のように、教える側じゃなくて、一緒に何かをやってるというのが、とても楽しい。もっとも、これから稽古が進んでいけば、どんどんそういう気持ちになっていくのだろうけれども。
 3、4時間目は、体育館で学習発表会の練習を見学させてもらう。
 「ゾウ列車がやってきた」をもとに、調べ学習をしたことも反映させての群読と合唱。
 初めての体育館での練習ということだったのだけれど、まずは全体を通してみるということに。
 舞台の前にひな壇をならべて、そこに全員が座っている。話す人、歌う人は立ち上がるというシンプルなスタイル。
 それでも、セリフも歌もちゃんと聞こえてきたし、心にも届くものになっていた。最初の立ち稽古(だよね)で、こんなふうにできるなんてすばらしい。
 なかでもサーカスの団長とゾウ使いがとても生き生きとしている。彼らが登場してから、一気に他のみんなの表情もかがやいてきた。
 休憩中に先生方から聞いた話では、先週のオーディションでは、それぞれが一人ずつの希望者で、誰がやるか?というようなことはほとんどなかったのだそうだ。ただ例外が、この団長の役で、二人の男の子が立候補。結果、一人が落ちたのだけれど、二人ともすばらしかったので、新たにゾウ使いという役を描き足したのだそう。二人とも涙ながらのオーディションだったそうで、今日の熱演もなるほどねえと思えた。
 4時間目は、篠原さんが、みんなに感想を伝えて先に帰って、僕一人が残った。そのまま見ていようと思っていたら、田中先生に「演出してもらえませんか」と言われて、「それじゃあ・・・」と最初の場面の練習をしてみる。
 「私たち六年生は・・」と一人が話し始めたとき、その人は全員を代表しているんだから、話してないみんなも、聞いている下級生に話しかけているつもりでいなくちゃねと話す。今日は、誰もいない体育館だけれど、本番では、下級生がいっぱいいるよね。今はいない彼らのことを想像しながら、話しかけていこう。稽古っていうのは、そういう想像力を働かせることでもあるんだよと。
 調べ学習の結果、悲惨な戦争の舞台になった国の名前を何人かのグループに別れて、次々、あげていく場面。一人一人で話しているときは、とてもいいのに、このユニゾンで話す短い場面で、ちょっとトーンダウンしてしまう。
 まずは、誰がしゃべっているのかわかっておくことが大事だと思ったので、国の名前を言いながら、手を挙げてもらう。これだけで、ずいぶんはっきりしたしゃべり方になった。
 「それから日本のヒロシマ」というのが最後のフレーズ。「ヒロシマ」という音は大きな声でしゃべるのがとてもむずかしい。みんなで練習してみる。ヒとシの違いは何だろう。ハヒフヘホと言ってみてもらう。少しお腹に力を入れてみようと話す。
 最後にクロアチアの子供達の言葉をしゃべる場面。4人の子供たちが、立ち上がって話す。このときは、「私たち6年生」が下級生に話してるんじゃなくて、クロアチアの子供たちの話を聞いている「私たち6年生」だ。
 それまで客席を向いていたのを、この場面は、話しているクロアチアの子供一人一人の方を向いて話を聞こうとアドバイス。
 ここまでで授業はおしまい。ほんとに最初の部分だけをていねいにつくったかんじ。また来たときはどんなふうになってるか、楽しみだ。
 授業のあと、体育館で、阿部先生、田中先生とお話。オーディションのこともこのときうかがった。デッキを片付ける係りのルイちゃんが、なんとなく、近くで話を聞いていて、帰りたくなさそうにしていた。先生に、早く行きなさいと言われたけど、気持ちはわかる。僕も子供の頃、先生たちの大人の話を、ずっと聞いていたい子だったと思い出す。
 その後、校長室で宮校長先生と授業全体についてのお話をさせてもらった。話すことでいろいろなことが見えてくる、いい時間だった。給食、ごちそうさまでした。
 夜、左腕が妙に痛い。筋肉痛だ。なんでだろうと考えてみたら、昼間の犬づくりの時間に、段ボールをずっと押さえていたからじゃないかと気がつく。他には左手なんて使ってないし。きっとそうだ。ちょっと情けない。


