水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2001年12月14日(金) |
乃南アサ著『彫刻する人』 |
寒いですね〜今、読み終えたところです。 乃南アサさんの短編集『家族趣味』から、二つ目の物語『彫刻する人』です。 彫刻家のお話ではありません。自分の肉体を鍛えることにとり憑かれた男の 話です。この「とり憑かれる」プロセスを、乃南さんは巧みに見せてくれます。
川口恒春(つねはる)、30歳。肉体を鍛えようと思い立ったのは、恋人、可奈子 の何気ないひと言だったのです。 「富士山」・・下半身に向かうにしたがって、妙にむっちりとした肉をつけて いる体型を、可奈子はこう呼びました。急に太ってきたのを自覚している 恒春は水泳を始めます。
水泳、いいですよ〜全身運動です♪プール通いくらいにしておけば、あんな 悲惨なことにはならなかったのです。
会社の女子社員に痩せたことをほめられた恒春は、自分の身体を美しく造って いくことを決意し、腹筋運動を日課にします。
ふぅ〜〜ここで、やめれば良かったのにと思わずにはいられません。
寝る前の300回の腕立て伏せ、プロテイン、と美しい肉体造りにどんどん はまっていきます。可奈子は去り、新しい恋人、純子がすぐにできますが・・ ある朝、一瞬の出来事が恒春の人生を変えることに・・
可奈子と純子が対照的です。 肉体造りよりわたしのことを考えてと言う可奈子と、恒春の身体に触れたがる 純子。どちらの女性とうまくいくかは・・うーん、わかりません。。
昨日の『魅惑の輝き』の有理子は救いようがなく、作者にも突き放されましたが 今日の『彫刻する人』の恒春にも、作者は救いの手をのばしません。 そこが、さっぱりとした読後感をつれてきます。
乃南アサ著『家族趣味』(新潮文庫)に収録の『彫刻する人』は39ページ。 狂気のはじまりは、やはり日常・・にドキッとした13分。 ムキムキした肉体はちょっと・・・です。フツーがいいです〜笑
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