オフィスで働いていた頃は良かったナァ、と思うのは。 特に、会議に提出するための企画書を書いている時。
しょーもない会話から思いがけないアイディアが涌くこともあるし。 異なる価値観、異なる感性の持ち主たちによって、意外な指摘を受けるということも多々あった。 もちろん彼らの企画に対し、こちらからそうした指摘を行っていくことも同じだけあった。
それぞれの性格にもクセがあって。 それぞれがそれぞれの企画に「よし、もうこれでいい」と結論を出すタイミングも違っていたが。 企画会議では揃ってボロクソに言われ合い。 結果、提案は何一つ通らず、互いに説得力の足り無さを自覚し合いながら。 懲りずに成功と昇給を夢見て、次を目指した。
一見無責任な「だってこうじゃないか」「ああじゃないか」といった言葉の応酬に。 独りよがりな発想や言語が磨かれて行くことが、ただ単純に楽しかった。
人は一人では生きていけないと言う。 それは何故なのと。いつか小僧に聞かれたら、こう答えたい。
人は一人では生きていけない。 何故なら。 てめえの頭ン中だけで「思いがけないこと」を起こすのは難しいからだ。
ちゅうか、てめえの頭ン中で、そう煩雑に「思いがけないこと」が起こっちまったら危ねェしヨ。
絶対こうしたらこうだろ、ちゅう思いこみを。 いとも簡単に「それは無いっすよ」「えー。無い無い」等と否定しまくってくれたかつての同僚たちよ。
人が満員電車で押し合いオフィスに出かけて行き。 雁首並べてジッと仕事することの意味。 結局人間にゃ、他人以上の宝は持てねェってこと。
座敷ワラシ。
なぞと一人つぶやいて不気味がられる金曜の午前。
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