2006年10月31日(火) うちあわせ

 夜、篠原さんと渋谷で待ち合わせ。富士見丘小学校の打ち合わせ。
 台本について、先週の打ち合わせから、今までで生まれた疑問点を確認。
 人物のキャラクターと、世界の設定(?)をつめていく。
 今回、ひとつながりの物語を手分けして書いていくので(プロットは篠原さん)、これってどうなってるの?というところは、ちゃんとわかって共有しておきたい。
 一人で思いつめる書き方よりはずっとラクに息をしながら、台本にむかっている気がする。
 篠原さんがすでに書き上げた場面と登場人物、それに加えて、僕が新たに性格づけをする犬と人物たち。とにかく、6年生全員、65人が登場する舞台だ。
 去年の「放課後の卒業式」の「演劇授業」の発表のような、「みんなでつくる」場面が、今回はない(全員で踊るダンス場面以外は)。
 篠原さんが描いた人物は現代の人たち。僕が描くのは光速のマシーンで行ってしまった未来の人間と犬たちだ。作家としては、いい分担のしかただと思う。
 夜中、打ち合わせの経過報告と、先生方へのお願いのメールを送る。
 明日は、1時間目から、富士見丘小学校。暗いうちに家を出るのはつらいから、1時間めからはなしにしようと決めた、今年の授業計画。
 本来は、予定がないのだけれど、1,2時間目は、マリオネットの犬づくり、3,4時間目は、学習発表会の練習を見学させてもらう。
 篠原さんと、打ち合わせのおしまいに、おつかれさまと言った後、どうせまた明日会うけどと付け足した。


2006年10月30日(月) リーディング

 サイトのトップページに情報をアップしている、リーディング「シェイクスピアの女たち」。
 去年、ロジャー・リーズのワークショップで知り合った有希九美さんに声をかけていただいて、出演することになった。
 “シェイクスピアの代表的な作品である「テンペスト」「お気に召すまま」「マクベス」「十二夜」「夏の夜の夢」「リチャード3世」「ウインザーの陽気な女房たち」から、そこに登場する女性たちの姿を通して、当時は男ばかりで演じられていたという常説に疑問を呈する。それにしても、シェイクスピアはなんと巧みに女の心理を描いていたことか。いつから女役を女優が演じるようになったのか。当時を想像しながらお楽しみください。”という舞台。
 舞台でシェイクスピアのセリフを口にするのは初めてだ。とても新鮮で楽しみ。
 ご一緒する、有希九美さん、松本紀保さんとも初めまして。今は、とりあえず、シェイクスピアの戯曲を読んで“予習”しておこうと思う。
 きっといろんな役のいろんなセリフをしゃべるんだろうなと思うと単純にわくわくする。しかも、男性は僕一人。それでいいの?という気がしないでもないけど、これもまたうれしい。できることのありったけをぶつけてみたいと思う。
 どうぞみなさんのご来場をお待ちしています!
 ご予約は、関根までメールでおしらせください。
 よろしくお願いします。


2006年10月29日(日) ラ・カンパニー・アン「a@a cafe=anteria at An」

 ラ・カンパニー・アンのジェストダンスライブ「a@a cafe=anteria at An」@新宿ミラクル。
 8月のリーディング以来のアンのみなさん。艶やかな衣装もなつかしい。
 水木さんにも久しぶりにご挨拶。「オセロー」の旅公演が一区切り、間もなく東京公演が始まるそう。
 ザバダックの曲に合わせてのジェストダンスに、岸田國夫の「ヂアロオグ・プランタニエ」。合わせて50分のちょうどいいサイズのライブだった。
 今となっては不思議な文体の台詞を、いつもの衣装を着たあかねちゃんと清木場ちゃんがしゃべると、それだけでおかしみがにじんでくる。
 ラストは、セリフとしてはやや不可解な「鳥」の登場をダンスにつなげて盛り上がる。
 照明、音響、舞監の伊藤さんとおしゃべり。富士見ヶ丘の打ち合わせも若干。
 終演後、アンのメンバー、今日来ていたみなさんとおしゃべり。
 並んで座って見たにしやんと、終演後、カラオケボックスへ30分。微妙な時間つぶし。
 にしやんから、ここ数年追っかけをしているという中村中の話を聞く。青い部屋でのライブからなんだそう。「友達の詩」を唄ってもらい、僕はおしゃべりのみ。
 その後、すっかりごぶさたしてるタックスノットへ顔を出して、帰ってくる。


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