せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2007年05月31日(木) 「在り処」初日

 リハーサルは「在り処」から。
 小道具いっぱいのこの芝居はとにかくしなければいけないことが多い。・
 その一つ一つを確認しながらの場当たり。ざっと通したところで終了。
 続く、「フォルモサ!」のリハーサルを見せてもらう。
 この戯曲は日本の台湾統治時代を描いていて、今回の8本の戯曲の中では一番ヘビーだ。というか、一番重厚だ。
 その戯曲の世界がすっきりと頭にはいってくる。びっくりした。
 ただ読んだだけではわからないことが、見て聞くことでこんなにわかるなんて。
 いくつかの場面で涙が出てくる。
 命の問題が、最後に立ち上がってくるように僕には思えた。
 あわただしく準備をして「在り処」の本番。大きな事故もなく、終了。
 終演後に今日も「ブラボー!」の声をいただく。
 感謝!
 終演後は、永井愛さんを迎えてのポストパフォーマンストーク。
 この芝居の老婆がちっとも悲しそうでないことが悲しいと言っていただく。
 また、(日常の)会話のほとんどは説明だというのも、目からウロコの説だった。情報を伝えるために人は話をする。
 戯曲では、説明ぜりふを書かないように気をつけるものだけれど、会話のあらかたが説明で成り立っているのだとしたら、もっとおもしろい説明のしかたもあるんじゃないだろうかと。
 舞台上に登場しない人物と時代の情報たくさんの戯曲「親シラズ」について考える、いいきっかけをいただいた。
 こうして、僕の担当の4本はどれも無事に初日があいた。
 あとそれぞれ一回ずつの舞台。あっけないくらいあっという間だ。
 演出家のさびしさは、初日があくと居場所がなくなることだけれども、今回はそれが4本分まとめてだ。
 せめて開演前にきっちり伝えることを伝えて、いいコンディションで俳優さんがいられるように気を配って、しっかり舞台を見届けようと思う。


2007年05月30日(水) 「ドールハウス」初日

 昼過ぎから「ドールハウス」のリハーサル。
 全体の流れと動きの確認。
 そして、衣装のチェックも。この舞台ではキャバ嬢がみんなコスプレをしている。
 婦人警官、ナース、女子高生、メイド、チャイナドレス、ファミレスのウェイトレス。
 この衣装のスカート丈が短い! 椅子に座るととっても危ないことになる。どうしようかと考えたのだけれど、それぞれの俳優さんに工夫してもらうことにした。台本を膝に置く、足をきちんととじるなどなど。ただそのことで、終始うつむきがちにならないようにとも。
 照明が入って、場末のキャバクラの空間ができあがっていく。冒頭、三人の黒服が登場するとなんとも言えないムードだ。パイプ椅子のきらめき、それに台本の表紙につかったミラーもいいかんじ。
 その後、「白狐」の初日を拝見する。
 おお、こういうふうになったかとわくわく見てしまう。
 担当の4本でいっぱいなので、深く読み込んでいない分、新鮮に見ることができた。
 ここでも俳優の力に感動する。
 ただ読むだけではわからないものが、間違いなく生まれている。
 「在り処」で老婆を演じている藤さんと職員役の唐沢くんが全く違う役を演じているそのことがとても新鮮。「親シラズ」の伊藤さんも、また違う母親像を演じている。
 おもしろいなあ。
 終演後は、横内さんのトーク。
 多くの舞台で時代劇を生み出してきた横内さんならではの視点からのお話。
 そして、「ドールハウス」の初日。
 たくさんのお客さまの前で初めてわかったことがたくさんある。
 コスプレした女たちが人形のように見えてくる瞬間。のびのび驕慢にふるまっていた女たちが、じつは男たちに支配されているんだということが浮かび上がるラストなどなど。
 それもみんな俳優さんたちがその場でちゃんと生きていてくれたからだと思う。
 終演後、いくつかの確認のために楽屋に向かう。今日のうちに確認して共有しておきたいこと。何より、「いいチーム感が生まれていた」ということを伝える。


