
戯 言ノ源
―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰
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2008年09月10日(水) ■ |
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間違っているのだ、君も、僕も。 |
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今日も夢の話です。つまり独り善がりですがまぁほらいつもそうだよねっていう事で。も、って、別に直近ではないですが結構登場回数多いよねってそんな意味合いの、も、です。 大別して二つの夢を見たんですが、どちらも全編アニメな事に自分が滲み出ていて絶望した。 ま、一つの方は結構彼是ぶっ飛んでいるんで(そりゃ夢ですから)特筆すべきと言ったら、グルグルの世界観でヤッターマンの二人が妙にラブラブしているっていうくらいなんですがw もう一つが、まぁあれですよエヴァなんですが、なんかね、その夢の中でさえ、胃の腑が揺れるような、驚きと緊迫感があって、ずっとこわくて、嗚呼きっとこれがこわいって事なんだ、って後から頭が追っつくような。 珍しくそんなに衝撃を感じたのでしたためてみたい気もするけれどあれはもう、あの見せ方であの間でやられたからというまさに素晴らしいベストタイミングで、エヴァっぽい演出だった訳ですよ、今更文にしてもなっていう。知らんよ始めから自己満足だろ。 うん、ちょっと個人的に書いてみたいのでつらつらしますが、少々暗いというか相当痛いあれなので、グロいの耐えられる方と更なる自己満足を許容出来る方にお付き合い願えたら。 因みに自分は始めそれを、映画の続きだと思って観に行っていて、”破”がそんな楽しみなんだろうかw、それなのに途中からシンジの視点をその脳の後ろにこびりついて見ているような、そんな感じだったんですが。ラストの場面で本気で、心臓の鼓動を感じて張り裂けそうの意味を知ったのは、でもなんかちょっとその相手がシンジなのは不服(なんだ偉そうな)。
目が覚めたら、見知らぬ天井。 それはもう、当たり前なくらい何十回も知っていて、それなのにやっぱりいつまで経っても見知らぬもので。 嗚呼、だけど何故だろう。 何十回と呼べる程、僕はまだ倒れちゃいない筈なのに。
首元までしっかりと掛けられた布団は、しかしその割に重みが足りないような、身動ぎしたくて探っても、何故か右手は少しも動かなかった。左手も同じ。更に言えば脚も指一つ動かせそうに無く、余程重傷で神経がまだ回復し切っていないのだろうか。 それはだが、妙でもある。これまでどれだけの激戦で、もう完治は不可能だと何度、思っても目が覚めてみれば見知らぬ病室で全てが完璧に整えられていたのに。 NERVでも出来ない事ってあるんだな。 句読点に辿り着いてからそりゃそうだ、否定が巡る。改めてそんな事を言う必要も無い、エヴァなんて不完全なものに自分みたいな奴を乗せて戦っているのだ、そうろくなもんじゃない。 大体、父さんが陣頭指揮を取っているのだから。 最終的に悪口に達すると、シンジは瞼を閉じて考えを締め出そうとした。しかし皮一枚を隔てた暗闇の中に浮かぶのは寧ろ、殊更鮮明になった父ゲンドウの、己を揶揄し、認めない、声。
”エヴァに乗れ。でなければ、帰れ。”
父さん。それは、父さん。 エヴァに乗らなければ、僕は要らないという事? エヴァに乗るのならば、僕は必要だという事? 僕を棄てた貴方なんかにも、僕の価値があると、云えるのか。
程無くして、病室のドアが機械仕掛けにするりと開いた。その向こうには、綾波やアスカやミサトや、来て欲しいと期待したり願ったりというよりも、それが当然に近いかのような懐かしさで思い描いた人物達ではなく、全く顔も知らない看護士が立っていた。 「お目覚めですか? 御気分は?」 感情が籠っていないだとか冷徹だとかなんて事はなかったが、職業柄聞き飽きたのだろう事務的なその声に、シンジはあー、のようなうー、のような声にならない唸りで答える。 満足はしていないだろうに追究せず、纏めた髪から数本ほつれてシンジの顔を擽る、至近距離で看護士は専門用語をぶつぶつ呟きながら胸元に抱えるクリップボードに彼是筆記していく。 脇腹の辺りから布団を剥がして何かを始めたが、人の手の感触は無く、また仰向けのままでいたシンジには何が行なわれているのか見る事は叶わなかった。
