せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2007年05月23日(水) 打ち合わせの日

 富士見丘小学校で今年の演劇授業の打ち合わせ。
 甚野先生、長崎先生、馬場先生、平田さん、篠原さんと。
 スケジュールの確認と、先日の扉座の体験教室のフィードバックなどなど。
 どうやって思っていることを伝えようかということに苦心するのではなく、シンプルに話し合いができているそのことがうれしい。
 今年は六年生だけでなく、他学年対象のワークショップについても劇作家協会がとりまとめることになった。
 そのことについての打ち合わせも。

 夜、劇団制作社の樺澤氏と打ち合わせ。原付に乗って、家の近くまで来てくれた。ファミレスで深夜3時近くまで。
 熱のようなものをいっぱいもらい、思っていることをお互いにたくさん言い合う。いい時間。


2007年05月19日(土) 「在り処」稽古 フライングステージWS

 「在り処」の稽古。今日は、小道具を全部用意してもらっての稽古になった。
 この戯曲は、モノを介しての芝居がとっても多い。こたつ、通帳、最中、リンゴ、いものにっころしがし、糖尿病用の注射、血糖値を計る機械、あやしげな数珠、子供の帽子、穴の開いた靴下、穴のあいた手袋(元々の戯曲にあったものを今回上演用に若干変更)。
 ト書きで読むよりも実際にあった方がいいと思ったので、この芝居に関しては、小道具をほぼ全部出して、実際のそれを使いながら(食べながら)リーディングをしてもらうことにした。
 それでも、「リーディング」という枠組みはおさえておきたいので、冒頭の0場は、きっちり読んでもらう。「この子たちの夏」のように3人が並んでまっすぐ前を向いて。その後、舞台上にある段ボール箱から新聞紙のゴミを舞台全体にちらかす。きれいに(?)ちらかったところで、職員役の唐沢くんが「30分後」というト書きを読んで、1場の芝居が始まる。
 ゴミの中での小道具ありの芝居はほんとうに大変だ。板倉さんと藤さんには、申し訳ない演出だ。
 最後の場面の、板倉さんの芝居をクローズアップする。台本のト書きを解釈して、気持ちの変化というか、とまどいをていねいに演じてもらう。
 近松の封印切りのような場面になった。
 演出しながら、ほろっとしてしまう。今日はにやにやだけじゃなくて、涙もか(笑)。
 ラストの藤さんの芝居を確認して、今日の稽古は終了。
 2回の稽古でここまで来たというそのことに感動。俳優さんたちの集中力と腕のたしかさに感動。
 そして、小道具を用意してきてくれた劇団劇作家の皆さん、なかでも、じゃがいもを煮てきてくれた相馬くんと篠原さん、どうもありがとう。
 リーディングでモノを食べるってどうよ?というためらいも何もふっとばすくらい、唐沢くんの食べっぷりと、それに関わる板倉さんの反応のビビッドさはすばらしい。
 芝居しながら、リンゴをむいていく藤さん。もうその姿だけでいいというような、なつかしさが生まれてくる。
 さあ、これから、どうなるか。本番がたのしみだ。

 夜はフライングステージのワークショップ。
 先々月、先月と今回で計3回のプログラムを組んでみた。
 今日は、新聞記事をもとにした作品づくり。
 シアターゲームのあと、初めましてのチームで一つの場面。それに続く場面を作り上げた。
 作品もおもしろかったけれど、どの記事をチョイスするかというディスカッションの時間が興味深かった。
 コミュニケーションのしかた、リードする人、じっと話を聞いて考えている人。それでもみんなで一つのものをつくりあげていかなくはいけない。
 何が正解かもわからなくて、どうしたらいいかもわからない状況から、とにかくみんなでつくっていく過程そのものが何かになっていく。
 ワークショップは今回で一区切りだけれど、「サロン」が終わった秋にまた再開できたらと思っている。