2007年05月29日(火) 「佳子のさくら」「親シラズ」初日

 昨日の仕込みはお休みさせてもらって、今日は朝から「親シラズ」のリハーサル。劇場で何ができるかというよりも、一昨日稽古場でやったようなことをいろいろやって、身体の確認。テキストを読んでみる。いいかんじだ。
 続いて、「佳子のさくら」のリハーサル。車椅子の段取りの確認を中心に。
 二つの舞台ではまったく舞台の印象が変わる。
 「親シラズ」はダイニングテーブルのまわりに椅子が4つ。「佳子のさくら」は病室を連想させるような白いボックスに桜の枯れ枝のささった花瓶。車椅子に2つの椅子。
 リーディングなのに演目ごとの場面転換が大変だ。
 八着さんをはじめとするスタッフのみなさん(劇団劇作家の舞台部のみなさん=もちろん劇作家)は、演目と演目の間の短い時間に転換作業をしなくてはいけない。感謝だ。
 「在り処」はこたつでの芝居が多いので、客席から見えにくくならないよう高くした台の上にこたつを乗せた。舞台全体は茶の間なのだけれど、ちょっと抽象的な空間をつくっている。「ドールハウス」も後列を平台を積んで高くしてもらっている。これも見やすくするためと、男と女の階級(?)の違いをはっきりさせるため。
 いよいよ本番。「佳子のさくら」。三人のベテランの俳優さんの存在感に圧倒される。
 健翔さんと一緒に桟敷席のはじっこから舞台を見ながら、俳優ってなんてすごいんだろうと思う。
 カーテンコールで客席から「ブラボー!」の声がかかった。
 「親シラズ」。稽古でいちばん大切にした二人のやりとりがきちんとできていることに感動。
 客席からくすくす笑いがもれる。この親子のやりとりの他愛のないおかしさと悲しさがちゃんと客席にとどいた証拠だ。
 こちらも暖かい拍手をいただいた。
 それぞれの終演後は、別役実さんを迎えてのポストパフォーマンストーク。
 戯曲の構造についてのとてもプロフェッショナルな深いお話。
 なるほどなあとうなずくことたくさん。
 終演後の俳優さんたちの笑顔が僕のもらった初日祝いだ。
 あと2本の舞台はどんなふうに始まるんだろう。


2007年05月27日(日) 「親シラズ」稽古

 急遽、お願いして「親シラズ」の稽古をさせてもらう。@青年劇場の稽古場。
 前回の稽古のまま、初日を迎えるのは申し訳なかった。心細そうな二人の顔が頭を離れなかったので。
 今日は、客席に伝えることよりなにより、舞台にいる二人がちゃんとやりとりできるようにしてほしいとお願いする。
 そのためのエクササイズをいろいろ。
 作者の福山さんをまじえて、四人で(僕も入れて)、しりとりをしたり、歩き回ったり、誰にしゃべっているのか、身体を自由にするにはどうしたらいいかというのを、頭で考えるのではなく、あ、こういうことなんだと腑に落ちるようなやりかたで確認していく。
 初めのうちはなかなかできなかったことがさらっとできるようになって、台本に向かう。
 初めから全体をイメージして何かをやろうとするのではなく、その都度その都度のやりとりを正直に積み上げていってほしいと話す。
 そうしてできた場面は、とてもコンパクトであっさりしていて、でも、今までで一番この話がよくわかった。
 びっくりする。
 情報たくさんの戯曲の情報をどう伝えるかではなく、そのことをさもないおしゃべりの中で共有していく親子の姿があるだけで、こんなにおもしろくなるんだと、みんなでおどろく(僕も含めて)。
 手強く、重たく思えていたこの戯曲が、とても軽やかなかわいらしいものに思えてくる。
 そして、娘の知らない過去をたくさん抱えた母親のなぞめいた大きさと色っぽさ、本人は気づいていないのに父親そっくりな娘の姿、初めて見えたことがいくつもある。
 どうなるんだろうと思って始まった今日の稽古。終わる頃にはとてもしあわせな気持ちになっていた。
 これで大丈夫。僕の担当する4本の舞台はきっといい初日を迎えられるだろう。すべては初日が開いてからなのだけれど、まずは、おだやかな気持ちでいられる今に感謝。