いや、違う。見ようと思えば、見れるんだ。
看護士にされるがまま受け流していたが、思い至るとどうしても自分の肩から下で何がされているのか見たくてたまらなく、そして同じくらい、知りたくなかった。首を引き千切るくらいのつもりで目を逸らして、視界に届かないよう逃げ出したかった。 視線を逸らした序で見つけたのは眠っている間にでも搬入されたのだろう、病室に所狭しと点滴やら他わからない機械が次々と並んでいて、そこから生まれる沢山のコードは須く清潔なシーツの上に横たわり柔らかく暖かな布団の下にある己の躯に続いているらしいのだが、地肌から離す事の叶わない筈の寝台の感触さえ、シンジには無く。 じわりと、こめかみに汗が滲む。だけど背筋は冷え冷えとしていた。 「あの……」 盛大な音を立てて飲み込んだ生唾から一拍置いて声を掛けると、看護士はちらりと視線を寄越した。 「僕、どうして……」 聞きたかった事からいまいちずれてしまった質問に、看護士はなんでもないような口調で、使徒との戦いで負傷したのだと、矢張りそうだろうな、としか返せないような真実を語る。
違う、どうしてそうなったかじゃない。 それで、どうなったのか。
「あの、僕は、どうなって……」 今度は長く視線を留め置いて、看護士は表情には迷いの色を見せないながらも逡巡しているようだった。心臓の鼓動が速く激しく煩くなったように思われる。肉体という殻を打ち破らんばかりの動悸が、だけど珍しいとか何があったとか考えるより、当然だと受け入れている脳の方が理解出来ない。 肩口さえすっぽりと包み込み、きっちり全てを覆い隠している布団。 やがて看護士は、いつの間にやら大所帯になっていた同僚らに話しかけ相談しているようだったが、結論が出たのかシンジの頭を持ち上げて斜めに傾けると、その密閉している純白の柔らかな拘束を、ゆっくり、ゆっくりと引き剥がしていく。 落ち着いてだとか何かそんな言葉を掛けられている、とは耳が感知したがしかし理解の領域まで到達出来るとは思えなかった。 いっその事この心臓が何処にあるのかさえわからない、なんて混乱しかけて、痩せた細い胸が布団の下から登場する。
……だけど何故だろう、妙に色が濃く、硬質に感じる。本当にこの胸板に心臓が収められているとは、感じられなかった。 だってこんなにも精一杯、生きている事を確かめるかのよう暴れ狂う鼓動を、少しも現してはいない。 脈打ちを正しく繁栄しているのは、少し離れた首から上のように思えてならない。懐かしむかのよう、思い出すかのよう、生々しい質感をただ記憶が、反芻しているかのような。
緩やかに開けていく結界、胸部の向こうで、先に登場した無数の機械の触手が連なって隠れている。だけど何故だろう、頭を捻ってみても、コードの先は皮膚の上ではなく、骨身や内臓に向かっているように見えた。 重く暗い影が徐々に徐々に光を含んで薄く照らされやがて晴れると―――― まるで蛸や烏賊のよう、それとも水母のが正しかった。シンジの感覚が正しかった証明として、大小長短様々なコードが、シンジの躯から、それともシンジの躯に向かって、いや、或いはシンジの躯そのものとして、生えていた。 胸部から、正確に言えばそれもきっと心臓だけで、生体に模した偽りのその胸部と己の意識を繋ぐ首から上。 シンジの躯はそれだけしかなかった。
知りたくてたまらないのではなくもう知っているからちゃんと知らなくちゃいけないような、だけどやっぱり知りたくもないような、あの感覚はだから(と言われても夢で体験した自分にも最早霞んできていますが)、きっとシンジは上半身も満足にないと理解しているんでしょうね。 まぁそれでどうやって生きているのかはてさてさっぱりですがきっと2015年には心臓と脳さえ生きてれば生かす技術があるんだろうという事で。 本当の本当に正確に書するのなら首だけがナマモノっていうか、いっそ首も螺子っぽかったりなんだったり。しかしそうすると心臓の鼓動が説明がつかなくなるので自ら夢を改竄する罠。
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