- 2006年06月29日(木) メッセージ(萩尾望都)
☆(以下、作品よりせりふのみ抜粋)☆
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(影)
……を
……て…ます
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(少し暗く怪しげな男性の姿が浮かんでくる)
わたしは
あなたを
……て…ます
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(男の表情はどこか悲しげに見える)
あなたを
心から
愛しています
ほんとうです
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(男の手が見える。異形)
信じてください
あなたを
愛しています
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(うら若い少女。「姫」の衣装)
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(少女の目に涙)
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(少女、庭草の上に仰向け、やや離れて立つ男性に向かって)
どうして
そんなことを
言うの?
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(男性)
あなたを
愛しています
あなたは
すばらしいひとです…
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(少女、自虐的な笑み)
うそよ
わたしは
すばらしくなんか
ないわ
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(少女、顔を覆う。背景、黒)
おばあ様も
お父様も
お姉様も
わたしが
キライだわ
わたしに
うんざり
しているわ
わたしなんか
いなければ
いいのにと
思っているわ
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(少女、顔を覆ったまま。背景、庭草に)
わたしなんか
生まれて
こなければ
よかったのよ
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(男)
そんなふうに
いわないで……
あなたを
愛しています
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(少女、少し非難めいた顔を起こして)
わたしのこと
なにも
知らないくせに
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(男)
あなたを
愛しています
いとしいひと
あなたが
なんであれ
あなたを
愛せないと
わたしは人間に
なれないのです
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(少女、上体を起こして)
どういうこと
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(男)
わたしは
人間に
なりたいのです
あなたには
なにも
求めたり
しません
あなたを
愛しています
ただ そう
伝えたいのです
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(少女、顔アップ)
……
どうして?
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(男、顔上半分アップ)
さあ
わかりません
でも
わたしは
あなたを
愛しています
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(男、手アップ。右手は異形)
どうぞ
信じてください
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(少女、画面中央、セリフは男)
愛しています
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(少女、手を差し伸べる)
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(少女、顔に手を近づける)
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(少女、三つ編みにした髪の毛の一房を胸の前からどける)
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(少女の三つ編み……と思われたのは実は縄だったらしい。
切れた端が少女の上方の枝にゆわえてある)
(遠くから)
おじょうさまーァ!
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(乳母?登場)
キアラー
おじょうさま!
まあ
こんなとこに!
霧だから
動かないでと
いったのに
こんな森の置くまで行って!
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(少女)
リーザ
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(乳母、少女を引き寄せるようにして)
さっ 帰るん
ですよ!
いつも勝手で
いうことを
聞かないん
だから!
なにかあったら
どうするん
ですか
わたしが
しかられるん
ですよ!
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(少女)
リーザ
(乳母、少女の頭に帽子を載せながら)
ほら
帽子!
ちゃんと
かぶって!
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(少女、乳母の後について歩き始めながら)
わたしを
さがしに
きてくれて
ありがとう
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(乳母、不審げな顔で振り向き)
ええ
!?
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(少女、顔をあからめ、帽子を胸の前に下ろして少しうろたえ)
え
へ 変な
こといった?
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(乳母、当惑)
……
いえ
行きましょう
いいです
けど
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(少女)
……
いつも
どういって
いいのか
わから
ないの
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(少女、後ろを振り返り)
でも
さっき
人に
会ったの
(乳母)
人?
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(乳母、少し驚き)
あちらは
しげみと
がけです
誰も
いませんよ
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(少女、不思議そうな顔)
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(少女)
その人
わたしに
メッセージを
くれたの
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(乳母、こちらを見ずに)
はい
はい
さ
急いで
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(少女、思い出すように)
……
誰かしら
あの人
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(少女、森を振り返る)
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(少女の横顔、独白)
わたし
これからは
眠れない夜は
あなたのことを
思い出すわ
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(少女、目を閉じ)
そして
あなたの
メッセージを
だきしめるわ
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(少女の手の中に、男のイメージ)
ありがとう
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☆(以上)☆
次は11月号の登場だってー。
3ヶ月も待ちぼうけなのかー ブチブチ
でも、心に沁みる作品でよかった。
一読者というかファンの勝手な思いだけど、「永遠に作品を出しつづけてほしい」。