2007年05月18日(金) 「ドールハウス」稽古

 今日で演出プランを固めなくてはいけないという稽古場。
 来週は、稽古に参加できない俳優さんがいるので、今日の稽古で「こういうことです」というのをきっちり手渡さないといけない。
 まずは、ト書きを読むキャバクラの従業員の分担。
 なんとか、戯曲に描かれている空間を成立させようとしたのだけれど、やっぱりやめて、前列にキャバ嬢、一段高くなった後列に客と従業員の男性陣が座るというスタイルに変更。
 今日はまず、座ったままでいいので、ト書きを分担して読みながら、全体を通してみる。
 まだわからないことがいっぱい。
 細かいつめは次回の稽古にしよう。
 4本の作品の中では一番どうなるかわからない作品。心配もあるけれど、わからないというのも大きな魅力だ。


2007年05月17日(木) 「佳子のさくら」「親シラズ」稽古

 リーディング3本目「佳子のさくら」、4本目「親シラズ」の稽古。
 東宝現代劇の青木玲子さん、菅野園子さん、児玉利和さんの出演。
 三人とも大ベテランだ。東宝の舞台で何度も拝見している、そんな方たちと一緒に芝居をつくることにまずびっくり。
 今日は、児玉さんがお休みで、青木さん、菅野さんとテキストの解釈を中心に読み合わせ。
 リーディングで読み合わせというのも変だけれど、ていねいに言葉のニュアンスや、気持ちの変化をたどっていった。
 お二人とも、今日までにきっちりと、そして深く読み込んできてくれてきている。
 やろうとしていることがはっきりしている俳優に対して、アドバイスするのはとてもおもしろい。
 ちょっとした一言で、場面のニュアンスがみるみる変化していく。
 「佳子のさくら」はとても不思議な芝居だ。抽象的な夢のような時間と空間の中に、暖かなやりとりと思い出がいっぱいにつまっている。
 今日の稽古では、登場する二人の女性の関係の変化を主にたどった。
 稽古が終わって、なんだかわくわくとうれしくなってしまう。
 なんて楽しい稽古なんだろう。

 つづいて、「親シラズ」の稽古。
 ダイニングキッチンのテーブルをはさんでの母と娘の会話。
 ひたすらつづく会話を説明でなく成立させるにはどうしたらいいかというのが、演出の主な目的。
 さりげないやりとりの中に生まれるひっかかりを確認していく。
 戯曲を読んだだけではわからない、さまざまなニュアンスが二人の間に生まれてくる。
 こちらもまたおもしろい稽古になった。

 本番の前に、稽古が楽しくてしかたない。
 演出家はなんとなくしかつめらしい顔をして稽古を見ているようなイメージがあるのだけれど、今日の僕は、一日にやにやしていた。
 ちょっと気持ち悪かったかもしれない。
 不思議な稽古場だ。


2007年05月16日(水) 富士見丘小学校演劇授業

 新六年生の最初の演劇授業。扉座体験教室。
 田中さんをチーフに総勢15名という豪華な講師陣。
 六年生全員をグループ分けして、今年もまた芝居のおもしろさを体験する授業。
 青井さん、篠原さんと一緒に、全体を見る。また、後半の「さよなら先生」という場面をグループごとに作り上げる場面では、体育館を移動しながら、それぞれのグループの様子を見せてもらう。
 子供たちの様子もとてもおもしろく、興味深いが、扉座の役者さんたちの様子も一人一人、とてもおもしろい。
 「さよなら先生」という同じテキストを使いながら、俳優さんによって、子供達への手渡し方が様々だ。
 最後の発表の時間には、今年もまたほろっとさせてもらう。
 途中のいろいろなゲームやエチュードに対する前向きな感じ、というか、当たり前に演劇に入っていってしまえる子供たちにびっくりし、感動する。
 この子たちは、3年生のときから演劇授業を受けている(年に一度だけれど)。そして、何より、卒業公演の六年生の姿を見ている。
 それがきっと大きいのだろうと思う。
 なんておもしろい子たちなんだろう。
 全部が終わって、子供達に初めて挨拶する。
 これから一年、おつきあいするこどもたち。まだ名前もよくわからない。でも、毎年、ここから始まる。
 授業の前、体育館に向かう廊下で、たぶん4年生の女の子たちに「おはよう!」と挨拶した。「おはようございます」と返事をした彼女のとなりの女の子が小さな声で「誰?」と尋ねた。聞かれた彼女は「演劇の人」と答えていた。もう、小学生が「演劇」ってボキャブラリーを持ってるってことがうれしくてしかたない。
 これからまた一年、「演劇の人」として、子供達と接することになるんだなあとあらためて思った。
 僕の演劇はどんなふうになっていくんだろう。彼らと一緒にどんな演劇をつくっていくんだろうと思った。


