臨死体験の話を何故か日本史Bの時間に聞いて、 死の間際には本当に一生が走馬灯のように回るそうだけど、 その時、もし何も浮かばなかったら怖いですね、 と先生が仰ったのは、本当に恐ろしかった。
その一生、丸々無駄と言われたかのような気がする。 こんなに生きていくのは苦しいのに、 生きてきた証が自分の中にさえ残らないなんて、そんなのは嫌だ。
大好きな人の顔さえ、浮かばないのかしら。 家族でも恋人でも、誰でも。
兎は寂しいと死ぬ、と聞いて 「甘ちゃんだなぁ、弱いなぁ」と思うのは間違っているかも知れない。 我々だって、『何も無』ければ、死んでしまうのだろう。 それを寂しいと表現するか、或いは『何も無い』と言うかの違いだけであって。 「そういう時に、何も浮かばなかったら、きっとそのまま死ぬんでしょうね」 という先生の言葉は、あながち推測だけではないかも知れない。
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