こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2004年10月26日(火) |
お伽話【流れ星を食べる怪物】 第三話 |
第三話
怪物が流れ星が食べていると教えられた村人たちは 次の日の夜、 流れ星の流れる瞬間をジーッと待ちました。
そして、流れた瞬間をよーく見ると、 白髭の老人が言ったとおり、 流れ星が来た瞬間、大きな黒い影が、 流れ星を包み込むように 食べているのが見えました。
村人I『ありゃ〜ぁ 神様が言ったとおりださ。』
村人J『黒いヘンテコリンな奴が食っちまってるさあ』
村人K『ありゃ、バケモンに違いねぇ』
村長『神様の言ったとおり退治せにゃいかん』
村人L『でも村のはずれにある山さ入ったら出てこれねえがもよ』
村長『このまま流れ星に願えなかったら、村人全員が死んでしまう。 山さ入って死ぬのも結果は同じだぁ』
というわけで、 村長はじめ村人たちは、村のはずれの山に入り、 黒い怪物を退治することにしました。
次の日、 村長はじめ村の若い衆は、 鍬(クワ)や鉈(ナタ)を持ち、 怪物退治に出かけました。
普段、村人が入らない山の中は、 たくさんの木が茂り、 昼間でも光が射し込まず、 薄気味悪い雰囲気を漂わせていました。
村人M『ホント、不気味なとこだぁ こったらとこだば、怪物いてもおかしくねぇ』
少々おびえつつも、村人たちは道なき道を突き進みました。
しばらく行くと、大きな洞穴がありました。
怪物の住処(スミカ)をこの洞穴と判断した村人たちは、 洞穴の入り口で火を熾(おこ)し、 洞穴に煙を入れることで怪物をあぶり出す作戦を採りました。
しばらくすると、洞穴の中から 『ズシーン ズシーン』という地響きが鳴り出しました。
その音は次第に間隔が狭まり、入り口にいる村人たちに近づいてきます。 最後は『ゴゴゴゴッ』と地面が揺れ、 洞穴から大きな黒い影が飛び出してきました。
『シェー!?』 村人たちは驚き、腰を抜かしました。
その影は全身黒い毛に覆われ、 鋭い牙を持ち、ギョロッとした眼で 村人たちを睨みつけました。
まさしく流れ星を食べているあの怪物です。
『ウォグガガァ ウォグガガァ』と吠えると、 その声だけで、地面は揺れ、 風圧だけで村人たちは吹き飛ばされそうになってしまいます。
村人N『か、怪物だぁぁ〜!!』
村人たちは恐れおののき、一歩も動けません。
目を覆い、ガクガク震える者。 木にしがみつき、風圧に耐える者。 はたまた失禁している者。
大きな怪物を前に、村人たちはお手上げでした。
そんな村人たちに、怪物はさらに 『ウォグガガァ ウォグガガァ』とうなり声を上げます。
そんなとき一人の村人が あまりの恐怖に我を忘れ、 持っていた鉈(ナタ)を 無我夢中に怪物に投げつけました。
すると、 その鉈(ナタ)はクルクルと回転しながら怪物の鼻に命中。
『ウッ・・・・』
その場の空気が静まりかえります。
村人O『いま、ひるんだ?』 村人P『・・・うん。ひるんだね』 村人Q『もしかして弱くない?』
思わぬ鉈(ナタ)の効果に、 標準語になってしまった村人たちは、 目を合わし、全員でコクンと頷くと、 一気に反撃に転じました。
持ってきた鍬(クワ)や鉈(ナタ)で 怪物の体を傷つけます。
怪物は防戦一方 村人たちに囲まれ逃げることさえ出来ません。 その痛みにうなり声を上げるばかり。
なぜか怪物は、村人たちに手を出しませんでした。
人間の体など一突きで貫く爪があっても、 食いちぎれるほど鋭い牙があっても、 怪物は村人を殺すどころか 傷つけることさえありませんでした。
肉がえぐれ、大量の血が流れても、 ただじっと我慢していました。
その我慢も限界が来たのか、 怪物は気を失い、大きな体は音を立てて倒れ込みました。
村人R『これでもう悪さしないべ』
村人たちは意気揚々と村へ帰っていきました。
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