2007年05月15日(火) 「ドールハウス」稽古

 リーディング二本目「ドールハウス」稽古。
 昨日から、作者の錦織さんとメールでやりとり、今日もまた。
 一昨日とは違う、地下のとても広い稽古場。
 平台もつんであって、照明の機材もある。そのまま公演がうてそうなスペースだ。
 出演者が大勢なので、みんなでウォームアップ。その後、読み合わせをして、細かいダメだしとテキレジ。時間いっぱいまで。
 「ドールズ」というキャバクラを舞台にした群像劇なのだけれど、少ない人数でのやりとりが緻密に積み上がっていく印象。
 稽古のあと、篠原さん、錦織さんと打ち合わせ。


2007年05月13日(日) 「在り処」稽古 宇宙堂「川を渡る夏」

 劇団劇作家の稽古初日。今日は相馬杜宇くん作の「在り処」。
 三人のキャストと、劇団劇作家のスタッフの面々と時間いっぱいまで。
 リーディングってなんだろう?ということをよく考える。
 稽古して(台詞覚えて)演じるのが大変だから「とりあえず」読んでみようということじゃもったいないと思う。
 リーディングだからこそできることを探す。
 それでも、この作品については、かなり芝居を演じるスタイルに近くなっていきそう。
 もともと決めていたプランを押し通すのではなく、俳優さんたちと一緒につくりあげている、そんな時間がうれしい。
 密度の高い60分の三人芝居。
 軽くアップをして、一度読み合わせ。その後、テキストについての確認、そして演出としての意見。この時間をていねいにとったのがよかったと思う。
 だめ出しをしたあと、全体をもう一度通したことになる。
 びっくりするくらい生き生きと芝居が立ち上がる。藤さん、板倉さん、唐沢さん、それぞれとっても魅力的だ。
 稽古してみて初めてわかったあれこれを作者の相馬くんに伝えて、テキレジのお願いをする。
 一回目の稽古でここまでこれたということにおどろく。もっともっとおもしろくなるということを確信する。

 その後、宇宙堂の若手試演会「川を渡る夏」(作:渡辺えり子)を見に、荻窪のアールコリンへ。
 初演は昭和61年、演劇集団円によるもの。
 当時、僕は円の養成所にいて、この公演を研究生として見た。
 今日の舞台を、僕はとてもなつかしく見た。そして、とても身近なものとして見た。
 この芝居の中で描かれるせつなさが、20年前よりもしみてくる。
 狭いアールコリンの舞台を縦横に使っての演出が迫力。そして、どこで着替えてるの?と心配になるくらいの転換も見事。
 いいものを見せてもらったなあと感謝の気持ち。

 帰りにタックスノットへ寄る。
 今日は、タックスノット25周年パーティだったのだけれど、僕は稽古が入っていたので、伺えなかった。
 なので、ご挨拶に、遅い時間に顔を出すことにした。
 久しぶりのタックさんとおしゃべり。タックさんのおばさまは女優の大塚道子さん。今日のパーティにも見えていたそう。
 来月の「非戦を選ぶ演劇人の会」のリーディングのことをふられる。大塚さんから聞いたとのこと。
 チラシができたら持ってきますねと話す。
 満員の店内でいろんな人と立ち話。
 25周年ということもあり、世代の近い人たちと「トシ」の話で盛り上がる。
 ばたばたと走って終電で帰ってくる。
 
 盛りだくさんの日曜。今夜はきちんと電気を消して眠る。


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