2007年05月26日(土) 「こんにちは、母さん」

 劇作家協会の理事会と総会。
 諸々の議案についての承認と確認。
 高校時代にお世話になった山口?子先生に会う。山口先生は(今でも先生と呼んでしまうけど)、劇作家協会の監事だ。
 相変わらずおしゃれに帽子をかぶった姿がかっこいい。
 高校時代の話をおしゃべりさせてもらう。

 その後、永井さん、青井さん、篠原さんとお茶をしながら少しおしゃべり。
 去年の総会の後もこの顔ぶれで話していたなあと思い出す。
 家に着いて、永井さんのシナリオによるNHKドラマ「こんにちは、母さん」を見る。
 大好きな舞台版がどうなっているか興味津々。
 舞台には出てこない人物と風景に若干の違和感を感じながら、それでも台詞のやりとりのおもしろさ、場面の構成のたくみさに感動する。
 ロケの舞台はきらきら立花商店街だろうかなどと考えながら。


2007年05月25日(金) 「ドールハウス」稽古

 ミラクルの稽古場にて。
 本番の舞台の実寸がとれるので、寸法どおりに椅子を置いて演じていってもらう。
 今日の稽古は、動きを中心に。戯曲の指定では舞台一杯にキャバクラが出現しなくてはいけない。キャバ嬢の待機スペースと接客スペース×3、それにカウンターに更衣室とトイレと厨房とドア。
 基本的に動かないキャバ嬢に対して動き回る従業員の黒服三人。彼らが場面をどんどん作り出していく。
 犬塚さん、桑島さん、マナブくんはト書きも読みながら空間もつくっていく重要な役どころ。
 キャバ嬢の視点を決める。錦織さんが持ってきてくれた人形の扱いも決める。
 いろいろなことが具体的になって、見えないモノが見えてくる舞台になった。
 キャバ嬢の個性がだんだん立ち上がってきた。バラバラだけど不思議なアンサンブル。
 何より、一人一人がその場でちゃんと生きていてほしいと思う。
 予定の時間を30分延長させてもらって、最後までたどりつく。よし、これでだいじょうぶ。
 あとは、劇場入りしてからつくっていこう。

 帰りにタックスノットに、非戦の会のチラシを持って行く。
 尾辻かな子さんとばったり会う。彼女は、今度の参院選に民主党の公認で出馬する、カミングアウトしているレズビアンの議員さんだ。
 どんなふうに応援できるか、あれこれ話す。
 ただでさえ大変な選挙に、カミングアウトして臨む、そのことがシンプルにうれしい。どうぞ当選しますように。と祈るだけでなく、具体的なお手伝いができたらと思っている。


2007年05月24日(木) 「佳子のさくら」「親シラズ」稽古

 6月30日の非戦を選ぶ演劇人の会のリーディングのための発送作業をしている青年劇場が今日の稽古場。
 稽古前に、作業しているみなさんにごあいさつ。チラシを受け取って稽古場へ。

 まずは「佳子のさくら」から。今日は、車椅子が稽古場に来たので、その扱い。ト書きを読んでもらう児玉さんをまじえての稽古と菅野さんが演じる安子についての稽古を中心に。
 冒頭と最後に入れる音楽を流してみる。青木さんから提案があったドビュッシーの「月の光」。それに、僕からの提案で「夢」。
 児玉さんのト書き、そして、「夢」にのって登場する車椅子。いいかんじの始まりだ。
 ラストの「月の光」の寸法が合うかどうかは、またあらためて。
 
 つづいて「親シラズ」。ダイニングテーブルを囲んでの母と娘の会話。4つの椅子を移動しながらのやりとり。
 移動しながら読んでくださいとシンプルに伝えてしまったせいで、二人の会話がなかなかかみ合わない。
 ドキドキしながら、それでも通してみる。きれいに流れていく。それなりによしなのだけれど、もう一つ何かがほしい。
 なんとなく心配そうな伊藤さん、泉川さんの表情が心にひっかかったまま稽古終了。


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