愛より淡く
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その後私は、なにもかもイヤになって、実家に帰りたくなった。
でも実家に帰ってもなにも解決しないということが、なんとなくではあるけれど、わかっていた。
実家は、一時的な避難場所にすぎないのだ。
それに、実家には、すでに私の居場所などどこにもないのだ。
私が慣れ親しんだ「わたしの部屋」は、もうどこにもないし。
すべて母に片付けられてしまった。
私の愛用の化粧台ですら、母は、捨てた。
私の母は、あきれるくらい、なんでも潔く捨ててしまえる人なのだ。
みんなみんな知らない間に捨てられてしまっていた。
だけど、捨てられてしまったことを知っても、さほど感傷的には、ならなかった。
ったく、なんで捨てるのんさ。ぶつぶつ。
ちょっとボヤいただけで、終わってしまった。
もともと私には、物に対する執着心がさほどないようだ。
そういえば。なんでもよくなくした。消しゴム、ふで箱、えんぴつ、定規、コンパス、ノート、したじき、縦笛、などなど、いつのまにか、私のそばからいなくなっていたんだ。まるで自らの意思でもって、私の元を去るかのように。いつのまにかいなくなっていたのだ。
その中には、いなくなったこと自体気づいてもらえないまま、私に忘れ去られてしまった物もあるだろう。
今だって、毎日、なにかをなくしている。 毎日、なにかを探している。毎日、なにかをあきらめている。
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